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禁止の会社でも副業は可能 社員が守るべき4ルール

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日経DUAL

日経DUALが2018年2月に実施した「共働き家庭の家計(レジャー費、住宅ローン、教育費等)についてのアンケート」によると、回答者(80.7%が正社員)の31.9%が「本業以外の収入がある」と回答し、その内訳として24.5%が「副業等による収入」という項目を選択していました。生活費や教育費など、出費のかさむ子育て中・共働き世帯にとり、「副業」は意外と身近な存在のようです。さて、この副業は、法的に問題がないものなのか? 専門の弁護士に詳しく伺いました。

◇  ◇  ◇

労働時間以外の時間をどのように利用するかは労働者の自由

―― 荒井さんは「副業はそもそも違法ではない」というお考えですね。詳しく教えてください。

荒井太一さん(以後、荒井) 労働契約の本質的な内容は「労働時間の提供と賃金の支払い」になります。逆に言えば、労働時間以外の時間をどのように利用するかは労働者の自由ですから、何か制約を課すことは当然できません。

もちろん当事者が特別に合意すればそういった制約も可能になり得るわけですが、その特別な事情というのはすべて認められるわけではありません。副業に関して、「副業してはいけない」と制約を課す合理的な理由がないと禁止できません。ですから、漫然と一律に「副業を禁止する」という契約上の定めは無効だといえます。これは昔から裁判所も言っていることです。

要するに、副業禁止とは使用者が労働者のプライベートを支配するような話であり、原則として使用者はそのような制約はできません。裁判所もこれまでも一貫してこの趣旨の判決を出しており、基本的には副業を一律に禁止することはできないとされてきました。しかし、実態としては、日本企業の慣行として就業規則に「副業はダメ」といった条項を盛り込んでいるのが一般的で、従来これを誰も疑わなかった。この状態が今に至るまでずっと続いてきたわけです。

―― 就業規則に盛り込まれている「副業を禁止する」という条項は、法的に言うと、守らなくても問題ないのでしょうか?

荒井 就業規則は、内容が合理的なものについては当然守らなければいけないのですが、就業規則に書けばすべてが有効になるというわけではありません。書かれている内容が法的に有効かどうかは、最終的には裁判所が判断します。過去に裁判所で争われたいくつかの案件では、「副業を一律禁止する」という内容は無効で、合理的な理由があるときにだけ、その範囲でのみ有効である、ということが繰り返し言われています。

私は、2017年10月に厚生労働省が立ち上げた「柔軟な働き方に関する検討会」の委員でもあります。検討会では、副業を解禁・促進するための議論も行われ、既に報告書も出しています。その議論の過程では過去の裁判例も検討されました。

例えば、運送会社の運転手が年に数回、貨物運送のアルバイトを副業として行ったため解雇されたという事例があります。その方はそれほど頻繁には副業をしていたわけではなく、本業に影響がないため解雇は無効である、と判断されています。また、大学の先生が副業で通訳をやっていたというケースもあります。この場合も、学校の授業に影響を及ぼすものではない、という判断が下されています。また、検討会の資料には含まれていませんが、タクシー運転手が副業で新聞配達を行っていた、という事案も解雇が無効とされていますね。

こんな副業はやってはいけない

―― とはいえ、どのような場合でも、副業は問題ない、というわけではないのですよね?

荒井 そうです。「副業は何でもやっていい」ということではもちろんなく、一定の範囲では禁止されています。ルールは主に以下の4つです。

まず、「本業に支障をきたさない」。例えば、本業の終業後、副業として長時間働けば、翌朝、疲労が蓄積し、本業に支障が出ることが考えられます。そういう形での副業は認められていないと言われています。

2つ目が、「守秘義務を守る」。本業のノウハウや秘密情報、顧客情報などを使って副業をすることも許されません。

3つ目が、「企業秩序を維持する」。企業の秩序に影響を与えることはしてはいけません。やや抽象的なルールですので、ケース・バイ・ケースで判断せざるをえませんが、例えば、本業の社名を出して、本業の勤務先のブランド力を使って副業をすることは、場合によっては企業の秩序を乱したり、企業の名誉を侵害したりしますから認められません。

4つ目が、「競業避止義務を守る」。本業がライバル企業としのぎを削る競争をしている最中に、本業の社員がライバル企業にも労務を提供するようなことも使用者の正当な利益を不当に害する行為ですので、禁止されます。

その他、色々な場面が考えられるため、一概にこういう類型であるとは言えませんが、基本的には「会社と労働者の間の信頼関係を傷つける副業」というのは認められません。「副業=信頼関係を傷つける」というわけではありませんが、副業することで本業に迷惑を掛けるようなことをしてはいけません。

―― 先ほどの「タクシー運転手が新聞配達を行った副業」の事例では、どちらの職業も、本業に支障をきたすのでは、とも思えるのですが……。

荒井 この件では、朝7時30分から深夜1時30分までの18時間を隔日勤務するタクシー運転手が、午前4時30分に起床後6時30分頃まで約2時間程度新聞配達を行っていた、という事案ですが、本業に支障をきたすおそれがあるとは認定されませんでした。もっとも、副業の拘束時間や頻度、業種にもよってきますし、対象となる労働者の年齢や体力などにもよってきます。この事例でも、実際に本業に支障が出ていたことやその恐れをしっかりと立証できれば解雇が認められた可能性もあります。ケース・バイ・ケースで判断するしかないと思います。

行政が副業を促進する理由とは

―― 副業解禁の流れがありますが、今、どういう状況で、今後どのようになっていくのでしょうか。

荒井 先述の厚生労働省の検討会は、「副業をいかに促進していくか」ということで立ち上がったものでもあり、副業促進が行政としてのスタンスです。その中では「副業を一律に禁止することはできない」ということを改めて確認し、それを受け、厚労省がホームページ等で掲示している「モデル就業規則」に書かれていた「許可なく他の会社等の業務に従事してはいけない」という規定については、これを削除し、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」という規定に直しています。そのうえで、先ほど説明した4つの事象のような副業については禁止または制限することができる、という規定に改めています。

―― そもそも行政は今、なぜ副業を促進しようとしているのでしょうか?

荒井 色々な理由があります。企業にも労働者にも社会にもメリットがあると考えられています。

社会的現象で言うと、日本の労働人口がこれからどんどん減っていくため、1社で従業員を囲い込むようなスタンスでいくと、この労働力不足に拍車がかかります。労働力をシェアリングしていくという発想が、社会の観点からのメリットです。また、オープンイノベーションや起業の手段、都市部の人材を地方でも活かすということも指摘されています。

企業にとっても、労働者に自社内で行ってもらう仕事にはどうしても限りがあるため、他社で働いて色々なノウハウや経験を得てもらい、それをまた本業で生かしてもらうというメリットがあります。

労働者にとっても、自らのキャリアについて、副業で追求することができるというメリットが挙げられます。特に、日本の企業では自分の「ジョブ」というものを選べない雇用慣行になっていることが多く、自分が自主的にキャリアを選択するということが難しい環境にあります。したがって、自分が「こういうキャリアを築きたい」「こういう使命感のために仕事をしたい」「社会の役に立ちたい」「地元の役に立ちたい」という思いがあったとしても、必ずしもそれを本業で達成することができるわけではないのです。副業を可能にすることで、そういった使命感や地元への貢献を可能にする環境を整えていくことができるといったメリットがあると言えます。

人を抱え込む「副業禁止」は古いモデル

―― その中で最も大きいのは、やはり「労働人口が減っている」という観点なのでしょうか。

荒井 そこは大きいと思います。ただ、それだけではありません。

ちょっとややこしい話をしますと、やはり現在は、産業構造が変化しているのだと思います。従来の「産業資本主義」というモデル、例えば、工場で物を大量に生産し、売り上げを上げる一方、賃金を抑え、利益を生み出していくというやり方が、少なくとも日本では難しくなっているという現状があります。

今は、「ポスト産業資本主義」と言われるような、新しいアイデアを組み合わせて新しいバリュー(価値)を生み出していくというモデルに変化しています。そうすると、産業資本主義においては、人やアイデアを抱え込んでいく――なるべく人が流出しない、外部と接触しない、ノウハウをため込んでいく――というのが、正しい価値の作り方だったわけですが、ポスト産業資本主義になると、人を抱え込むのではなく、むしろ、外部との接点をたくさん持たせ、そこで生まれた価値を取り込んでいくことで新しい価値を作り出していくということが企業の価値の源泉になっていきます。すると、副業をいたずらに禁止するのではなく、ある一定の条件の下で認めていくことのほうが、少なくとも今の日本の産業構造が変化していく中ではマッチしているという背景があります。

この中で言うと、今までの、人を抱え込むような「副業禁止」は、多くの産業においては既に古いモデルになっているのです。ところが、ほとんどの労働者が今まで通りの価値観(本業のみで働くスタイル)を誰もが違和感なく受け入れている。ただ、状況としては既に変化は始まっているのではないか、というのが一つ大きな流れとなっています。副業促進は取り立てて、誰か特定の人物が言い始めたことではなく、日本社会の様々な場面で同時進行で起こってきたことなのです。

日本社会の大きなデメリットとして、「人材の流動性」が低過ぎることが指摘されています。人が企業間で移動していかない。つまり、新しい産業が興っても、そこに人が流入していかないのです。ただこれを解決する方法として「解雇をしやすくすればいい」という議論が起こることがありますが、これはなかなか理解を得られません。

やはり、皆、生活がありますし、これまでの雇用慣行もあるので、いきなり解雇を自由化したとしても社会はハッピーにはなりません。少なくとも恐れを抱くのは当然です。副業という形であれば、今の会社に勤めながら新しい産業にも人が移っていくような、一つのやり方が可能になるわけです。この方法であれば、流動性は自然と生じてくるのではないのか、と考えています。

―― 厚生労働省の中でこの検討会が行われたのは初めてのことだったのですね。

荒井 副業を促進するという意味では初めてです。政府としては副業の促進を引き続き政策に盛り込んでいます。2017年12月に「新しい経済政策パッケージ」を安倍内閣が公表しており、その中にも「副業の促進」というものが引き続き入っています。こういった検討会が今後も継続される可能性は高いでしょう。

荒井太一
 森・濱田松本法律事務所弁護士/日本およびニューヨーク州/パートナー。労働法・訴訟・M&A・危機管理案件を取り扱う。典型的な労働法に関する紛争案件(個別労働紛争・集団的労使紛争)のほか、M&Aにおける従業員の取り扱いを巡る法律問題を得意とする。1998年開成高等学校卒業。2000年司法試験合格(大学3年次)、2002年慶應義塾大学法学部卒業、2009年バージニア大学ロースクール卒業、 2009年 米国三井物産株式会社及び三井物産株式会社出向(~2011年)、2015年厚生労働省労働基準局に出向(~2016年)、2017年厚生労働省「柔軟な働き方に関する検討会」委員

(日経DUAL編集部 小田舞子)

[日経DUAL 2018年4月23日付記事を再構成]

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