禁止の会社でも副業は可能 社員が守るべき4ルール

日経DUAL

人を抱え込む「副業禁止」は古いモデル

―― その中で最も大きいのは、やはり「労働人口が減っている」という観点なのでしょうか。

荒井 そこは大きいと思います。ただ、それだけではありません。

ちょっとややこしい話をしますと、やはり現在は、産業構造が変化しているのだと思います。従来の「産業資本主義」というモデル、例えば、工場で物を大量に生産し、売り上げを上げる一方、賃金を抑え、利益を生み出していくというやり方が、少なくとも日本では難しくなっているという現状があります。

今は、「ポスト産業資本主義」と言われるような、新しいアイデアを組み合わせて新しいバリュー(価値)を生み出していくというモデルに変化しています。そうすると、産業資本主義においては、人やアイデアを抱え込んでいく――なるべく人が流出しない、外部と接触しない、ノウハウをため込んでいく――というのが、正しい価値の作り方だったわけですが、ポスト産業資本主義になると、人を抱え込むのではなく、むしろ、外部との接点をたくさん持たせ、そこで生まれた価値を取り込んでいくことで新しい価値を作り出していくということが企業の価値の源泉になっていきます。すると、副業をいたずらに禁止するのではなく、ある一定の条件の下で認めていくことのほうが、少なくとも今の日本の産業構造が変化していく中ではマッチしているという背景があります。

この中で言うと、今までの、人を抱え込むような「副業禁止」は、多くの産業においては既に古いモデルになっているのです。ところが、ほとんどの労働者が今まで通りの価値観(本業のみで働くスタイル)を誰もが違和感なく受け入れている。ただ、状況としては既に変化は始まっているのではないか、というのが一つ大きな流れとなっています。副業促進は取り立てて、誰か特定の人物が言い始めたことではなく、日本社会の様々な場面で同時進行で起こってきたことなのです。

日本社会の大きなデメリットとして、「人材の流動性」が低過ぎることが指摘されています。人が企業間で移動していかない。つまり、新しい産業が興っても、そこに人が流入していかないのです。ただこれを解決する方法として「解雇をしやすくすればいい」という議論が起こることがありますが、これはなかなか理解を得られません。

やはり、皆、生活がありますし、これまでの雇用慣行もあるので、いきなり解雇を自由化したとしても社会はハッピーにはなりません。少なくとも恐れを抱くのは当然です。副業という形であれば、今の会社に勤めながら新しい産業にも人が移っていくような、一つのやり方が可能になるわけです。この方法であれば、流動性は自然と生じてくるのではないのか、と考えています。

―― 厚生労働省の中でこの検討会が行われたのは初めてのことだったのですね。

荒井 副業を促進するという意味では初めてです。政府としては副業の促進を引き続き政策に盛り込んでいます。2017年12月に「新しい経済政策パッケージ」を安倍内閣が公表しており、その中にも「副業の促進」というものが引き続き入っています。こういった検討会が今後も継続される可能性は高いでしょう。

荒井太一
森・濱田松本法律事務所弁護士/日本およびニューヨーク州/パートナー。労働法・訴訟・M&A・危機管理案件を取り扱う。典型的な労働法に関する紛争案件(個別労働紛争・集団的労使紛争)のほか、M&Aにおける従業員の取り扱いを巡る法律問題を得意とする。1998年開成高等学校卒業。2000年司法試験合格(大学3年次)、2002年慶應義塾大学法学部卒業、2009年バージニア大学ロースクール卒業、 2009年 米国三井物産株式会社及び三井物産株式会社出向(~2011年)、2015年厚生労働省労働基準局に出向(~2016年)、2017年厚生労働省「柔軟な働き方に関する検討会」委員

(日経DUAL編集部 小田舞子)

[日経DUAL 2018年4月23日付記事を再構成]

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