引き出しの整理グッズ ブロック感覚でレイアウト自在
机の引き出しに入れたのに、使いたい文房具が見つからない。引き出しを整理するトレーなども使ってみたが、なかなかうまくいかず――そんな経験を持つ人は多いだろう。キングジムの「かたづけマス」は、使いたい文房具がすぐに見つかるレイアウトを自分で作りあげる、ブロック感覚の整理グッズだ。
自分専用のツールボックス
キングジムは事務用ファイル用品など書類整理関係の専門メーカーであり、整理整頓のためのアイテムはお手のもの。「かたづけマス」は、同社がこのところ次々と発売し続けている「オフィス環境改善用品」の一つとして発売されている製品だが、これがありそうでなかった製品で面白い。
製品としてはとてもシンプル。オフィスのデスクに付いている引き出し、または袖机の一番上の段、少し薄い引き出しの中を整理するもの。使いたい文房具などに合わせて仕切りを作り、どこに何を入れるかが一目で分かる、自分専用のツールボックスにしてしまおうというものだ。
構造もシンプルで、引き出しにポリエチレン製のマットを敷き、そのマットの四角い切り込みに付属のブロックを差し込むだけ。引き出しの中をスッキリとスタイリッシュに整理できる。イメージとしては、かつて流行した金属製のアタッシェケースを開けると、中の収納物ピッタリに切り抜かれたスポンジなどで保護された数々のツール類がある、というあれだ。
パズルのように何度もやり直せる
「ポリエチレンフォーム(ポリエチレン樹脂を発砲させた素材)にミシン目が入っていて、入れるものに合わせて、それを切り取るタイプの製品はいくつもありました。でも、それだと1回切ると元に戻せないし、失敗しそうで結局使えないという人もいたり――。汎用性が失われると思ったんです」と、キングジム商品開発部の山根涼氏。
確かに、ポリエチレンフォームを切り取って使うタイプは、よほど何かの専用にすることを決めないと使えない。筆者も、結局切り取る勇気がなく使わなかったことがある。「かたづけマス」が魅力的なのは、何度もやり直せること。試行錯誤しながら、自分に最適な引き出しを作っていけるのだ。
「自由にレイアウトできて、引き出しの中に愛用品の定位置が作れるような製品を開発しようと考えました。それで最初はレゴブロックのようなものも考えていたのですが、コスト面もあり、スポンジのような素材をブロックとして扱えないかと考えて、今の形になりました」と山根氏。
サイズはオフィス機器の引き出しを調べ、汎用性を考えた400×300mm(A3サイズよりやや小さめ)に、差し込むブロックのサイズは試行錯誤の結果15mmの立方体に決めたそうだ。シートの厚みが5mmなので、そこにブロックを差し込むと10mm飛び出すことになる。「このサイズが、小さすぎず大きすぎず、ブロックのサイズは正解だったと思います」と山根氏。
実際に使う場合は、まずシートの上に引き出しに入れたいモノを置いて配置を考える。このとき、ギリギリのサイズではなく出し入れを考えた遊びを作るのが重要。空きスペースをいかに少なくするか、よく使うものを手前、大きなものは奥など、実際に使うことを考えた配置も大切だ。
「この作業はかなり難しいのですが、パズルのように楽しんでもらえたら。ある程度できたら、実際に使ってみて、不便だと思ったら修正する、というのを繰り返すとよいと思います。この試行錯誤は、私が一番やっていますよ」と山根氏は笑う。長時間使ったり、何度もブロックを抜き差ししても、ブロックの角が減るくらいで耐久性は十分とのことなので、安心していろいろ試そう。
コツとしては、まず手前から作っていくといいそうだ。手前部分だけ作って、そこによく使う文具を収納。奥はブロックで区切られていない状態にして、いろいろなものをジャラジャラ入れておくといった使い方もできる。何も、引き出し全てをブロックで区切る必要はないのだ。定位置が必要なぶんだけ作って、後は徐々に増やしていくという方法でもよい。
収納力は下がるが文房具は使いやすく
この商品が面白いのは、従来の整理グッズのような、少ないスペースに多くのものを収納できる製品とは正反対のアイテムだということ。
これを使うと引き出しの収納量自体は下がるのだ。しかし、日常的に使う愛用のハサミや筆記具、ふせんなどがパッと見つけられてスムーズに取り出せる環境は、かたづけマスだからこそ得られるもの。
そして、それが求められていることは、売れ行きの好調さが証明している。初回生産分は発売2週間たたずに完売。年間1万個売れればという製品だったのだが、その目標は早々に達成しそうだ。「誰にでも売れるものとは思っていなかったのですが、想定の約4倍の速さで売れています」と山根氏。
薄い引き出しは面積は広いけれど整理しにくく、グチャグチャになりやすい。そこを整えてくれるアイテムは、多くの人が待っていたものなのだろう。また、オフィスだけでなく、家庭で使ったり、引き出しがなくても、棚の中にトレイを置いて、その上にのせて、普段使いの道具箱的に使うなど、道具に定位置を与えたい人なら誰でも使えてしまうわけだ。これは汎用性が高い。
何度でもやり直せるのは取っ付きやすいし、ストレスも少ない。こだわろうと思えばいくらでもこだわれるのも良い。シンプルながら、かなり懐の深い製品なのだ。
(文 納富廉邦)
[日経トレンディネット2018年5月30日記事を再構成]
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