日経エンタテインメント!

(C)2018 スタジオ地図

「反面、高度成長期や人口増加で市場規模が広がっていった成長する社会、科学技術が世界を豊かにすると思えた20世紀的未来像と、21世紀的未来像は大きく違ってしまいました。特に日本は人口が減少して、それまでの社会保障や信じていたものがそのままでなくなっていくかもしれない。そうした時代の流れがあって、自分たちが過ごしてきた人生が、必ずしも彼らに当てはまるとは限りません。自分のときはこうしたといったアドバイスや、経験主義的なことが何も言えなくなるわけです。

自分たちの親、またその親の世代まで遡って考えれば、それこそ人権が尊重されない戦争や厳しい時代があったわけです。そんな状況が今後また、起こらないとも限らない。少子化で、政治に興味があるないに関わらず若い人たちの声が反映されにくい、そんな状況だから子どもたちに加勢したくなります。過去から繰り返し続いてきた未来がどういうふうに見えるのか。未来に向けてしっかり生きていってほしい。自分たちが育った社会状況と変わってしまったのでアドバイスできない僕たちは、そう思うしかないですよね」

■子どもたちの未来に向けて

「どこにでもある家族の姿を描いていますが、そこには世代を超えた家族のつながりを象徴的に示す壮大なイメージも盛り込んでいます。実は脚本を書いている途中、突然、93歳の(細田監督の子どもの)曽祖父が亡くなってしまったんですよ。生まれたばかりの妹とこの間亡くなってしまった曽祖父が結び付き、そこからいきなり世代を超えた関わりを描かずにはいられなくなりました。

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4歳児は、家の中だけが世界だから、家族を描くにはそれでいいんです。子どもの視点なら、家族を家族だけでくくることができる。そして、どこにでもあるような家族の有り様を描きながら、過去から続いてきた歴史のバトンを次の世代に手渡すイメージ、人間の生と死の循環、家族の大きなサイクルみたいなものをエンタテインメントとして味わっていただけるような作品になっていると思います。

未来は、必ずしも明るくはないかもしれません。でもアニメーションで子どもを描くなら、そこにブレークスルーを期待したい。僕らは今、複雑な思いを抱きながら子育てしているけれども、そんな親の気持ちなんか関係なく、子どもたちはバイタリティーをもって、どんな時代であっても切り拓いていってほしい。大人が思い描くどんよりした未来ではなくて、子どもは子どもたち自身の未来を自分の手でつかむだろう、つかんでいくに決まっている。そんないきいきした生命力を表現したいのです。

そうした思いを込めたのが『未来のミライ』です。子どもから見た未来はどんなふうに見えるのか、妹のミライちゃんが成長して未来からやってくる話なので、字面通り“未来からきたミライちゃん”でもあるし、未来という概念そのものの未来、未来の先にある未来、この子たちが変えていく未来。それはどんな世界になっていくのか。そうした二重三重の意味を込めた映画です」

(ライター 波多野絵理)

[日経エンタテインメント! 2018年5月号の記事を再構成]