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細田守監督新作『未来のミライ』 家族を描く面白さ

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今夏に公開されるアニメーション映画で最も注目されているのが細田守監督の3年ぶりの新作『未来のミライ』(7月20日公開)だ。『サマーウォーズ』(09年)で親戚×インターネット、『おおかみこどもの雨と雪』(12年)で母親と子どもの13年の物語、『バケモノの子』(15年)で血のつながらない父(バケモノ)&少年と、家族の感動エンタテインメント大作を描いてきた細田監督。完全オリジナルとなる『未来のミライ』では何を描くのか。ロングインタビューに答えてくれた。

3年ぶりとなる新作『未来のミライ』は、兄妹×未来がモチーフ。主人公は甘えん坊の4歳児「くんちゃん」。妹が生まれて、今まで自分に向けられていた両親の愛情を一気に奪われてしまう。そんなくんちゃんの元に、突然、大きくなった妹のミライちゃんが未来からやってくる。見たことのない世界、初めての大冒険、たくさんの出会いを、ピュアな子どもの視点で見つめ、どこにでもある家族の姿を通して人生の大きな命の循環を描く、という壮大なテーマを持つ物語だ。

本作も監督の完全オリジナルだが、どのように物語を構築していったのか。

映画になりうる人生の面白さ

「うちの上の子は、下の子が生まれたときに嫉妬がすごかったんです。親は生まれたての赤ちゃんに愛情を向けるから、それこそもう、ハムレットばりに苦悩して。そんな上の子を見て、『ああ、愛を失った人間というのはこんなふうになるのか、人間というのは愛がないと生きていけないんだな』と。

一方、僕が知らなかった兄弟のいる人生を、上の子は知っている。それが一人っ子の自分としては、ちょっとうらやましくもあった。そういうことがとても面白くて。上の子を通して追体験していたわけですが、映画には、そもそもそういうところがあります。どんな映画も、自分じゃない人生を生きる面白味がある。有名人とかすごい事件に遭遇した人生だけが面白いのではなく、なんでもないすぐ横のビルに居る人の人生も、実はすごく面白かったりするんです。そういう点で、この状況は映画になりうるすごく面白い追体験だったわけです。

なおかつ、いろいろな人に『兄弟ってどうだった?』と聞くと、例えば男兄弟の人は女兄弟がよく分からないと言う。兄弟がいても様々なシチュエーションがあって、そうでない人生はなかなか知り得ません。一人っ子のくせに兄弟の映画を作っているのは、自分が知らない人生を求めたいからなんですよ」

 「主人公を4歳の男の子にしたのは、映画史的にもこれまでにあまりない大きなチャレンジだと思ったからです。そもそもこの年齢の子どもたちは、社会常識が邪魔しないから、人間のプリミティブな本質に近い存在。映画の中では、生まれたての赤ちゃんだったミライちゃんが成長した姿になってやってきますが、そんな不思議なことも4歳児の世界だったら素直に受け入れられるじゃないですか。

実はうちの子が、『夢で大きな妹に会ったよ』と言う話をしたんです。大きな妹って何かと思ってよく聞いてみたら、成長した妹だって言うんです。『お! これはなかなかいいことを言うじゃないか!』と(笑)。これが10歳児だと、大人と同じような常識があるから『なぜ? どうしてそういうことが?』みたいになるし、我々大人は、常識を乗り越えるのにたくさんのプロセスが必要。でも、4歳児の世界ならそんなことをすっ飛ばして本質にガッと迫れる。そういうエンタテインメントって、他にはなかなかないと思うんです。

最近になってようやく子育ての意味や面白さが分かってきて。それも一種の追体験みたいなところがあります。子ども時代に同じようなことがあったとか、自分の記憶と照らしあわせながら子どもの成長を追体験しているわけですが、でも1つ、僕たちと彼らには大きな違いがあります。圧倒的に"未来"というものが違うんですよ」

4歳児が主人公だけあって、物語の舞台は家の中がメイン。だが、これまでの細田作品に共通する壮大なイメージの広がりも併せ持つ。

「今の時代は、子どもにとっての両親のあり方1つとっても、僕らの時代とはすごく違っていますよね。抱っこ紐の父親姿も、今は普通に見かけるようになりましたが、少し前はそんなじゃなかった。今まさに音を立てて変わっている最中です。

昔は、ある種のひな型みたいな家族像とか家庭像がありましたが、でも今はあらゆる家族のあり方がありえます。育児分担にしても、父・母のジェンダー的な意味においても、決めつけやこれまでの枠組みには全然収まりきらないわけです。今、家族を描く面白さはそこにあります」

 「反面、高度成長期や人口増加で市場規模が広がっていった成長する社会、科学技術が世界を豊かにすると思えた20世紀的未来像と、21世紀的未来像は大きく違ってしまいました。特に日本は人口が減少して、それまでの社会保障や信じていたものがそのままでなくなっていくかもしれない。そうした時代の流れがあって、自分たちが過ごしてきた人生が、必ずしも彼らに当てはまるとは限りません。自分のときはこうしたといったアドバイスや、経験主義的なことが何も言えなくなるわけです。

自分たちの親、またその親の世代まで遡って考えれば、それこそ人権が尊重されない戦争や厳しい時代があったわけです。そんな状況が今後また、起こらないとも限らない。少子化で、政治に興味があるないに関わらず若い人たちの声が反映されにくい、そんな状況だから子どもたちに加勢したくなります。過去から繰り返し続いてきた未来がどういうふうに見えるのか。未来に向けてしっかり生きていってほしい。自分たちが育った社会状況と変わってしまったのでアドバイスできない僕たちは、そう思うしかないですよね」

子どもたちの未来に向けて

 「どこにでもある家族の姿を描いていますが、そこには世代を超えた家族のつながりを象徴的に示す壮大なイメージも盛り込んでいます。実は脚本を書いている途中、突然、93歳の(細田監督の子どもの)曽祖父が亡くなってしまったんですよ。生まれたばかりの妹とこの間亡くなってしまった曽祖父が結び付き、そこからいきなり世代を超えた関わりを描かずにはいられなくなりました。

4歳児は、家の中だけが世界だから、家族を描くにはそれでいいんです。子どもの視点なら、家族を家族だけでくくることができる。そして、どこにでもあるような家族の有り様を描きながら、過去から続いてきた歴史のバトンを次の世代に手渡すイメージ、人間の生と死の循環、家族の大きなサイクルみたいなものをエンタテインメントとして味わっていただけるような作品になっていると思います。

未来は、必ずしも明るくはないかもしれません。でもアニメーションで子どもを描くなら、そこにブレークスルーを期待したい。僕らは今、複雑な思いを抱きながら子育てしているけれども、そんな親の気持ちなんか関係なく、子どもたちはバイタリティーをもって、どんな時代であっても切り拓いていってほしい。大人が思い描くどんよりした未来ではなくて、子どもは子どもたち自身の未来を自分の手でつかむだろう、つかんでいくに決まっている。そんないきいきした生命力を表現したいのです。

そうした思いを込めたのが『未来のミライ』です。子どもから見た未来はどんなふうに見えるのか、妹のミライちゃんが成長して未来からやってくる話なので、字面通り"未来からきたミライちゃん"でもあるし、未来という概念そのものの未来、未来の先にある未来、この子たちが変えていく未来。それはどんな世界になっていくのか。そうした二重三重の意味を込めた映画です」

(ライター 波多野絵理)

[日経エンタテインメント! 2018年5月号の記事を再構成]

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