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少子化止まらない日本 多様な家族観を許容する社会を ダイバーシティ進化論(村上由美子)

2018/6/9 日本経済新聞 朝刊

写真はイメージ画像=PIXTA

 社会人生活30年を迎える私と同世代の友人が先月、初めて母になった。人生100年の時代なのだから、五十路を過ぎて子育てを始めるという選択肢もおかしくはない。その実現には、子育てのための経済条件などを各家庭が整えることはもちろん欠かせないが、社会として人生観や家族観の多様性を尊重していくことも大事だろう。

 これまでは男性が一家の主として家族を養い、女性は子供ができたら仕事より育児を優先というパターンが主流だった。育児が一段落すると職場復帰を望んでいた女性でも多くは非正規雇用となる。さらに仕事と育児を両立しようとする母親にとって、保育園入園はハードルが高く、経済的にも肉体的にもハードな2人目以降の子供を持つことは躊躇(ちゅうちょ)しがち。経済面での不安から結婚をためらう男性や、仕事に忙殺されて出産のタイミングを逃してしまう女性も多い。日本人の未婚率は上昇傾向が続く。

 子供の割合が総人口比12.3%と、44年連続で過去最低を記録した日本。少子化に歯止めがきかない。だが、少子化問題先進国が多い欧州には、出生率を改善させた例もある。移民が理由である場合も多いが、同時に子育て支援の拡充も、確実に結果を出している。保育園などの社会インフラを強化すると同時に雇用システムに柔軟性を持たせ、仕事と育児の二者択一を迫られない環境を促進しているのだ。実際、この政策により近年ドイツ女性は高齢出産率が高まり、全体の出生率向上に貢献している。

 出生率回復に成功した国の特徴は、育児や家事、仕事や経済自立に関し、男女とも当事者意識を持つ風土が醸成されている点であろう。そして結婚や出産などの極めて個人的な人生の選択を、社会規範が制約するのではなく、人生観と自己責任に基づいて個々の男女が決められる環境があることだ。女性に出産を奨励するだけでは、少子化解決につながらないことは火を見るよりも明らかである。

 前述の友人はビジネス界で大活躍しながら、新米ママの生活も楽しんでいる。彼女のパートナーは進んで夜泣き担当をしているらしい。将来2人目の子供をもつ可能性さえありそうだ。家族の在り方は千差万別。家族観のダイバーシティ(多様性)を許容する社会でこそ、子供を産み育てやすくなると考えるのは私だけではないはずだ。

村上由美子
 経済協力開発機構(OECD)東京センター所長。上智大学外国語学部卒、米スタンフォード大学修士課程修了、米ハーバード大経営学修士課程修了。国際連合、ゴールドマン・サックス証券などを経て2013年9月から現職。米国人の夫と3人の子どもの5人家族。著書に『武器としての人口減社会』がある。

[日本経済新聞朝刊2018年6月4日付]

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