家主の不在は1時間まで 民泊、ビックリ規制で激減15日解禁も届け出低調

手元にあるのは、自らの名前と住所、電話番号を詳細に記したチラシ。「皆様の暮らしの迷惑とならぬよう、十分に配慮して実施いたします。ご不明点等ありましたら、ご連絡をお願いします」とある。周辺10メートルにある全戸にポスティングするよう、区から求められたという。

東京都港区が民泊事業者に示しているポスティングのひな型

近所には賃貸アパートがあり、だれが住んでいるかも分からない。「民泊の利用者は荷物を部屋に置いて外出することも多いのに、泥棒に入ってくださいとアピールしているようなものだ」とCさん。周辺住民の不安に応えるためという区の説明にも、「民泊する人の安全を考えてくれているのか」と疑問を投げかける。

Cさんは民泊を続けるため「ポスティングはする」というが、妻(42)は自分名義で持っているマンションでの民泊をやめるという。「同じようにプライバシーの問題で断念する人は多いはず」とCさんは話す。

ここで紹介した3人の家主は、いずれも法に基づかないヤミ民泊を営んできた。民泊新法の施行にともない、正式に届け出て民泊を続けるか、やめるかの判断を迫られた。寺本振透・九州大教授は「人はみなお金、手間、時間といったコストとパフォーマンスを比べて、見合わないことは避ける。民泊についての煩雑な手続きや細かな規制が、家主に民泊を断念させる方向に働いている」と話す。

特に寺本教授が問題視しているのは、自治体による上乗せ規制だ。たとえば条例で民泊利用を週末だけに制限したり近所へのポスティングを求めたりするのは、民泊を促進する民泊新法の趣旨に外れる恐れがあるという。家主が自宅を不在にしていい時間についても、「観光庁などが法律に合わせて作ったガイドラインでしかなく、絶対的な基準ではない。それを理由に自治体が届け出を受け取らないことは本来あってはならない」。

こうした民泊の規制は、外国人の利用者の目にも奇異に映るようだ。通訳の仕事のため約3カ月おきに来日するというフランス人のオレリアン・エスタジェさん(38)は、民泊を週末に限定する地域が多いことについて「長く滞在してこそ地元に溶け込めるのに」と心外な様子。家主が不在にできる時間が決まっていることについても、「旅行者はたいてい朝から晩まで外出しているので、家主がずっと自宅にいる必要はないはず」と首をひねっていた。

厳しすぎる規制、軌道修正も

民泊解禁を目前に控えて、家主の間でささやかれているのは「真面目な人ほど民泊をやめる」という実態だ。ガイドラインなどに書かれているルールを額面通りに受け取って、厳格に守ろうとすると、個人では続けにくい。結果的に「従業員を抱えていて資金力があり、弁護士にも随時相談できる企業ばかりになる」。

あまりに届け出が低調なためか、霞ケ関のスタンスも揺れている。同居の家主が自宅を不在にできる時間について、観光庁は当初「チェックインからチェックアウトまでが対象で、宿泊者が外出している間も原則として自宅にいなければならない」としていたが、解禁直前になって「宿泊者が外出している間は家主は自宅にいる必要はない」と軌道修正し始めた。

せっかく民泊新法が施行されても、使われないのでは意味がない。2020年東京五輪・パラリンピックが近づくにしたがって、民泊のニーズは一段と高まる。観光庁などは運用状況をみながら、施行規則やガイドラインを随時見直していくことが必要になりそうだ。

(オリパラ編集長 高橋圭介)