即レスが来るメール術 書き方工夫でじぶん働き方改革
働き方改革のコンサルティングを行っている池田千恵さんが、明日からすぐに実践できる仕事術・時間術・コミュニケーション術などを紹介。今回は、基本中の基本、メールの書き方を教えます。返事がなかなか来ないときは、「忙しいのかな」と相手のせいにしてしまいがち。あなたが少し工夫をするだけで、「相手が返事をしやすいメール」のコツを解説します。
「失礼のないように…」の配慮が分かりにくさの原因に?
初対面の人、関係性が薄い人、目上の人……。「あ、うん」の呼吸でコミュニケーションを取ることができない相手とのメールは誰でも緊張するものです。さまざまな方面から失礼がないかどうかを考えるため、普段よりも時間がかかってしまうことも多いことでしょう。
しかし、メールの作成に時間をかければかけるほど、よいものができるとは限りません。丁寧な表現を考えようとすればするほど、回りくどくなってしまうし、何度も読み直し、書き直すから時間がかかってしまう……と悩む方も多いのではないでしょうか。時間をかけて丁寧に書いたメールも、結局相手からの返信が遅かったり、返事がもらえなかったりしてイライラ……ということも多いかもしれません。
そこで、今回はメールでのやり取りでいかに「じぶん働き方改革」を進めていくかに焦点を当てていきましょう。
目上の人でもそうでなくても欲しい情報は同じ
メールでのコミュニケーションの分かりやすさを決定づけるのは「文章の骨格」です。「誰がどうした、何をしたい、ついてはあなたに何をしてほしい」こういった最低限の情報が伝わればいいわけで、枝葉はおまけです。メールを送る目的が分かっていたら、その目的を達成するために必要な項目は目上の相手に対しても、そうでなくても一緒です。
むしろ、目上の人にこそ、長々とした文面ではなく、要点をきちんと分かりやすくまとめたメールを送る必要があります。なぜなら時間は有限だからです。相手の貴重な時間を奪うことなく、即断即決してすぐに返事がもらえるようなメールの書き方をマスターすれば、おのずと仕事が進むスピードも速くなりますし、相手の時間を尊重することにつながるので評価も上がります。
……と偉そうなことを書いている私も、かつてはメールの文面をこねくりまわして、1通のメールに30分も時間をかけてしまうこともザラでした。しかし、経営者との会食が多かった上司からの次の言葉で意識が変わりました。
「長年、経営者と仕事をさせてもらって思うことは、偉くなればなるほど、お金じゃなくて時間を本当に大切にしている。だから私はいつも、会食のときには必ず、『貴重なお時間を私どもにくださって、本当にありがとうございます』と伝えるんだよ」
例えばほんの1時間で、社員全員の将来を左右する決断を下すこともある社長業。そんなプレッシャーが大きい中での1時間は、お金や物などには到底換算できないものです。だからこそ、お金よりも自分の時間を最も大事にするということでした。つまり、自分のメールで相手にラクをさせることができれば、あなた自身もラクな上に、相手にも評価されるのです。
では早速、仕事が速くなって評価されるメールの書き方について解説していきましょう。
伝えたいことを簡潔にまとめるスキルの磨き方
メールが遅くなってしまう理由は大きく3つあります。
1.伝えたいことを簡潔にまとめるスキル不足
2.単純にタイピングが遅い
3.よく使う文言を自分なりにまとめていない
中でも「伝えたいことを簡潔にまとめるスキル不足」を解決するための方策について詳しく説明していきます。
最初にすべきことは「何を書くか」ではなく、「メールを送った後、相手に何をしてほしいか」を明確化することです。
例えば、あなたがメーカーの商品開発部門で働いているとして、30代子育て中の女性を集めてグループインタビューを開催し、リアルな声を集めて商品開発に生かそうと思っているとします。担当のあなたの他に、オブザーバーとして商品開発だけでなく営業を統括する林部長に参加を打診し、営業視点ならではのアドバイスをもらいたいと思ったとき、どのようなメールを送ればいいでしょうか。「Before→After」で見てみましょう。
スルーされる残念メールはコレ
まずは、残念なメールの例からです。
<Before>
林部長
商品開発部の池田と申します。突然のメール失礼いたします。
都市部在住30代子育て中の女性で、かつ正社員で働いている女性向けの○○という商品を開発できないかただいま模索中です。
営業を統括されている林部長のご意見もお伺いしたく、お忙しいところ恐れ入りますが、○月×日、△時~○時、第2セミナールームで行われるグループインタビューにオブザーバーとして参加いただけないでしょうか。お時間のあるときにご返信いただけますと幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
今回分かりやすくするために少し大げさに書きましたが、目上の人に送るからといって、本当は返信を早くもらいたいものを「お手すきの際で結構ですので」とぼやかしてメールの依頼をする人が結構多いのです。途端に返信率も低くなり、要点がつかめないためにスルーされることが多くなります。
また、「ご意見をお伺いしたく」だけでは目的は不明確です。「なんで貴重な時間を使ってまで私に出てほしいのか?」の必然性も見えないため、このメールでは断られてしまう可能性が高いです。
返事をもらえるメールはコレ
<After>
林部長
商品開発部の池田と申します。
今回営業を統括している林部長にぜひともグループインタビューにご同席いただきたく、突然ですがメールさせていただきました。
都市部在住30代子育て中の女性で、かつ正社員で働いている女性向けの○○という商品を開発できないかただいま模索中で、今度対象の方に来ていただきグループインタビューを行います。
つきましては、直接取引先や店舗で対象となる女性と接する機会が多い林部長に、グループインタビューでは見えないホンネの部分を参加の皆様から引き出していただきたく、ぜひともオブザーバーとして入っていただけないでしょうか。
お忙しいところ恐れ入りますが、もし参加いただけるのであれば、
△月×日までにご返信いただけますでしょうか。
どうぞよろしくお願いいたします。
グループインタビューの詳細は以下になります。
<目的>
新商品開発のために対象となるお客様にインタビューを行う
林部長にオブザーバーとして参加いただき、営業統括の知見を通じてインタビューに潜むホンネを引き出していただきたい
<日時・場所>
○月×日、△時~○時
第2セミナールーム
このように、「何がどうした、ついては相手に何をしてほしい」が分かるようにすると相手にも余計な時間を使わせないで済みますし、返信日時も曖昧ではなく明確に書いておいたほうが「いつまでに返事をしないといけないのか?」という疑問に先回りして答えていて、部長も助かります。期日までに返信がなければ、残念ですがスルーされた、ということも分かるのでムダなイライラに悩まされることも少なくなります。
今回の記事をまとめると、次のようになります。
・メールの文章をうまくするための時間を使うのはやめよう
・表面的な文章より本質が分かればOK
・「何を書くか」ではなく、「相手に何をしてほしいか」を明確化する
1 メールタイトルかメールの冒頭で、このメールを読んでどんなアクションを求めているかを明確にする
2 「何がどうした」「誰がどうした」「で、私にどうしてほしいの?」 が、パッと読んで分かるようにする
3 「週明け」「午後イチ」「朝イチ」「今日じゅう」など、人によって解釈が異なる言葉を避ける
この連載で提案している「じぶん働き方改革」とは、自分の時間に対する意識を高めて仕事の生産性を上げるのは当然のこと、相手の時間をいかに奪わないかを意識することでもあります。
分かりやすいメールを書くことで相手からの返信が早くなれば、あなたもうれしいし相手も貴重な時間をメール返信に費やすことがなくなりラクになりますよ。
株式会社 朝6時 代表取締役。慶應義塾大学総合政策学部卒業。外食企業、外資系戦略コンサルティング会社を経て現職。企業や自治体の朝イチ仕事改善、生産性向上の仕組みを構築している他、「働き方改革プロジェクト」「女性活躍推進プロジェクト」など、ミドルマネジメント戦力化のためのコンサルティングや研修を行っている。「絶対! 伝わる図解」(朝日新聞出版)、「朝活手帳」(ディスカヴァー21)など著書多数。
[nikkei WOMAN Online 2018年4月25日付記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。