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150年存続の秘訣「スモール・イズ・ビューティフル」

神戸・元町の柴田音吉洋服店(下)

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NIKKEI STYLE

1868年(明治元年)の起業以来、神戸・元町でビスポーク(ハンドメード)スーツにこだわり続ける柴田音吉洋服店。その150年間は、そのまま近代日本の洋装史でもある。前回「最初の顧客は伊藤博文 明治元年からスーツづくり 」に引き続き、激動の時代を乗り越えてきたその心髄を現社長の5代目柴田音吉氏に聞いた。




――柴田音吉洋服店が受け継いできた理念は何でしょうか。

「ビスポークの原点である『最後の1針まで1人の職人が縫う』を守っています。スーツは上着を6万針、パンツは約3万針が必要です。仮縫いから約28時間かかり、そのうち26時間が手作業の工程です。職人一人ひとり、針のテンション(圧力)が違い、縫い方も異なります。最後まで1人だけが担当することで着心地がよく、長い間形崩れしないスーツに仕上がります」

「当然ながらコストは高い。1着30万~40万円からで、生地によっては100万円を超えることもあります。生地は約500種類を常時そろえています。1カ月に作れるのは20~30着ですね」

――工場長(チーフカッター)の稲沢治徳氏は「神戸マイスター」や厚生労働省の「現代の名工」にも選ばれています。

「高度な縫製技術と裁断が評価されました。スーツ作りの大きなテーマである、機動性のあるゆとりと美しいシルエットを両立させました。現在79歳ですが24歳で入社して以来、変わらず一線で働いてもらっています」

「工房には現在6人が従事しており、60歳以上のベテランぞろいです。長い経験に裏打ちされた技術は得がたいものです。健康を維持して働いてもらうために自宅勤務制を導入しています。次世代への技術継承についは、後継者となる人材を発掘して進めています」

――明治以来の顧客数は約2万人、型紙が約3000枚残っているそうですが、どのような人々が顧客だったのですか。

「関西が中心ですね。戦前は藤田財閥の藤田伝三郎男爵や大倉財閥の大倉喜八郎男爵。鈴木商店の金子直吉氏や川崎製鉄(現JFEスチール)の松方幸次郎氏、九州の麻生財閥の麻生太喜蔵氏といった方々です。戦後は松下電器産業(現パナソニック)の松下幸之助社長や東洋紡績(現東洋紡)の宇野収社長、森下仁丹の森下泰社長。ノーベル化学賞受賞者の福井謙一・京都大学名誉教授にも作っていただきました」

「地元では神戸銀行(現三井住友銀行)の石野信一頭取や神戸製鋼の外島健吉社長。4代続けて作っていただいているお客さまもいます。ここ数年は『初めてビスポーク服を作りたい』という30~40歳代の顧客が増えています」

――若い顧客に最初の1着として、どのようなスーツを薦めますか。

「チャコールグレーです。ビジネスにも冠婚葬祭にも使える基本中の基本です。日本ではネイビーがもてはやされ過ぎていると感じます。本来は夜の食事に出掛けるときなどに着用するものです。ブラックも欧州ではファッションカラーとして着用されます」

――150年の歴史の中では何度も経営危機に遭遇したと思います。

「大きな危機は4代目社長、柴田高明の時代の第2次世界大戦と敗戦でした。店舗は空襲で全焼しましたが倉庫ビルは残りました。独占契約を結んでいた英仏の毛織物商社、ドーメルと1947年(昭和22年)から取引再開できたのが立て直しの転機になりました。ドーメル社も倉庫をスコットランドに移転していたおかげで、ドイツのロンドン空襲の被害を免れていたのです。ヨーロッパからプレタポルテやネクタイ、ハンカチーフなどの輸入販売をいち早く手掛けたのも業績に貢献しました」

「第2の危機は私が経験した阪神大震災とバブル経済の崩壊です。輸入布地部門などから撤退してビスポーク中心にする一方、軽量で形崩れしないジャケットなどを開発して展開しています」

――長い歴史を持つ会社を経営するにあたって心掛けていることはありますか。

「まず『スモール・イズ・ビューティフル』を旨に経営しています。過去には年商約80億円程度の時代もありましたが、いっとき東京に設けた以外、神戸のほかに拠点を持ちませんでした。他方、国際的なファッション業界の動向は常に情報収集しています。私も年4回は海外市場を視察していました」

「ただビスポーク単独で事業を継続していくのは難しい。時代に合ったサイドビジネスが必要になります。2代目はマッチ製造を展開していました。私は不動産関連の事業を手掛けています」

「本業についていえば、小さい規模でも中身を満たさせるために生地は買い取り、製品の委託販売は行いません。また、パートは雇用しません。企業は存続することが最優先課題です。150年間、無借金経営を続けています」

(聞き手は松本治人)

前回「最初の顧客は伊藤博文 明治元年からスーツづくり 」もお読みください。

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