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長時間労働の営業トップは不要 三井住友海上

三井住友海上火災保険(下)

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NIKKEI STYLE

三井住友海上火災保険が2017年4月に導入した「遅くとも原則19時前の退社」ルール。社員のワークライフバランスに対する満足度は向上したが、営業現場では反発もあったという。現状はどれほど守られているのだろうか。上編の「19時前退社で『仕事力絶対に上げる』」に引き続き、人事部の荒木裕也課長と笠原直子課長に聞いた。

トップセールスマンの働き方も変える

白河桃子さん(以下、敬称略) 働き方改革への取り組みについて評価や報酬はどうなっているんですか。

荒木裕也さん(以下、敬称略) 評価は行動と成果という二軸があります。行動のほうでは、時間当たり生産性が高い働き方をしているかなどを評価します。

白河 そこも評価に入れたんですね。

荒木 はい。部下と上司で年初に「生産性の高い働き方」について話し合いを行います。年間を通じて、そのコミットした働き方ができていなかったら、そこについては評価が低くなります。

白河 今まですごく時間をかけて高い成果を出していた人がいるとして、その人はもうその時間を使った高い成果は達成できなくなりますね。19時前退社になるわけですから。

荒木 そうです。そこはもう、そういう働き方を見直さないといけない。例えば、仮に1人の成果は下がってもほかの1人が成果を上げれば、組織としてのパフォーマンスは維持できます。残業の一因として、1人のトップセールスマンに他のメンバーが引きずられて、便乗残業を生んでしまうケースもありました。

確かに能力も高いしコミュニケーション能力も高いのですが、だからこそ仕事がどんどんできる人に寄せられてしまって、成果もそれに伴い出てしまうというケースです。

さきほどの女性活躍も同時並行で進んでいますので、女性社員や若手社員の役割拡大を目指し、業務量の平準化、つまり仕事の棚卸しをしている状況です。組織全体でしっかりと成果を上げていこうと。

白河 19時前退社になると、残業代とかはどうなんですか。

荒木 残業代については、例えば、営業社員の場合は事業場外みなし労働時間制なので変わりません。

白河 19時前に帰ることになって、2時間ぐらい残業減りました、お給料も減りました、ってことにはならない。地域限定職に関してはどうですか。

笠原直子さん(以下、敬称略) 同じです。支店などの営業部門に所属している社員も同様です。

白河 トップセールスの人が、もし時間をかけてその成果を上げているのであれば、残業できないことに抵抗すると思います。組織としてパフォーマンスが上がれば、あなたの成績がトップじゃなくてもいいです、という意味になりますが、どうやって納得してもらうんですか。

荒木 そうですね。損害保険のビジネスモデルは「BtoBtoC」です。代理店さんが直接の営業をしていまして、弊社の営業部門が自分で契約をとっているわけではないんです。稼いでくれる代理店を担当しているからこそ、その人のパフォーマンスが高い。そうした代理店をたくさん担当すれば、長時間労働につながります。それをばらけさせて担当割を最適化します。

白河 じゃあ属人化をしない方向にいくんですね。抵抗もありそうですが……。

荒木 属人化をしないように。また人材育成という観点も重要なので、あなたのノウハウは職場に広めましょうと。そうすることで個人の成果が評価されつつ、行動面でこの人は職場においてとても高い貢献をしたってことで評価が高まってくる。そのようにしてバランスをとっています。

代理店とは一緒に効率化

白河 19時前退社について代理店さんにはどういう理解を求めていらっしゃるんですか。

荒木 代理店さんには使っているシステムや業務フローの改善なんかをお手伝いして、効率化をどんどん進めていただいています。

白河 IT(情報技術)などに結構お金をかけて。

荒木 はい。あとは業務の最適化について、代理店さん向けのコンサルティングもやっています。それで労働時間の削減、代理店の内務スタッフさんの残業を減らしましょうと。保険会社と販売者、ともに働き方改革をやっていこうということで今取り組んでおります。

白河 代理店のオンライン化も進んで、営業の方たちは、どのくらい在宅勤務とかリモートワークをするようになったんですか。

荒木 16年10月から17年の10月の1年間の実績で2000人が利用しています。在宅勤務はその前からもやっていたんですけども年間利用者は1人か2人という状況でしたので急速に普及しました。

白河 クラウド上に重要なデータを保存し、端末にはデータを残さない、シンクライアントPCを導入したからですね。安心なんでしょうか。金融関係の人はリモートワークが自社ではできないという人がすごく多いです。

荒木 金融機関として最大限の注意を払うのは、情報漏洩リスクです。シンクライアントであれば、情報セキュリティーがしっかりしているため、安心して、外でリモートワークができます。

白河 それにしても16年から急激に動いたという印象です。それはやっぱりトップのコミットがあったからでしょうか。

荒木 はい。それでもどうすれば具体的にできるのかというところはみんな迷ったので、ささいなことでもいいから形にしようと、それを一つ一つ具現化してきたのが働き方改革ですね。

白河 働き方改革の成果として、数値としてはっきり見えるものはありますか。

荒木 残業は10%減っています。例えば、PCの操作終了時間は早くなっています。全体で16年度は18時台後半だったものが、17年度は18時台前半になっています。帰る時間は早くなっていると思います。

笠原 社員の意識調査でも仕事とプライベートのバランスがとれている、という設問に対してのスコアが、すべての社員区分で上がっています。

働き方の変革は今後も続く

白河 大和証券グループが同じように19時前退社をルール化したのが07年です。上層部の方に聞いた話だと、残業時間はすぐに減ったけれど、社員が実際に働き方に納得したのは4、5年後だったそうです。御社の場合はいかがですか。

荒木 社員の意識調査でもワークライフバランスのスコアが相当上がったので、全体からみると納得感もある取り組みだと思うんです。それでも一部の職場ではまだまだ苦労している実態もあります。あと1年とか2年、継続的に、そのような職場が抱えている課題をしっかり聞いて、受け止めて改善していく取り組みが必要だと思います。

白河 最初は隠れて残業する人もいると思います。19時前が必ずしも守られているかどうか、わからない状況ですか。

荒木 19時以降の残業が悪いというわけではなく、お客さま対応など必要があれば、上司に申請をして残業してくださいとお願いしています。残業申請をしたうえで仕事しています。

白河 保険の業務は今後、自動化ツールやAI(人工知能)などで効率化できる部分も多いと思います。今もかなりやられていると思うんですけど。

荒木 今まで、400個のロボットプログラムを営業部門の定型業務に使用してきました。現在はRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入して、本社部門などの定型業務を改善しています。AIの活用でも保険金支払部門で実証実験をしています。手作業でやっていたものを自動化に向けて取り組んでいます。

白河 定型とはいえ、事務作業を自動化できるソフトウエアを使いこなすには、優秀な職場リーダーがいないと難しいと聞きます。支店などは職場のITリテラシーによってかなり違ってきますね。

荒木 確かにプログラム、オペレーションがかならず変わっていきますので。変わる都度プログラムを書き換えなければいけない。ソフトウエアをメンテナンスする要員が必要なんです。それを誰がやるのかが一つの課題です。

先進デジタル技術を活用して、社内のオペレーションを変えようとしているんですけど、あわせて社員全員のITリテラシーを高めていく必要がある。働き方改革の成果として、個の力の一つに先進デジタルの活用リテラシーを高めていきたい。学習ツールを提供していこうと考えています。

白河 事務作業の自動化が進むと、事務の社員がいらなくなるんじゃないか、と危機感を持たれる方もいるのかなと思います。そうした声はありますか。

笠原 一部でそういう声はありました。デジタル化で仕事の内容やプロセスが変わっていくことを広く伝え、それに向けたスキルの向上などに努めていく必要があります。

荒木 新たな成長領域もありますし、ホールディングス全体で考えれば、損保、生保、後はシンクタンクなどもあります。部門間の異動だけでなく、新たな事業領域にチャレンジする人を増やすことなども検討していく必要があると思っています。

白河 まさに大変革ですね。これだけの大きな組織で、女性の人数も多いわけですからね。「地域限定総合職って名ばかりの事務職じゃないか」という人もいるかもしれませんが、今後は事務だけではない。そうは言っていられない時代ということですね。

あとがき:09年の決算に対する危機感をきっかけに働き方改革に取り組んできた三井住友海上。危機感がある企業は変化が早い。やらされる改革ではないので本気度が違うからです。19時前退社で、評価軸も変える。これは「労働時間を思いきり使える」人にとってはアドバンテージを生かせなくなるので、歓迎できない施策。しかし会社は全体最適を考えなければなりません。女性だけでなく「男性の活躍の仕方」「時間あたりの高い生産性」も問われるのです。女性の活躍に必要なのは、特別扱いではなく「フェアネス」な環境です。評価や報酬に踏み込む改革は、さしてメリットを感じない現場をどう巻き込んでいくかが重要です。現場の上司も人事と兼務で働き方改革に取り組む。この姿勢は他社でも共有できそうです。

白河桃子
 少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「『婚活』時代」(共著)、「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)。

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