北極も深海も 海洋生物を死に追いやるプラスチック

日経ナショナル ジオグラフィック社

2018/6/3

今、世界で生産される年間約4億トンのプラスチックのうち、約4割は使い捨てで、多くは購入後すぐに用済みになる包装材だ。プラスチックの生産量は猛烈な勢いで増えている。過去15年間の生産量がこれまでの累積生産量のおよそ半分を占める。プラスチック製のボトルを最も多く製造している企業はおそらくコカ・コーラだろう。同社は2017年、初めて製造量を公表した。その数は年間1280億本にのぼるという。

生産の急速な伸びに、ごみ処理システムの整備はとても追いつかない。その結果、海にプラスチックがあふれている。こうした状況の背景の一つとして、急成長するアジア諸国で使い捨てプラスチック包装材の利用が増えたことが挙げられる。これらの国々では、ごみの収集システムが十分整備されていない。

海に流れ出るプラスチックは止まらない

「北米とヨーロッパで100%リサイクルしたとしても、海洋に流出するプラスチックの全体量はほとんど変わりません」と言うのは、米国と祖国インドでこの問題に取り組んできた米ミシガン州立大学の化学工学者ラマニ・ナラヤン氏。

2014年3月、クアラルンプールから北京に向かう途中、マレーシア航空370便が消息を絶った。その後インドネシアからインド洋の南まで広範囲で捜索活動が行われたが、残骸らしきものは一向に見つからなかった。海を漂う物体の固まりが衛星画像に映るたびに、航空機ではないかとの期待が高まったが、それらはすべてごみで、壊れた貨物コンテナの破片、捨てられた漁具、レジ袋もあった。

米国シアトルに本部があるNPOの調査機関「アース・アンド・スペース・リサーチ」の代表で科学者のキャスリーン・ドーハン氏は、この事故は悲劇とはいえ、啓発の機会にもなると考えた。長年見過ごされてきた問題について、全世界が初めて実態を目の当たりにしたと、彼女は当時話している。「世界の海がごみ捨て場になっていることを、今こそ知ってもらいたい」

「私たちはプラスチックで便利な製品を作ることには一生懸命でしたが、製品の寿命が尽きたときのことには無頓着でした」と海洋生態学者は語る。

産業界が貢献するには二つの方法がある。一つは科学者の協力を得て、生分解性が高い新素材や、リサイクルしやすい製品を開発することだ。この問題の長期的な解決策としては新素材の開発とリサイクル率の向上が不可欠だ。そして必要以上にプラスチックを使わないことも重要だ。専門家は、手っ取り早く大きな効果を上げるには、高度な技術など必要ない、と言う。「単にごみを収集すればいいだけの話です」

(文 ローラ・パーカー、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2018年6月号の記事を再構成]

[参考]ナショナル ジオグラフィック6月号では、ここに抜粋した特集「プラスチック」で、人間への影響も取り上げています。この特集のほか、サッカーボールを追いかけて/北米の消えた入植者たち、などを掲載しています。

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著者 : ナショナル ジオグラフィック
出版 : 日経ナショナルジオグラフィック社
価格 : 1,170円 (税込み)


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