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北極も深海も 海洋生物を死に追いやるプラスチック

日経ナショナル ジオグラフィック社

2018/6/3

ナショナルジオグラフィック日本版

 19世紀後半に発明されたプラスチック。私たちの生活をより便利なものにした素材だ。プラスチックの生産が本格化したのは1950年頃で、これまでの累計生産量は83億トン。そのうちリサイクルも含めて廃棄されたプラスチックは63億トンで、リサイクルされなかったプラスチックは実に57億トンもあるという。廃棄されたプラスチックの影響で深刻なのが、海洋への流出だ。海洋生物ばかりか、人間への影響も懸念されている。ナショナル ジオグラフィックでは、使用後のプラスチックの現実を2018年6月号で取り上げている。

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 回収されなかった廃プラスチックがどれだけ海に流入しているのか、誰にもわからない。こうしたプラスチックは絶滅危惧種も含めた700種近い海洋生物に影響を与え、毎年多くを死に追いやっていると推定される。投棄された漁網にからまるなど、目に見える形での被害もあるが、目に見えない形でダメージを受けている生物はもっと多いだろう。

 直径5ミリ以下の微小なプラスチック粒子は「マイクロプラスチック」と呼ばれ、今では動物プランクトンからクジラまで、あらゆる大きさの海洋生物が体内に取り込んでいる。

 マイクロプラスチックは、深海の堆積物から北極の海氷まで、調査されたあらゆる海域で見つかっている。ハワイ島の浜辺の砂は、多い地点でこの粒子が15%を占めている。カミロ・ポイント・ビーチには、北太平洋をぐるりと回る、北太平洋旋回と呼ばれる海流に乗ってプラスチックが漂着する。世界には大量のごみを一定の海域に集める循環流が五つあるが、なかでも北太平洋旋回は最もごみが多い。

 第2次世界大戦中に連合軍が活用したのを皮切りに、広く利用されるようになったプラスチック。これほど人々の暮らしを変えた発明品も珍しい。宇宙開発に貢献し、医療に革命をもたらし、自動車や大型ジェット機を軽量化して、燃料消費と大気汚染を減らす役目も果たしている。生鮮食品を包んで保存期間を延ばし、エアバッグや保育器、ヘルメット、清浄な水を届けるボトルとして、人命を救うために日々役立ってもいる。

 プラスチック革命に拍車がかかったのは20世紀初め、豊富で安価なエネルギー物質、石油を原料とするようになってからだ。それまでは天然の高分子化合物を使っていたが、原油の精製過程で生じるエチレンなどのガスの分子を結合させれば、さまざまな新しい高分子化合物を生み出せることがわかったのだ。ペットボトルの原料として知られるポリエチレンテレフタレート(PET)もその一つだ。これにより、プラスチックの用途は一気に広がった。あらゆる物をプラスチックで作れるようになり、私たちの周りには安価なプラスチック製品があふれた。

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