目安はお尻・前ボタン… ビジネススーツの賞味期限
本格的な夏を前に、衣替えをする人も多いだろう。そんなときに考えたいのがビジネスウエアの捨てどきだ。『ユニクロ9割で超速おしゃれ』『おしゃれが苦手でもセンスよく見せる 最強の「服選び」』の著者でスタイリストの大山旬氏に、スーツの「賞味期限」について聞いた。
「高いスーツこそ長持ち」は間違い
大山氏いわく、「洋服に一生ものはない」。高いデニムでも数年はけばくたびれてくる。また、同じMサイズでも5年前と今とではサイズ感が違うので、古いものを着続けているとやぼったく見える可能性があるという。自分ではまだまだ着られると思う服でも、賞味期限があるということだろう。
だが、カジュアル衣料ではなく、スーツの場合はどうなのだろうか。イタリア製の上質な生地を使い、職人が手作業で仕上げた高級スーツを「一生もの」と考えて購入する人もいるだろう。しかし、高いもの=丈夫ではないと大山氏は話す。
「生地が繊細なので引っ掛けには注意。また、手縫いでボタンを付けているので取れやすいことも。高級な素材ほどデリケートだということを覚えておいてほしい」
スーツの捨てどきのチェックポイントは?
また、スーツは着ているうちにテカリが出てきたり、生地表面の毛がつぶれて風合いが変わってくるという。とはいえ、ほつれやほころびがない限り、なかなか捨てる気にはなれないだろう。そこで大山氏に捨てどきの目安となるチェック項目をいくつか挙げてもらった。
「まずは『お尻回り』。ここは特にテカリが出やすい部分。また、『もも回り』は体重が増えたり体形が変わったときに一番変化が出やすい場所。はいてみて、パツパツにならないかチェックを。上着の前ボタンを留めたときにシワが寄る場合は、サイズアップも兼ねて買い替えるタイミング」
大山氏が考えるスーツの賞味期限は、ずばり3~4年だ。「めったにスーツを着ないという人は5年に1回でも。また、冠婚葬祭用の礼服にも肩パッドの量やシルエットなどのトレンドがあるので、着る頻度が低くても10年に一度は買い替えを検討してほしい」。頻繁なクリーニングは生地を傷めてしまう。3~4着のスーツを着回し、夏場は家庭で洗濯できるスーツを取り入れるのも一つの手だろう。
買うなら「40代前半までは3万円、それ以上は5万円」
では、スーツを新たに買うなら、どんなものを選べばいいのだろうか。
「3~4年で入れ替えることを考えると、あまり高すぎないものがいい。例えばスーツカンパニーの3万円台のスーツは、トレンド感があり、品質が良いものがそろっている」
さらなるポイントとして、年代によって価格帯を変えることを大山氏は薦める。その理由は顔や肌などの見た目の印象の変化だ。若い世代は肌つやが良く、フレッシュな印象があるので3万円台でも十分だが、年を重ねてからは生地のグレードを少し上げると見た目とのバランスが良くなるという。具体的には40代前半までは3万円台、40代後半からは5万円台を目安に選ぶといいそうだ。
ビジネスシャツの賞味期限は2年
一方、ビジネスシャツの賞味期限はスーツより分かりやすい。洗濯頻度が高いのですり切れるなど、分かりやすく「経年劣化」するからだ。
「白いシャツの場合はだんだんと全体的に黄ばんでくる。また、カフスの端や襟はすり切れやすく、皮脂汚れも目立つ」
大山氏が考えるビジネスシャツの賞味期限は2年。上半身なので視線がいきやすく、ジャケットを脱いで1枚になることも多いからだという。毎日着るものなので、5~6枚そろえておき、新しいシャツを買うごとに入れ替えるといいだろう。
また、劣化よりも気づきにくいのがフィット感の変化だ。「身幅をひとつまみできるくらいがキレイなライン」(大山氏)。だが、2~3回洗濯すると縮みによって1センチほど身幅が狭くなるという。体重に変化がないのにボタンを留めたら前身頃がピチピチ。そう感じたら、買い替えどきかもしれない。
ビジネスに「ユニクロのシャツ」を薦めない理由
一方、シャツを選ぶ際は価格よりも「襟の形をチェックして」と大山氏はアドバイスする。
「セミワイドもしくはワイドカラーがビジネス向き。第一ボタンを留めたときに襟がスーツの下に固定されるので収まりが良く見える。ノーネクタイのときはボタンダウンでもOK」
ユニクロなどの量販店にはレギュラーカラーが多いので、スーツを買った店で一緒に買うことを大山氏は薦める。3万円台のスーツなら4000~5000円、5万円台のスーツなら8000~1万円のシャツが相性は良いという。
袖シャツを選ぶときのコツは?
また、以前はファッション関係者の間で「ビジネス向きではない」と言われていた半袖シャツも、セミワイドやワイドカラーを選び、サイズ感を間違えなければダサく見えないという。
「半袖シャツを着るならポロシャツのようなシルエットを意識して。腕回りがフィットし、身幅もややタイトなもの選ぶのがベスト」
定期的に服を入れ替えるメリットは「意識しなくてもトレンド感が取り入れられること」だと大山氏は話す。
アパレル販売職、転職アドバイザーを経て独立。これまでに3000人以上のスタイリングを担当。芸能人やモデルのスタイリングではなく、会社員や公務員、自営業、経営者など、一般個人を対象としたファッションコーディネートを専門としている。「自信を高めるためのファッション」をモットーに、多くの人のファッションの悩みの解決に取り組んでいる。最新書籍『ユニクロ9割で超速おしゃれ』は大和書房から発売中。
(ライター 樋口可奈子)
[日経トレンディネット 2018年5月11日付の記事を再構成]
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