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ピアニスト山田磨依 美しく香るフランス伝統音楽

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NIKKEI STYLE

ピアニストの山田磨依さんがフランスの作曲家ジャン=ミシェル・ダマーズ(1928~2013年)作品の演奏で第一人者の地位を築きつつある。2017年12月にダマーズの曲を中心にしたデビューCDを出し、ソロ公演にも乗り出した。ダマーズの源流、クロード・ドビュッシー(1862~1918年)の曲も得意とする。ドビュッシー没後100年、ダマーズ生誕90年の今年、近代と現代のフランスを象徴する作曲家2人について語る。

美しい旋律と分かりやすい構成。明瞭な和声感と色彩感。繰り返し聴きたくなる心地よい響き。どこか懐かしい雰囲気。19世紀後半の音楽かと感じられるこうしたピアノ曲を書いたのが、つい最近まで存命だった現代の作曲家ダマーズだ。

フランス音楽の伝統を引き継ぐ貴重な現代作曲家

ダマーズの親しみやすいピアノ曲がほぼ半分を占める山田さんのデビューCDはその名もずばり「ダマーズ生誕90年によせて」(発売元ソナーレ・アートオフィス)。1曲目「ソナチネ」ではドビュッシーの「ベルガマスク組曲」の「パスピエ」にも似た心和む旋律がいきなり聴ける。「出現」「夜明け」「序奏とアレグロ」と続くダマーズのピアノ曲はいずれも印象派をはじめフランス近代絵画のイメージを醸し出し、フォーレ、ドビュッシー、ラヴェルら19世紀後半以来のフランス音楽の懐かしい響きを現代作品として今に伝える。

CDデビューに続き、山田さんはダマーズの誕生日にあたる1月27日、ルーテル市ケ谷ホール(東京・新宿)で「山田磨依ピアノ・リサイタル」を開き、ダマーズをはじめCDに収めた曲を中心に演奏を披露した。日本でダマーズはまだほぼ無名の作曲家といえる。

ピアニストの斎藤雅広氏は学生の頃にラフマニノフを弾くと教師から「ポピュラー音楽はまた今度ね、と言われた」と語っていたが、かつてのラフマニノフやサティをはじめ、ポピュラー音楽とも捉えられかねない近現代の作曲家が後に高く評価され、人気も認知度も上がるという前例がある。ダマーズもそうなる可能性がある。その伝道者として若手ピアニストの山田さんが注目され始めている。

「父はアマチュアのフルート吹きで、私が小さいときにずっと家でダマーズの曲を吹いていた」と山田さんは語り始めた。「ダマーズは私が最初に触れたクラシック音楽。そこから始まった」。前衛でも難解でもない「現代音楽」のダマーズからスタートした希少なピアニスト。だから彼女は現代の音楽から源流のドビュッシーやラヴェルを訪ねて遡行していく。

 「ダマーズはドビュッシーからの伝統的なフランス音楽の流れを引き継いだ貴重な作曲家」と山田さんは説明する。ダマーズが生きた20世紀は前衛的あるいは実験的な作曲手法にしのぎを削る「現代音楽」の時代だ。新ウィーン楽派のシェーンベルク、ベルク、ウェーベルンらの無調や十二音技法から始まり、ブーレーズやシュトックハウゼンの総音列技法(トータル・セリエリズム)、ケージの偶然性の音楽などへと前衛手法が展開していった。

ダマーズから源流のドビュッシーへと遡る

こうした時代背景がありながらも「ダマーズは美しい旋律を損なわず、その中に新しいリズム、複雑に変わる調性を取り入れた」と山田さんは指摘する。現代音楽とは一線を画すが、復古主義ではなく、伝統を踏まえた上で新しい現代の響きを追求した作曲家といえそうだ。

山田さんは1990年東京生まれ。桐朋学園大学卒業後、フランスに留学し、2015年にパリ地方音楽院最高課程を修了した。全日本ピアノオーディション第1位のほか、仏クロード・カーンコンクールや大阪国際音楽コンクールなどで入賞した。デビューCDもフランス留学の成果という面が出ている。「留学の3年間で学んだことを生かし、CDの前半はダマーズ作品、後半はフランスのドビュッシーとデュカス、そして英国の作曲家エドムンド・ハーツェルさんが私に献呈してくれた作品もアンコールの形で入れた」と語る。

フランス留学の経験も踏まえ、山田さんは温故知新とは逆方向に、現代のダマーズから近代フランス音楽へと遡っていく。「ダマーズはフォーレとラヴェルに尊敬の念を抱いていた。プーランクにも影響を受けたと言っている。そのラヴェルやプーランクが影響を受けた作曲家はドビュッシー」。だからダマーズの音楽はドビュッシーとつながる。

「ダマーズはドビュッシーの『ベルガマスク組曲』をハープとビオラとフルートの編成で編曲したこともある」と山田さんは指摘する。だからこそダマーズの「ソナチネ」には「ベルガマスク組曲」の「パスピエ」に似た旋律が登場するわけだ。「ダマーズはドビュッシーが好きだったはず。ドビュッシーは美しい旋律を持ち、和声感もすごくきれい。この点でダマーズにはドビュッシーに近いものを感じる」。「ベルガマスク組曲」のもう一つの名曲「月の光」の雰囲気も山田さんの弾くダマーズ作品からは伝わってくる。

 4月27日午前、山田さんは客がいない日野市民会館大ホール(東京都日野市)で練習としてドビュッシーの「喜びの島」を弾いてくれた。デビューCDにも収めた1曲だ。さざ波や木漏れ日のように揺らめく音の明滅を、細部まで精緻に捉える絵画風の演奏だ。しかも全体の構成の中での音の大きなうねりも表現され、最後のクライマックスもしっかり築いている。

現代作品の演奏を反映した鮮やかなドビュッシー

ドビュッシーが1904年に作曲した「喜びの島」はアントワーヌ・ヴァトー(1684~1721年)の「シテール島への巡礼」という絵画を題材にしている。「いろんなコンサートで演奏し、ファーストアルバムにも収録したので、とても思い入れが強い。スキップするような楽しいリズムを左手で常に刻むところがすごく独特。魅力的だと常に感じて弾いている」と山田さんは説明する。演奏技術としては「リズムの中で流れを持って、いろんな色彩感を出しながら演奏することがとても難しい」。その一方で「演奏効果も高い。すごく好きな曲」と言う。

音楽は人それぞれの記憶や経験を反映し、独自の世界を生み出して広がる。山田さんのドビュッシー演奏には、ダマーズという現代の音楽との出合いを通じて培った独自の表現力が加わっている。捉えどころがないと言われがちなドビュッシーの音楽が、彼女の手によって明瞭に鮮やかに構成される。これはダマーズ作品を聴いたときに感じる現代風のシンプルな印象、高精度の構築感に近い。さらにドビュッシー自身もヴァトーの絵画との出合いに触発されて作品を書いている。ダマーズからドビュッシーを経て18世紀前半のフランス美術にまで芸術体験が広がっていくのだ。

「フランス音楽は香りを運んできてくれたり、色彩を感じたり、音だけではなくていろんなことを体験させてくれる」と演奏する楽しみを語る。これから重点を置く音楽活動として「毎年、ダマーズの誕生日に彼の作品を中心としたリサイタルを開く」ことを挙げる。国際的に評価の高い若手チェリスト伊藤悠貴氏との共演でも実績があり、室内楽でも活躍が期待される。

「英国音楽にも興味がある。日本ではまだ知られていない英国やフランスの作曲家の作品を開拓していきたい」。教科書通りの定石の修練ではなく、父がフルートで吹いたダマーズの音楽との出合いを大切にし、素直に自らの音楽を育んだ山田さん。ダマーズ演奏の第一人者という独特の立ち位置から彼女の芸術世界が広がる。

(映像報道部シニア・エディター 池上輝彦)

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