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働き方改革、女性に男性が合わせる 待遇差なくす発想

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政府・与党は安倍政権が最重要法案に位置付ける「働き方改革関連法案」の審議を急ぎ、6月20日の会期末までの成立を目指しています。法案の柱は、「残業時間への上限規制」の導入、働いた時間でなく成果をもとに賃金を決める「高度プロフェッショナル制度」の新設、正社員と非正規社員の不合理な待遇差をなくす、「同一労働同一賃金」の制度化の3つとなります。この中でも働く女性に特に関心が高いと思われる「同一労働同一賃金」と女性の活用の関係について、「労働法制と『働き方』研究会」(2016年9月~2017年2月)の座長を務めた昭和女子大学の八代尚宏特命教授が一緒に考えていきます。

◇  ◇  ◇

「同一労働同一賃金」が目指す「不合理な待遇格差」の解消とは

2016 年12月に策定された同一労働同一賃金ガイドライン案にはこんな一文があります。

…(略)同一労働同一賃金は、 いわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものである。

…(略)基本給について、労働者の勤続年数に応じて支給する場合、無期雇用労働者(正規社員)と同一の勤続年数の有期雇用労働者(非正規社員)には勤続年数に応じた同一の支給をしなければならない

上記にある「不合理な待遇格差の解消」とは一体、何を指すのか。現在、同一労働同一賃金を巡り、様々な議論がされているわけですが、何が一番の問題かと言えば、勤続年数に応じた基本給(年功賃金)が抱える矛盾に他なりません。安倍総理は「この国から非正規という言葉をなくす」と明言しておられましたが、その発言は何を意味しているのでしょうか。

政府は、「非正規社員にも勤続年数に応じた基本給を適用しなければいけない」と言うのですが、非正規社員は本来、1~3年の雇用契約を基本としているため、正規社員と比べて勤続年数がはるかに短いことが特徴です。ここでいう「正規社員と同じ勤続年数の非正規社員」とはどれだけいるのか。例えば、55~59歳の非正規社員の平均勤続年数は7年程度で、正規社員の20年程度と大きな差があります。真の同一労働同一賃金とは、正規社員の勤続年数に応じた年功賃金のカーブと非正規社員のフラット賃金や、正規社員の間でも男女間の賃金差の内、合理的でない格差の是正です。仮に正規社員の年功賃金を前提とすれば、同一業務でも勤続年数の短い非正規社員との賃金格差をむしろ正当化するものとなります。

本来の目的は「多様な働き方の労働者間の公平性」

これまで、賃金は労使の合意関係に基づいて取り決めがなされており、政府が干渉しないことが暗黙のルールでした。ところがここにきて、なぜ政府が賃金に介入するようになったのか。それはグローバル市場において労働間の公平性を担保する目的を果たすためです。

つまり、「同一労働同一賃金」の本来の意義は、多様な働き方の労働者間の公平性です。

ところが、どうでしょう。ガイドライン案には基本給について<問題とならない例>として、こんな内容が掲載されているのです。

○B社においては定期的に職務内容や勤務地の変更がある総合職Xは管理職のキャリアコースの一環として職務内容と配置に変更のないパートタイム労働者であるYのアドバイスを受けながらYと同様の定期的な仕事に従事。B社はXに対し、キャリアコースの一環として従事させている定型的な業務における職務経験・能力に応じることなく、Yに比べ高額の基本給を支給している。

仕事を教える側のパートタイムのYさんより、教わる側である総合職のXさんの基本給が高くても問題ない。この例文のどこに同一労働同一賃金の原則があるのでしょうか。外国の職種別労働市場では成り立たない基本原則を、あえて日本に適用するなら、それは現行の働き方の改革よりも、むしろその正当化としかいえません。

欧米型の雇用契約を、「能力のない者はすぐに解雇される」という理由から「雇用の不安定を助長する」などと言って非難する向きもありますが、海外では労働者間の公平性を守るため「人種・性別・年齢による差別」は厳しく禁じられています。

翻って日本ではどうでしょうか。同じ仕事をしているXさんとYさんの賃金の差がなぜ生じるのか。労働間の公平性を果たすならば、企業には「差別をしていない」ことを立証する責任が生じるはずです。ところが当初は盛り込まれていた、この企業の立証責任の項目が最終的に削除されてしまった。日本の企業は、欧米の企業なら当然に果たすべき説明責任を免れているのです。

共働き世帯が標準の時代に男女間の賃金格差を容認する理由はない

現状、女性の過半数と高齢者の約9割が非正規社員(契約社員、業務委託、パートタイム、派遣)であることから、「同一労働同一賃金」の問題は女性活躍推進と密接な関係にあることは過去にもお話ししました。

政府は2020年までに「女性管理職比率を30%に引き上げる」と目標を掲げているわけですが、女性の管理職比率が先進国に比べても低く、しかも1割にすぎないという現状は組織的な「女性差別」の結果である疑いが大きいことは否めません。

例えば、

・同期入社の男性社員に比べて、女性社員の昇給スピードが遅いのはなぜか

・そこに、結婚・出産によって女性は退社する可能性が高いからという理由により、男性と同じキャリアパスから排除するという「統計的差別」はないか

・生涯年収を左右する職種配置やキャリア機会は、男女に均等に与えられているか

こうした問いかけに対し、具体的な人事評価等で「差別はない」と企業が立証する責任を果たさなくてもよいとすれば、女性の管理職比率30%達成など絶望的です。

確かにこれまで女性の保護という観点からかつて女性の職種が限定されていたことや、こうした女性保護がかえって女性の職場を限定し、事実上の職種格差を生んできた事実を踏まえ、男女雇用機会均等法により、こうした条例が禁止撤廃されてきました。

また、このような男女間の格差は女性に対する偏見ではなく、高度成長期に企業が男性社員に企業内訓練という名の多大な訓練を投資した。その稼働率を高めるために男性が無限定の働き方ができるよう、専業主婦による内助の功をセットとした家族単位の分業制の名残であったことは、これまで述べてきた通りです。

しかし、女性の高学歴化が進み、もはや共働き世帯がスタンダードな時代にあって、年齢とともに高まる男女間の賃金格差の問題をこれまでと同様に容認してよいという理由は見当たりません。この是正には、企業による賃金格差の合理性についての立証責任を課すことが大きなポイントとなります。

また政府主導の男女共同参画においては現状、育児休業の期間の延長や、その後の短時間勤務の拡充などの対策が取られていますが、これらはどれほど効果があるのか。職場に復帰した途端に子どもが急に熱を出したと呼び出されるなど、問題は往々にして育児休暇明けに起こるわけです。また育児休業の取得率が8割まで上がったといっても、第1子の出産直後に辞めてしまう女性がまだ6割もいる。育児休業という立派な制度があっても仕事を継続することが難しいと断念していることをどう考えるのか。

これまでの対策のほとんどが「女性を男性の働き方に合わせる」ための設計になっていることが問題ではないのか。だから無理が生じているのではないか。

「女性型の働き方」の比重を高めるのが重要に

日本の男女間の賃金格差は、国際的に見ても大きいことが分かっています。女性管理職比率が低いことで平均賃金が下がっていることが、その一因とされる向きもありますが、やはり主要な要因として挙げられるのは男女間の平均勤続年数の格差です。見逃せないのは日本の女性の勤続年数は諸外国と大差ないことに比べて、男性の平均勤続年数の長さが突出して高いことです。

今後の低成長期には、男性にとっても一つの会社の雇用に依存することはリスクであり、雇用のミスマッチを減らす意味でも雇用の流動化は望ましい面があるはずなのですが、なかなか男性の流動化は進みません。

こういうと、経団連や連合から「冗談じゃない。長期雇用のおかげで熟練形成が可能になる」と反対されますが、もはや製造業中心の高度成長期のように、企業内での生涯にわたる熟練形成こそがキャリアの生産性を高めるという時代でもないでしょう。情報通信技術(ICI)の発展に伴い、AI化が急速に進んでいる昨今、企業内で形成されたスキルや技術が一夜にして陳腐化する場合も少なくありません。一部の限られたハイパーエリートならまだしも、平社員までがいまだに高度成長期時代の日本的慣行に基づき、職務を限定せずに、労多くして益の少ない長時間労働を強いられているのです。

もはや、昔ながらの無限定な男性型の働き方に無理に女性を合わせようとするのではなく、むしろ特定の職務について責任を持つ「女性型の働き方」の比重を高め、「男性が女性の働き方に寄り添う」という発想の逆転が必要ではないでしょうか。日本の男性の雇用の流動性が高まり、女性との差が縮小すれば、男女の管理職比率の差も小さくなります。

雇用の流動化が定着すれば「労働者の企業への忠誠心が失われる」という伝統的な批判があります。しかし、「(主観的な忠誠心で)会社のために働く」よりも、「自らの転職能力を高めるために、今の会社で実績を上げること」が結果的に会社のためにもなるのではないでしょうか。皆さんはどう考えますか。

* この記事は、2016年9月~2017年2月に開催された「労働法制の変化と『働き方』研究会」に基づくものです。なお、本記事で取り扱った論点については、八代先生の著書『働き方改革の経済学』(日本評論社)にも詳しく記されています。

(ライター 砂塚美穂、協力 昭和女子大学ダイバーシティ推進機構)

[日経DUAL 2018年4月8日付記事を再構成]

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