週末レシピ 納得のポテサラ イモとマヨの比率がカギ
今週はポテサラこと、ポテトサラダを紹介しよう。言わずと知れたジャガイモ料理の代表格で、食べたことがないという人に、まずお目にかかったことがない。最初にオーソドックスな「みんなのポテサラ」を作る。そして後半は「完全お酒仕様、大人のポテサラ」を作っていこう。レシピのポイントはジャガイモとマヨネーズの比率である。
【みんなのポテサラ 材料(3~4人前)】
ジャガイモ 400グラム / タマネギ 4分の1個 / キュウリ 2分の1本 / ゆで卵 1個 / ハム 1枚 / マヨネーズ ジャガイモの重さの15% / 酢 小さじ2 / 塩 小さじ2分の1とひとつまみ / コショウ 適量
【手順】
(1)ジャガイモを加熱する
(2)具の準備をする
(3)すべてを混ぜ合わせる
ポテサラとは、多くの争点を内包する危険な食べ物である。乱暴にいえば「ジャガイモをマヨネーズであえる」だけのものにすぎないが、ジャガイモの品種、加熱方法、つぶし方、具の量と種類、マヨネーズの量など、すべての工程に作り手それぞれの「正義」がある。
またポテサラは食べ手の方にも「譲れないこだわり」が生じやすい。友人が「絶対おいしいから」と連れて行ってくれた店のポテサラがイマイチだったことはないだろうか。レシピ本やテレビ番組で「おいしく作るコツ」を知って実行したものの、どうにも口に合わなかったことはないだろうか。それは自分の舌と、作り手の正義がマッチしなかったからだ。これほどみんなに愛されている料理だもの、一発でマッチする方がとてつもない幸運なのだ。
そんなわけで今回のポテサラは、「じろまる正義」で突っ走ったレシピである。すべての工程がズボラで不器用な私好みに彩られている。
まず、ジャガイモはメークイン一択だ。そんな風に言い切ったら男爵の立場がないだろうとか、キタアカリの気持ちも考えてくださいよとか、言いたい気持ちも分かる。だが多くの食べ物に関して、「水分多め、ねっちりもっちり」のテクスチャー(質感)を愛する私にはメークインがピッタリなのだ。しかもメークインはつるんとした形をしており、洗いやすく皮をむきやすいという偉大なるメリットもある。ズボラ人なら迷わずメークインを選ぼう。
ジャガイモは重さをきちんと測っておくこと。あとでマヨネーズの分量を計算するのに、必要となる。店によってジャガイモ1袋の重量は違うし、家族構成によっては400グラムじゃまるで足りないということもあろう。だが、どんなにジャガイモが増えようとも、マヨネーズとの比率がピッタリ合っていれば大失敗ということはない。これが1番のポイントだ。
今回のジャガイモは、皮つきのまま蒸し器で加熱した。ズボラな私には、洗って皮つきのまま鍋にほうり込めるシンプルさは、何よりありがたい。火にかけてしまえばしばらく放っておけるし、蒸している間にほかにやることもある。皮むきだって、熱が通ってからむく方がはるかに楽だ。しかし「蒸し」は時間がかかるのが難点だ。なので早く食べたい人はゆでたり電子レンジにかけたりしてもいい。以前コロッケの記事で紹介した「ジャガイモの高さの半分くらいまで水を注いだら強火にかける」というやり方でもOKだ。
ジャガイモを火にかけている間に具を用意しよう。タマネギはごく薄切り、キュウリも薄くスライスして、小さじ2分の1の塩をまぶし、しばらく放置する。10分くらい置いてしんなりしたらさっと水洗いし、よく絞る。ハムは半分に切り、重ねてさらに半分にし、幅5ミリに切る。ゆで卵は4分の1を飾り用にとっておき、残りを粗く刻む。
うちのポテサラには、ニンジンは入らない。ニンジン自体は大好きなのだが、ポテサラの中のニンジンはなぜか許せないからだ。ましてリンゴやレーズンなど、とんでもない。具の分量も普段はもっと少なく、完全にイモとマヨネーズが主役のイモイモしいポテサラを好む。それでも夫からはいつも「具が多すぎる」と文句を言われるほどだ。
そろそろジャガイモに火が通ったころだろうか。イモの大きさによって加熱時間は異なるが、箸を刺してすっと通るくらい、しっかり火を入れたい。火が通ったら熱いうちに皮をむく。タオルの上でやると楽だ。大きめのボウルにイモを入れ、シャモジなどで粗めに潰す。
この潰し方にも、人それぞれ一家言があろう。しっかりつぶしてなめらかなのが好きな人もいれば、熱いのを我慢して手でつぶすことこそ至高とする人もいる。私はシャモジでひと口大程度に切り分け、あとは具やマヨネーズと混ぜるうちに自然と角が取れ不定形になっていくのを期待する派だ。塊となめらかな部分の両方が口に入ると、これぞポテサラという気になる。
ジャガイモをざっと潰したら、ここで塩ひとつまみと酢を入れて下味をつける。しっかり味を入れるために、熱いうちに混ぜるのがポイント。下味をつけるとマヨネーズだけより、ぐっと味が引き締まる。さっと混ぜたら、下ごしらえしておいたタマネギとキュウリ、ゆで卵、そして分量を量ったマヨネーズを入れ、全体をよく混ぜたら出来上がり。器に入れ、ゆで卵をちょこんと飾ろう。
では次に「完全お酒仕様、大人のポテサラ」を作ろう。
【大人のポテサラ 材料(3~4人前)】
ジャガイモ 400グラム / タマネギ 4分の1個 / オリーブ 6個 / イタリアンサラミ 薄切り4枚 / ニンニク すりおろし 小さじ4分の1 / マヨネーズ ジャガイモの重さの10% / 酢 大さじ1 / 塩 小さじ2分の1 / オリーブオイル 大さじ1 / 黒コショウ 好きなだけ
手順は「みんなのポテサラ」とほぼ同じだ。ジャガイモは加熱する前に重さを量り、マヨネーズの量を決める。ただし「みんなの」がイモの15%だったのに対し、「大人の」は10%とやや少なめ。その分、塩や酢の分量が多く、下味をしっかりつけるレシピとなっている。
また「みんなの」では塩をまぶして水にさらしていたタマネギだが、「大人の」では生のまま使う。この生タマネギと生ニンニクの風味で大人の階段を登り、黒コショウで覚醒する計画だ。オリーブはもっと増やしてもいいし、代わりにピクルスをざく切りにして加えてもいい。ピスタチオやクルミなどのナッツ類も合う。
ボウルにニンニクをすりおろし、ごく薄切りにしたタマネギも入れる。そこへ火が通ったジャガイモを熱いうちに入れ、粗く潰しながらイモの余熱でやんわりと熱を入れる。酢、塩、オリーブオイルを入れ、さっくり混ぜる。この段階でもう、食べたくなるのをぐっとこらえる。
イタリアンサラミは、しっかり発酵した渋い味わいのものを選ぶと、より大人である。半分に切って重ね、端から5ミリ幅に切る。オリーブは種なしなら輪切り、種ありならこそげるように切る。ジャガイモのボウルに具を加え、マヨネーズと共に全体をよく混ぜたら出来上がり。器に入れ、黒コショウを思い切りふりかけよう。
ポテトサラダには「これでなくては」というこだわりが多い一方、淡泊なイモゆえ「なんでも合う」という側面もある。私も数々のポテサラを創造し、また数々の変わりポテサラを食べさせられてきた。最近気に入って、よく作っているのが塩昆布だけのポテサラ。実山椒(さんしょう)入りのちょっと上等な塩昆布を使うのがコツだ。最高に日本酒を呼ぶ酒のアテとなる。
最強の大人ポテサラといえば、キャビアのポテサラだろうか。私は人生で一度だけ、山のようにキャビアをもらい持て余した経験がある。普通の食べ方はもちろん、キャビア茶漬けやキャビアおにぎりにも飽きてきたころ、ふと思いついてポテトサラダにしてみたら、それはそれはおいしかったのだ。ジャガイモは本当に懐が深い。もしみなさんもキャビアを持て余すようなことがあったなら、ぜひポテサラにしてみて欲しい。大人っぽさにクラクラするだろう。
(食ライター じろまるいずみ)
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