――石津さんが履いているスニーカーはハイカットのコンバース。色はグレーですね。
「グレーのスニーカーは紺のスーツにも合うよ。僕は最近、グレーで統一したファッションが気に入っているんだな。このグレーのパンツは無印良品のもので、だれが見てもウールだと思うでしょう? 実は綿パンなんだよ(と、にやり)。パンツはちょい短めの丈にしてベルトも靴下もスニーカーもグレーで統一感を出しました」
「ビジネススタイルに合わせるスニーカーは、ウオーキングタイプのオーソドックスな形ならなんでもいい。たとえばコンバースのスニーカーは定番中の定番で、持っている人も多いでしょう。こうしたスタンダードなものが合わせやすいのです。コンバースならばハイカットの方がおすすめかな」
――白スニーカーで愛用しているものはありますか。
「ニューバランスです。ニューバランスは初心者にも非常に入りやすいブランドで、ロゴの『N』も意外に目立ちません。ニューバランス人気に火が付いたのは86年にさかのぼるのだけど、ラルフローレンが履き始めたからなんですよ」
「彼はアメカジスタイルにウエスタンブーツではなくて、あえてスニーカーを合わせた。それが新鮮だとおしゃれな人たちが飛びついた。ラルフローレンは東海岸の人なので、(西海岸オレゴン本社の)ナイキではなく、ボストン本社のニューバランスを手にするところは、プライドだったのかな」
――革製はやはり避けるべきですか。
「革の白で分かりやすいものといえばアディダスのスタンスミスもいいと思います。危険なのは、革製でごついバスケットシューズ。大変なことになってしまう」
――それでもおとなしめの黒を選びたいという人もいそうです。
「あんまりおしゃれにみせたくない人は黒でしょうね。ただ夏に向けて爽やかに、軽快にみせたいよね。その場合は本体は黒でも、靴底は白いものを探してください。スニーカーを履こうか、という一歩を踏み出せるなら、白から逃げることはないよ」
(聞き手は編集委員 松本和佳)
服飾評論家。1935年岡山市生まれ。明治大学文学部中退、桑沢デザイン研究所卒。婦人画報社「メンズクラブ」編集部を経て、60年ヴァンヂャケット入社、主に企画・宣伝部と役員兼務。石津事務所代表として、アパレルブランディングや、衣・食・住に伴う企画ディレクション業務を行う。VAN創業者、石津謙介氏の長男。
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