私にとっては、ゲームはスポーツなど他の様々な活動と同様、子供が自己肯定感や成功体験を養う手段に過ぎなかったと思います。でも、多くの人はゲームをそうは見ていなかった。だからこそ私は、自分が大好きなゲームを悪者扱いされたくない、ゲームへの偏見をただしたいという思いで、勉強を頑張ったのだと思います。

高校2年の時、米国で開かれたゲームの世界大会に出場し、優勝した。

「自由を標榜する麻布は、他の高校に比べてマイノリティーに寛容な風土があった」と話す

中学時代は地元のゲームセンターが主催する大会で、よく優勝していました。高校生になると、ハイレベルな大会や全国規模の大会にも出場するようになり、そこでもかなりの好成績を収めていました。

高校2年の夏、現在、世界最大の格闘ゲーム大会として知られる「エボリューション」の第1回大会が、米国で開催されました。今はラスベガスの目抜き通りにある立派な会場で開かれていますが、当時の会場はロサンゼルスのどこかの学校の体育館。それでもゲームの世界大会が開かれるというのは画期的で、親を説得して旅費約20万円を出してもらい、ゲーム仲間と一緒に出場しました。

私がエントリーした格闘ゲーム部門には約250人が出場。対戦相手の実力もわからない中、トーナメント戦を勝ち上がり、日本人同士の決勝戦にも勝って、なんと優勝。チャンピオンベルトと賞金20万円を手にしました。

優勝はもちろんうれしかったのですが、勝ち負けを抜きにしても、参加して本当によかったと思っています。一言で言えば、世界が広がりました。

例えば、会場に入った時に、年上のチームリーダーから、「お前、ちょっとあの外国人に友好の印としてあいさつして来い。麻布だから英語ぐらい話せるだろう」とか言われ、生まれて初めて外国人と会話しました。非常につたない英語でしたが、こちらの言いたいことが何とか伝わると、それがとてもうれしくて、英語を勉強するモチベーションが一気に上がりました。

しばらくして、英語の授業でスピーチをする課題があり、エボリューションで優勝した話をしました。実は、大勢の前でゲームの話をしたのはこの時が初めてでした。

それまではやはり、ゲーム仲間以外にゲームの話を堂々とすることには非常にためらいを感じていました。ゲーマーへの偏見を気にしていたからです。でも、そんな私の心配をよそに、私のスピーチを聞いた先生は、「すごいじゃないか」と褒めてくれました。

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