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豊かな語彙は「翻訳」で身につける 齋藤孝流の鍛え方 齋藤孝先生の「大人の人間関係力」講座(3)

日経ビジネスアソシエ

2018/5/26

齋藤孝先生
日経ビジネスアソシエ

学生時代、「英文和訳」に苦労した人も多いだろう。実はその勉強は、英語力のみならず日本語力の向上にも一役買っていた。単語熟語を解釈し、文法の違いを乗り越え、意味の通る文章に再構成する作業は、語彙力や文脈力を鍛えるのに最適だ。『声に出して読みたい日本語』などを著した明治大学文学部の齋藤孝教授が「語彙力」について解説する。

◇  ◇  ◇

「文明開化」だ「殖産興業」だと社会が激変した明治維新の頃、実は日本語も大きな変革を遂げた。社会システムや産業技術、手本にすべき西欧列強の言語を翻訳する必要に迫られたからだ。

近代的な法体系の整備もその1つ。例えば、民法は主にフランス民法を手本とし、日本語に翻訳された。とはいえ語彙は足りないし、文法もまるで違う。そこで漢語を駆使して新しい日本語を大量に生み出し、かつ正確に訳せるよう独特の法律文体を編み出した。その苦心の跡は、今日の民法でも見ることができる。こうしたプロセスを経て、日本語は世界の英知を表現できる言語に成長していったわけだ。

■夏目漱石が論理的に話す能力が高かったワケ

グッと卑近な話になるが、この成長を追体験することは、私たちの日本語力を鍛えることにもなる。平たく言えば「英文和訳」だ。単語を理解し、文の構造を把握し、前後の文脈から類推し、意味の通る日本文に書き換える。まさに日本語の語彙力と文脈力が試されるわけだ。

考えてみれば、近代日本を代表する作家の夏目漱石は英文学の専門家でもあった。軍医でありながら小説家でもある森鴎外はドイツ語が堪能で、「言文一致(話し言葉に近い口語体を用いて文章を書くこと)」の先駆者として知られる二葉亭四迷はロシア文学の翻訳も手がけている。若き日の福澤諭吉が、漢文と蘭学と英学を学んでいたことは有名だ。

諸氏に共通するのは、論理的な日本語を書いたり話したりする能力が極めて高かったこと。外国語を読み、日本語に再構成する作業の積み重ねが、それぞれの話し言葉や書き言葉を豊かにしたことは間違いない。

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