「数学的分析によって、『映画の専門店』をやめることでどれだけの成長可能性があるかを示しました。アニメやゲームなどにジャンルを広げることによって、集客を1.4~1.7倍にあげられる確率が70%。また、当時は若い大人の女性をターゲットにしていましたが、取りこぼしていたファミリー層を取り込めば1.2倍。関西依存体質から抜けることができれば1.3倍。全て掛け合わせると容易に倍になります。最初の2つで1000万人を超えてみせる、さらに関西依存脱却の切り札として『ハリー・ポッターエリア』が実現できれば開業時の過去最高を更新してみせると宣言してその通りになりました」

勝負どころ、数学ではじき出す

多くの客でにぎわうハリー・ポッターエリア

――夜にゾンビが歩き回ってパーク中をお化け屋敷にする「ハロウィーン・ホラー・ナイト」など様々なアイデアが成功しました。

「1年間で最も伸びしろの多い時期はどこだと思いますか? これがわかればその時期に経営資源を集中すればいい。感覚的には、人が少ない梅雨の時期か、寒い1~2月がもっと伸びそうな気がしますよね。しかし、ある数学的分析をすると、月ごとのレジャー市場の大きさは9~11月が突出して大きいことがわかります」

「USJもそこは集客の多い時期でしたから、これ以上伸びると思っていませんでした。でももっと伸びしろがあるとわかったので、9~11月を盛り上げるアイデアを必死に考えました。つまり『ハロウィーン・ホラー・ナイト』という企画を最初から思いついたわけではないのです。9~11月に勝負するという糸口があったから考えられた。アイデアというのは砂漠でダイヤモンドを拾うようなもので、ベクトルが定まらないと考えようがないんです。会社がとるべき戦略の焦点を導き出すのが数学マーケティングの力です」

――USJでは自分でお金を払って歩き回るなど、消費者目線を強く意識していると聞きます。

「私は感覚的に物事を洞察する能力は偏差値33ぐらいしかないんですよ。消費者が一番かわいくないっていうものを選んでしまう。でも、マーケターは共感なんてしなくても理解すればいいと気づいたんです。『モンスターハンター』のイベントを企画したときは、睡眠時間を削り、400時間以上プレーしましたし、普通のマーケターよりも消費者を理解することに物理的に時間をかけています」

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組織改革、「自己保存」の本能を逆手に
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