世界の目利きが選ぶ日本酒の真価 フモトヰ、金雀…

一方、20~30代でこれから日本酒を飲み始める人にオススメなのは、山梨銘醸(山梨県北杜市)の「七賢 風凛美山(ふうりんびざん)純米」(同1千円)だ。15年に銀メダル受賞酒の中からコストパフォーマンスに優れた酒に与えられる「グレートバリュー・サケ」に選ばれた。買いやすい価格ながら、冷酒で飲むと爽やかな酸味がのどを通り抜ける。やや辛口ながら少しとろっとしたフル―ティーな香りとうま味もあり「艶っぽい日本酒」といえる。契約農家が栽培した山梨県産「ひとごこち」という酒米を使っている。

世界はテロワールも重視

2017年チャンピオン・サケとなった南部美人は地元の酒米利用を拡大

世界が注目するのは、味わいだけではない。キーワードはテロワール。「土地」を意味するフランス語から派生した言葉で、醸造に関わる風土などの自然環境を指す。地元で栽培した酒米などを生かした酒造りかどうかや、その酒を生んだ地域の文化や歴史的背景も重要な要素となっている。1年前の17年大会で最優秀賞「チャンピオン・サケ」に選ばれた南部美人(岩手県二戸市)の特別純米酒は、地元の酒米「ぎんおとめ」にこだわった。「二戸市の風土、テロワールを存分に生かした酒だ」と久慈浩介社長は胸を張る。IWCはブラインド・テイスティングで審査しているが、実際に日本酒を海外で販売する際には流通関係者やソムリエがこうしたテロワールを重視する例も多いという。

18年大会でも、酒蔵のある県内のコメを使った日本酒でゴールドメダルを受賞した銘柄は少なくない。府中誉(茨城県石岡市)の「渡舟 純米吟醸ふなしぼり」(同2千円)は、茨城県産の「短稈渡船(たんかんわたりぶね)」という酒米を使っている。酒米の王者「山田錦」のルーツとなった品種だ。長らく幻のコメになっていたが、1989年に茨城県内にある農林水産省の研究所でわずか14グラムの種もみが残っていたのを発見し、地元農家と復活に向けて栽培を進めていったという。

海外から味覚のフィードバック

出羽桜の「一路」は海外の評価が日本に波及した

IWCのイベント・ディレクター、クリス・アシュトン氏は「海外の審査員が飲んでワールドクラスだと直感する銘柄があるのに、日本で真価に気づかれていないケースもある」と話す。海外の目で再発見された典型例が、出羽桜酒造(山形県天童市)の「出羽桜 一路 純米大吟醸」(同2800円)だ。同社の他の銘柄に比べるとなかなか日本で売れず「販売終了の予定だったが、卒業記念のつもりでIWCに出品してみた」(仲野賢営業部長)ところ、やや辛口でしっかりとした味わいが審査員の間で評判となり、08年に最優秀のチャンピオン・サケを受賞した。

審査員長の1人であるオーケ・ノードグレン氏は一路について「バランスの良さが最高だね。私は地元スウェーデンにも輸入しているよ」と話す。IWCをきっかけに日本でも見直され、出羽桜酒造の中で「販売トップ5に入る稼ぎ頭になった」(仲野氏)。

今後一段と「海外に通じるSAKE」が広まり、日本へのフィードバックも深まりそうだ。外務省はIWCの受賞日本酒をリスト化し、世界各国の日本大使館に送っている。「外交関係の構築と日本文化の紹介に役立っている」(西永知史在外公館課長)といい、海外の著名人が覚える銘柄も増えていきそうだ。

もちろん、受賞していなくてもおいしい日本酒は数多く存在する。「日本人が好むキレの感覚を外国でも理解してもらえるのはこれから」(いまでやの小倉社長)。「各コンペが求めるイメージによって、結果は異なってくるもの。実際に買うときは酒造りのストーリーも味わいに加わる」(利き酒師の近藤さん)。海外で新たな価値が発見されるのを機に、銘柄それぞれの個性を自分なりに発掘してみてはどうだろうか。

(小太刀久雄)

MONO TRENDY連載記事一覧
注目記事
MONO TRENDY連載記事一覧