画質進化の最終形 年末開始の8K放送どう楽しむ「年の差30」最新AV機器探訪

小沼 でも、こんな高画質の映像が家で見られるようになったら、美術館はお客さんが減っちゃいそうですよね。

上杉 美術品や工芸品を拡大して見ることで研究に役立てるなどの学術的な使い方が期待されますし、8K映像を使った新たな展示方法も登場しています。だからライバルというよりは、これを活用して新たな技術革新が起こるものだと考えています。美術の分野以外でも、医療分野の内視鏡手術やセキュリティ分野の監視カメラ、VR映像など、様々な分野で活用されると思いますよ。

編集せず、まるごと撮ってライブ感を表現

上杉 続いて、スポーツの分野での映像を見てみましょう。フィギュアスケートの世界大会の様子です。

小沼 氷盤に跡がついているのがくっきり見えますね。ジャンプした時に氷のしぶきが跳ねる様子も見えてすごくリアル。これまでのテレビでは映っていなかったところも、しっかり見えて、空気感まで伝わってくる気がします。

小原 8Kは引きの映像が多いのも特徴ですよね。解像度が高いので、全体を映していても細かい部分をしっかり観察できる。距離感や全体像がよくわかるのも特徴だと思います。

小沼 これまでのテレビは凝ったアングルで編集されていたけど、8Kはなるべく編集しないように変わっていくんですね。

上杉 撮影する側もなるべく全体が見えて、そこにいるかのような気分になれる映像を作るよう、意識しているようです。たとえばサッカーだとファンの中では俯瞰(ふかん)でフォーメーションを見たいという人もいますし、引きで撮りながら全体の空気感やライブ感を伝える映像を目指しています。

小沼 これまでのテレビとはまったく別物なんですね。

2K、4K動画を8Kにアップコンバート

小原 あと、僕がシャープの8Kで良いと思ったのは2Kや4Kの動画を8Kにアップコンバートしてくれる、その処理能力の高さです。

小沼 自動的に補正して8K画質まで高めてくれるってことですよね。

輪郭や細部を鮮明に描写する高精細化処理を行い、2Kや4Kの映像でも8Kに近いリアルな映像を見ることができる(資料提供 シャープ)

小原 そういうことになります。今日は映画「ハドソン川の奇跡」のUHDブルーレイ盤を持ってきたので、4Kと8Kで見比べてみましょう。ちなみに、この映画は6Kデジタルカメラで撮影したものを4K画質にダウンコンバートしたものです。

小沼 4Kテレビと見比べてみると、8Kで見たほうが画面の奥行き感がよりリアルになっている気がします。確かに変わっていますね。

小原 初めて見たとき、コンバートの質の高さに驚いたんです。ここまでクオリティーが高まるなら、一見の価値はあると思います。まだ8Kコンテンツが普及していない今でも、この連載で取り上げる意味があると考えたんです。

8Kは好きなものをとことん楽しみたい人向け

上杉 ここまで見てきて、小沼さんはどう思いましたか?

小沼 たしかに映像はすごくきれいですね。ただテレビを持っていない僕が言うのも何ですが(笑)、僕はここまでの環境は自宅に求めていないと思いました。8Kテレビはニュースやバラエティーをなんとなく見るようなこれまでのテレビではなく、スポーツや映画、写真など、自分の好きなものをとことん楽しみたい人向けの超高画質のディスプレーという印象です。今までのテレビが受動的に楽しむものだとしたら、8Kテレビは能動的に楽しむというか。

上杉 小沼さんはどういった用途なら、8Kを使ってみたいと思いますか?

小沼 アイドルのライブには向いていそうですね。全体のフォーメーションを見ながら、好きなメンバーの表情まで追うことができると、実際に一番良い席でライブを見ているような気分になれるんじゃないでしょうか。

上杉 アイドルは大人数で衣装もカラフルですし、高画質には向いていますよね。

小沼 あとはせっかくその場にいるようなリアルな映像なので、生中継やライブ配信だとより楽しめそうです。アメリカで開催される音楽フェス「コーチェラ・フェスティバル」は、例年YouTubeで生配信されているのですが、これを8Kで見られたら面白そうです。小原さんはどんな楽しみ方ができると思いますか?

小原 ぼく個人は、丁寧に制作された紀行番組やドキュメンタリーなど、制作年代は古いけれども文化的価値の高いフルHD作品を8Kにアップコンバートして楽しみたいですね。それと、70ミリなどの大判フィルムの映画を精巧にスキャニングして修復した映画とかも、きっと8Kで見たらすごいと思いますよ。

小沼 名作が違った形でよみがえるというわけですね。

小原 あとは現場だと一度しか見られないけど、映像なら録画して繰り返し見られますしね。8Kはテレビにとどまらずさまざまな場所で技術が応用できると思うので、こうした点でも注目していきたいですね。ただし、8Kが録画できるレコーダーが一般向けに製品化されるかは未知数ですけど。

◇ ◇ ◇

実際に8Kのテレビを体感してみて、映像の現実のようなリアルさ、細かなところまで見える臨場感には驚くものがあった。ただ、2018年12月からはじまる8K放送もNHKのみで視聴できる番組は限られる上に、ニュースやバラエティーなど、番組によっては8Kまでの解像度を求めないものもあると思われる。そのため、すぐに一家に1台という状況まではなかなか普及しなさそうだ。

一方で、スポーツ観戦や映画、写真、ライブ鑑賞など、趣味を思い切り楽しみたい層には需要があるとも感じた。娯楽が多様化する中で、テレビの楽しみ方は必ずしも地上波の番組を見るだけではなくなってきている。8Kと相性の良い趣味を持っている人は、一度8Kの映像を確認してみてはどうだろう?

小原由夫
小原さん(左)と小沼さん
1964年生まれのオーディオ・ビジュアル評論家。自宅の30畳の視聴室に200インチのスクリーンを設置する一方で、6000枚以上のレコードを所持、アナログオーディオ再生にもこだわる。最近見てよかった映画は「シェイプ・オブ・ウォーター」。
小沼理
1992年生まれのライター・編集者。最近はSpotifyのプレイリストで新しい音楽を探し、Apple Musicで気に入ったアーティストを聴く二刀流。最近見てよかった映画は「君の名前で僕を呼んで」。
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