
海外では日本酒の関税が高いこともあり、日本酒は高級酒という扱いになる場合がほとんど。地元客の好みの味かどうかだけでなく、高すぎないかどうかというバリュー感にも十分配慮する必要がある。
一方、欧米に比べ、まだレストラン産業がそれほど成熟していないアジア各地では、もとよりアルコール全体の消費意欲は高くなく、さらに高級な日本酒となると、なかなか難しい。しかし、シンガポールだけは別。ラーメン店なのに日本酒バーを備えるところまですでにあるという。
■「和食レストランで日本酒を愉しむ」が富裕層のステイタス
シンガポールだけで10店舗展開している力の源グループでは、2015年、繁華街・オーチャードに日本酒バーのスペースを併設した「IPPUDO SHAW CENTRE」をオープンさせた。ラーメンだけでも楽しめる店だが、店内の日本酒バースペースにはずらり約160種の日本酒ボトルが並び、自分で好みの酒を選んで注文することができる。
シンガポールの他店ではつまみメニューの数は約10種だが、同店では約20種そろえる。ギョーザ、唐揚げ、シシトウの素揚げなどが特に人気だ。しめにラーメンをシェアして食べる客が多いという。
日本酒のうちグラス(60ミリリットル)で提供できる約6種はカウンターに並べておき、1杯9~10シンガポールドル(720~800円)で提供している。グループ客がボトル注文するのがほとんどだが、1人で来た客でもこれを注文できる。

「一風堂」は博多発のブランドだけに、福岡の酒だけで15種前後は常にそろえ、中にはシンガポールではこの店でしか飲めないような酒も用意している。新酒やひやおろしなど、季節感のある日本酒もあれば、保存の調整が難しい生酒なども扱う。
すべての日本酒はモダン/クラシックという独自のカテゴリ分けをしており、新しい製法で作られたモダンタイプは冷やして提供するが、クラシックタイプは熱燗やぬる燗などさまざまな温度帯で提供している。
例えば、同店で人気NO.1の「玉乃光」(京都/玉乃光酒造)。精米50%の純米大吟醸で、720ミリリットルで98シンガポールドル(7840円)と日本の3倍近くの価格だ。シンガポールの店舗を統括している岡貫之氏によると、「価格に関しては関税がかかることも踏まえると、100シンガポールドル(8000円)までが売れ筋です」とのこと。