2018/5/25

早期なら内視鏡治療で9割以上が治る

2人に1人はがんになる時代。予防に努めていても大腸がんにならないとは限らない。そこで石黒准教授が強調するのが「治る段階で見つける」大切さだ。

「実は、大腸がんは『治りやすいがん』の一つ。がんが粘膜下層の浅い部分にとどまっている早期がんなら、治療後の5年生存率は9割以上で、ほぼ完治が見込めます。しかも、早期なら負担の軽い内視鏡治療で済みます。きちんと治せるところで発見する─。これが一番大事ですね」。

がんの進み具合を示すステージは大腸がんの場合、5段階。がんが粘膜下層までの浅い部分にとどまっている早期がんで、内視鏡治療が可能。完治の目安となる5年生存率は9割を超える(データ:全がん協 部位別臨床病期別5年相対生存率2007~2009年診断症例、キャンサーネットジャパン「もと知ってほしい大腸がんのこと2017年版」を改変)

では早く見つける方法は?

「ズバリ、検診です。これしかありません。ぜひ受けてほしいのが便潜血検査、いわゆる検便です。簡単な方法ながら、毎年受けることで大腸がんによる死亡率を6~7割減らせると証明されています。がん検診の中で最も有効性が確立された検診法といえます。ただ、女性は男性より受診率が低いのが実情。まだの人は早速、今年から地域のがん検診や人間ドックでの検査をお薦めします」

大腸がんの治療には内視鏡治療、開腹、腹腔(ふくくう)鏡などの手術、化学療法、放射線療法があり、進行度に応じて治療法が決まる。早期がんへの内視鏡治療は、この10年ほどで目覚ましい進歩を遂げたという。

「茎のあるキノコのような形のがんを切り取る『ポリペクトミー』という方法は以前からありましたが、2012年、新たに『ESD(内視鏡的粘膜下層はく離術)』が保険適用になりました。これだとより大きながんでも切除できるので、内視鏡治療で済む人が劇的に増えました。

早期がんが対象の大腸がんの内視鏡治療には、茎のあるがんを焼き切る「ポリペクトミー」、平らながんを切り取る「EMR(内視鏡的粘膜切除術)」、EMRでは取れない大きながんを切除する「ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)」の3つの方法がある

手術は腹腔鏡手術が普及し、今では約7割を占めています。お腹に小さな穴を4~5個開けて器具を入れ、カメラで内部を映しながら手術をします。開腹手術に比べて術後の痛みが少なく、回復も早いのが特長です。

化学療法も分子標的薬が登場するなど、この10年余りで飛躍的に進歩しました。転移や再発の場合でも、化学療法でがんを小さくして、手術できる例が増えてきました」

がんの場所によっては、手術後に人工肛門になることも?

「直腸がんの場合は、主にがんの場所によって肛門を残せるかが決まります。医療機関によって判断が異なることもありますから、迷ったらセカンドオピニオンを。最近は『ISR(括約筋間直腸切除術)』という、より肛門に近いがんでも肛門を残せる手術も登場しています。ただ人工肛門もずいぶん装具が改良され、日常生活での制限はほとんどなくなりました。普通に仕事をして、乗馬やフルマラソンを楽しんでいる人もいますよ。

男女で比較すると、治療後の生存率は女性の方がよい傾向があります。やはり女性は強くできているのかもしれませんね」

石黒めぐみ先生
 東京医科歯科大学大学院応用腫瘍学講座准教授。1998年、東京医科歯科大学医学部卒業。同大第二外科(現・腫瘍外科学)入局、同大大学院腫瘍外科学特任助教などを経て、現職。2009年から「大腸癌治療ガイドライン」作成委員も務める。著書(監修)に『大腸がんを生きるガイド』(日経BP社)など。

(ライター 佐田節子、写真 鈴木愛子、イラスト 内山弘隆)

[日経ヘルス 2018年5月号の記事を再構成]