マンションで英会話教室、契約違反? 大家が解除通告弁護士 志賀剛一

逆に解除が有効であると判断された事案は、(1)使用目的が建築資材販売会社の事務所だったのにテレクラとして使用された(2)使用目的が雀荘(じゃんそう)だったのにゲームセンターとして使用された――などがあり、おおむね本来の目的を隠して契約し、事後に業態を変えたようなケースです。また、実際の利用が暴力団事務所だったという事案はほぼ例外なく解除が有効と判断されています。

しかし、この結論部分だけを覚えておくのは危険です。信頼関係法理に関する過去の判例を見ると、貸主と借り主の事情が総合的に考慮されており、学習塾だからすべてOKとは到底言い難いからです。

実は学習塾の判例の事案では、借り主は貸主からの解除通知を受けたため塾を2カ月で閉鎖して住居専用に戻しており、そのことも判決では信頼関係に関し、借り主に有利な事情として挙げているのです。このため、「学習塾でOKだから英会話教室も大丈夫だろう」というのは早計です。

貸主に事前に相談 トラブルを避ける

ネット上には様々な意見が氾濫しており、中には「生活の拠点であることさえ維持できていれば居住用以外に使っても大丈夫」というような見解と、居住用の貸室をそれ以外にも使用すること自体が契約違反であるとの見解の双方があります。しかし、前述のとおり信頼関係が破壊されているかどうかは総合的な判断になるので、いずれの結論になるか事前には判断がつきかねます。

マンションで子供を対象に英会話教室を主催するのであれば、DVDを流したりテキストを全員で音読したりするのではないでしょうか。そうなると近隣から音に関する苦情も予想されます。エレベータなどの共用部分も、生徒が出入りすれば使用状況が変わってくるでしょうし、落書きや設備の破損なども貸主としては心配です。

もちろん、裁判になったら貸主の解除は無効と判断されるかもしれません。しかし、裁判になること自体はあなたにとっても不本意ではないでしょうか。

事前にこの話を貸主に話していれば、案外あっさり「いいですよ」と言ってくれていたかもしれません。本件に限らず、居住用の貸室を何かほかの用途に使おうとする場合、私としては貸主に事前に相談することをお勧めします。

志賀剛一
志賀・飯田・岡田法律事務所所長。1961年生まれ、名古屋市出身。89年、東京弁護士会に登録。2001年港区虎ノ門に現事務所を設立。民・商事事件を中心に企業から個人まで幅広い事件を取り扱う。難しい言葉を使わず、わかりやすく説明することを心掛けている。08~11年は司法研修所の民事弁護教官として後進の指導も担当。趣味は「馬券派ではないロマン派の競馬」とラーメン食べ歩き。
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