マンションで英会話教室、契約違反? 大家が解除通告弁護士 志賀剛一

写真はイメージ=PIXTA
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Case:33 夫が契約している賃貸マンションに住んでいる者です。私自身、帰国子女で英語が少々できるので、ママ友に声をかけて子供向けの英会話教室を始めたところ、結構人気が出てきて生徒も増えました。ところが、大家(貸主)から「契約違反だ。教室を続けるなら賃貸契約を解除する」と通告されました。近隣には配慮しながら運営しているつもりで、迷惑もかけていないと思うので納得いきません。

居住用マンション、通常は使用目的を限定

建物の賃貸借契約書には賃貸借の「目的」が必ず記載されています。マンションであれば「住居」と記載され、住まいとしての使用に限定されているのが通常です。

一方、事業用として会社などがオフィスとして使うのであれば「事務所」、店舗であれば「店舗」と目的が明示され、個人の居住用物件より賃料や敷金(保証金)の金額設定が高額のはずです。事務所や店舗など事業用の場合、不特定多数の第三者が継続的に賃借物件に出入りするので、近隣の住民から苦情が出る場合もあるほか、住居として使用する以上に物件の損耗が激しくなる可能性もあるからです。

このため、居住用としてマンションを賃貸する場合、貸主は室内で事業を営むことを禁止したり、使用目的を居住用に限定するような約定を契約書に記載したりすることが多いと思います。相談のケースのマンション賃貸借契約書もおそらくそのようになっているはずです。

あなたはその貸室で英会話教室を始めたとのことです。生徒も増えてきたとのことですから、生徒が何人も貸室に出入りするでしょうし、居住用のみならず「教室」として使用していることは契約違反だというのが貸主の主張と思われます。

信頼関係を破壊しているか

借り主は貸室を使用する権利を持っていますが、どのように使用してもよいわけではなく、契約で定められた目的・方法で使用する必要があります。賃貸借契約書で使用目的が「住居」と定めている場合に、貸室を英会話教室として使用するのは確かに契約違反といわれてもやむをえない側面があります。

しかし、賃貸借契約では「借り主の債務の不履行があったとしても、それが貸主との信頼関係を破壊しない程度の軽微な不履行では契約の解除をすることができない」という判例法理(裁判所が示した判断の蓄積によって形成された考え方)があります。

賃貸借契約のように期間が長期にわたる契約では、当事者間の信頼関係を基礎とし、その信頼関係が破壊されたと認められるときに初めて解除ができるというルールで、「信頼関係破壊の法理」と呼ばれています。例えば、賃料不払いの場合であっても、1カ月遅れてしまっただけでは信頼関係を破壊したとはいえないと解されているのです。

学習塾の場合の判例は?

この点に関し、通常の住居として貸した部屋で借り主が学習塾を経営していたとして用法違反による解除がなされた事案で、判例は「信頼関係は破壊されていない」として貸主の解除を無効と判断し、明け渡し請求を認めませんでした。

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