パイプ椅子にスライム…100均ナゾのヒット商品を探る
店舗ごとの売れ行き動向から自動で最適な発注量をはじき出す。セリアが2006年から運用する発注支援システムは、今なお完成度で他社を凌駕すると評価が高い。そんなシステムが最近、ナゾのヒット商品を検出した。昔懐かしいドロドロ玩具の「スライム」だ。
それまでは売り場に数点しかなかったスライムが、際立った販売増加率を見せ始めたのをシステムが察知。また、洗濯のりも謎の販売増を示していたが、どうやら「スライムの材料」に使うため。セリアはスライムの商品数を増やすことを決めたが、「いくら増やしても1種当たりの販売量が落ちない」状況が続いた。「『触ると気持ちいい玩具』が来ている」と判断した同社は、スライム以外にも触感を楽しむ玩具を強化し、ヒットを連発している。
新商品情報の拡散力が高い100円均一ショップ(100均)では、全く想定していなかったニーズを捉えたヒットも生まれる。キャンドゥが17年秋に発売した、パイプ椅子形のスマホスタンド。単なる「脱力系グッズ」のはずだった商品が、予想をはるかに超える売れ行きを見せた。
購入していたのはなんとアニメファン。アニメのフィギュアを座らせて撮影する用途にちょうどいいサイズだったのだ。同様にキャンドゥでは、1枚の板からミニチュアの家具を組み立てられる「ウッドクラフト」シリーズや、それを撮影するための背景用ボードもヒット。「キャンドゥはアニメファンに注目の店、というイメージを持ってもらえた」(キャンドゥ)という。
キャラクターグッズのヒットも増えている。新たに100均向けに商品化されてブレイクしたのが「ロディ」。イタリア発の幼児向け乗用玩具から生まれたロングセラーのキャラだ。100均デビューは17年10月だが、低単価品にもかかわらず、日本の「ロディ市場」全体の売上金額を大きく押し上げたという。
なかでも突出して売れているのが、手のひらサイズのマスコット(人形)。ロディ版権元のJAMMYによると、同製品が捉えたニーズは主に3つあるという。全12色のマスコットをそろえてずらりと並べるインテリア需要が一つ。次は主に白と黒のモデルを使っておしゃれな写真を撮る目的。最後に、アニメなどのフィギュアをまたがらせるため。インスタ映えやオタク売れなど、最近のヒットの法則を詰め込んだ複合的ヒットだったといえる。
「ニコちゃんマーク」が売り場に増殖
100均の売り場でキャラクター雑貨の存在感が増している。昨年から特に好調なのが「スマイリーマーク」のグッズだ。「おおむね5年周期で人気が再燃するキャラだが、今回は競合となる強いキャラがないことで特に勢いがある」(版権元のジャス・インターナショナル)という。100均での品ぞろえは過去のブーム時より格段に充実。また、100均ではプリキュアや戦隊モノのグッズは売れないイメージが定着していたが、新作「HUGっと!プリキュア」は「非常に好調」(セリア)だという。
「スライム」が謎の販売急増、触って気持ちいい特需
セリアで「触って気持ちいい」玩具のブームが続いている。きっかけは「スライム」の謎の販売急増に気づいたこと。材料となる洗濯のりも、ユーチューバーが紹介したことなどでヒットした。スライム以外でも、軟らかい感触を楽しむ玩具のラインアップを拡充し、その多くが好調な売れ行きという。
脱力系スマホグッズが「オタク」ニーズに合致
キャンドゥで想定外の「オタク売れ」が連発した。「ミニチュアパイプ椅子」がフィギュアを座らせる目的でヒット。「ウッドクラフト」シリーズも同様の目的で売れた。
カワイイだけじゃなく実用的、アイデアグッズにヒット連発
女性の利用が多い100均では、メークやネイル関連の商品は売れ筋。アイデアグッズのヒットが相次いでいる。セリアの「3Dパフ」はかわいさだけでなく、とがった部分、広い面などを使い分けられる立体形状の実用性が受けた。
フレッツでは、ネイル液を塗る際に指と瓶を同時に固定できる「ネイルスタンド」がヒット。長持ちしやすいジェルネイルをセリアが発売すると瞬く間に売り切れた。
(注)価格は特に記載のない場合すべて108円(税込み)。「ダイソー」「セリア」「キャンドゥ」などの表記は、編集部が商品を実際に入手した店舗名。掲載商品は取材時点のもので、店舗によっては在庫や取り扱いがない、もしくは廃番のため購入できない場合もある
[日経トレンディ2018年6月号の記事を再構成]
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