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危機管理の達人

2018/5/23

危機管理の達人

「良い友達がいなかったのかなと思いますね。普通は悪ふざけの中で、人との距離感をつかんでいく。ギャグといじめの区別のようなことを。きわどいことでも言ってもいい相手と、言ってはいけない相手ってあるじゃないですか。自分の気持ちをわからせることはやってきたのかもしれないが、言われる側の気持ちがわからない。本来は立場が高い人ほど、相手の気持ちに敏感にならないといけないと思います」

大御所にも説く危機管理

――吉本ではリスク管理のチームなどを持っていたそうですが、普段からやっておくべき心構えなどはありますか。

最近は刑務所の釈放前のコミュニケーション研修も担当している。「犯罪者になる大きな要因はコミュニケーションができないこと」と話す=竹中氏提供

「最近の騒動を見て思うのは、騒ぎを起こした本人がマネジャーや会社とちゃんとコミュニケーションをとっていたのかなということ。僕がいたときの吉本は、『何でも会社に相談しいや』という家族とか兄弟みたいな距離感でした。酒癖が悪かったら、普通は消されます。甘い世界じゃない。1回でもトラブルがあったら誰かが注意して、さらに根絶させないとだめです。本来なら、もっと手前で手を打つべきです」

「吉本では芸人に対してもコンプライアンス研修があります。劇場で500人ぐらいの芸人に話すなど、毎年、数千人に話してきました。大御所は研修なんて出てくれませんから楽屋まで押しかけましたよ。飲酒運転や暴力団など鉄板の5大ネタがあるのですが、毎年だいたい新しいネタが出てくるんですよね。脱法ハーブとか。大御所から『こないだ来たばっかりやんか』と言われても『また新ネタがありますねん』と押しかけます」

「面倒に思われることもありますが、実際に逮捕されたり契約解除されたりする悪い例が目の前にあるから、緊張感を与えることはできると思うんです。警察が取り調べしかしてなくても吉本では社内コンプライアンスに違反すると判断したら即契約解除です。危機管理はこういう対話の積み重ねです」

竹中 功
 同志社大学大学院総合政策科学研究科修士課程修了。1981年吉本興業入社。同年宣伝広報室を設立。82年芸人養成所「よしもとNSC」開校。リスク・コンプライアンス委員、よしもとクリエイティブ・エージェンシー専務取締役などを歴任。15年退社。危機管理コンサルティングなどを手掛けるモダン・ボーイズを設立し、最高執行責任者(COO)兼謝罪マスター。

(安田亜紀代)

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