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危機管理の達人

2018/5/23

危機管理の達人

――吉本時代に竹中さんはいくつも謝罪会見を担当されていました。どんなことに気をつけていましたか。

■許すカードは相手が持っている

「お笑いタレントのたむらけんじさんが副業の焼肉店で食中毒を起こし、1人が入院するという事件がありました。このときの会見は、あくまでメディアを通して、腹痛を起こしてしまったお客さんに謝ることが一番大事だということを本人にも確認してもらいました。まず苦痛を与えてしまったお客さん、心配をかけたご家族に謝る。そしてファンに対して、心配かけてすみません。その次に関係者の皆様すみません、というのが謝罪の順番です。僕がくぎを刺したのは、最後に『吉本の芸人ならびに社員の皆さんすみません』という言葉が出てきそうだと思ったので、それは内輪の話だからここで言う台詞じゃない、ということ。時々そういうことを言う芸能人がいたんですよね。でも社員に謝るのは、後で会社とか楽屋に行って直接言ったらいいんですよ」

「謝罪シナリオじゃないですけど、誰に何を謝るのか、どこを強調して言うかをたむらさんはよくわかってくれた。よくわかってくれたというのは、よく反省しているということなんです。彼は自分の言葉で反省と再発防止策を説明しました。真摯な気持ちがにじみ出ていた。3日間前後お店を閉めましたが、客足が戻るのは早かったし、逆にファンが増えたように思います」

福田財務次官は辞任に追い込まれた(4月18日、財務省)

「怒り(イカリ)を反対から読むと理解(リカイ)になります。怒りをいかに理解に変えるか、それが達成された時に初めて謝罪が成功したといえます。ついつい自分が答えを出したがる。これだけ謝ったんだから許してくれるだろうとか、お金を出したから大丈夫だろうとかは勘違い。許してくれるかどうかのカードは相手が持っているんです。山口さんの件では、『戻りたい』と言っても、大事なことは何も済んでない。順番で言うと本音を語るのは早い。やったことへの反省、つまり悪いのは僕なんですと言うだけでよかった」

――財務省を退職した福田淳一前次官など、公人の不祥事も相次いでいます。

「大臣が『セクハラ罪という罪はない』と言っていましたが、そんな話じゃない。世の中からズレている。社会性が低いってことです。人の痛みとか喜びがリアルでわからない。被害者は名乗り出ろとか、出られない人の立場の弱さを理解していない。相手の側に立つという、常識が抜け落ちている」

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