よゐこ有野晋哉のゲーム番組 15周年で振り返る変化
お笑い芸人の有野晋哉(よゐこ)が、作業着に身を包んだ"課長"姿で、懐かしいレトロゲームのエンディングを目指すバラエティー番組『ゲームセンターCX』(フジテレビONE)が今年で放送15周年を迎える。この間、ゲームを取り巻く環境は1人で楽しむものから、対戦プレーを観戦する「eスポーツ」文化が根付くなど大きく変わったが、有野のうますぎないゲームの腕前は絶妙で、視聴者を変わらず喜ばせ続けている。
『ゲームセンターCX』では放送15周年を記念して、5つの大きな企画を実施する。まずは3月からの「ゲームセンターCX博物館」の開催だ。番組内で使用した小道具や台本の展示など、番組のファンが同番組の過去と現在をより深く知るための展示会で、3月10日からのHMV&BOOKS SHIBUYA(東京・渋谷)を皮切りに、名古屋(4月)、仙台(5月)、博多(6月予定)で開催。
そして、人気の高かった過去放送回を中心に、番組初のベスト盤ブルーレイを8月に発売する。番組で天の声役も務める菅剛史プロデューサーは、発売の理由を「放送開始直後からのファンの方が、最近はお子さんと一緒に番組を見るケースが増えたため」と言う。番組開始当時はまだ生まれていなかった子どもと一緒に、二世代で改めて初期の番組を楽しんでもらおうという狙いだ。
さらに1冊丸々を同番組の特集にあてた公式本の発行や、有野課長のフィギュア化に続き、15周年を祝う最大のイベントとなるのが、10月28日に幕張メッセで開催する「ゲームセンターCX 15th感謝祭 有野の生挑戦 リベンジ七番勝負」だ。番組としての大規模なイベントは、13年の「ゲームセンターCX 有野の挑戦 in 武道館」以来となる。15年間の放送の中でエンディングにたどり着けなかったタイトルから7作に、あらためて有野が会場で生挑戦する。
有野がプレー中に老眼鏡を使用
『ゲームセンターCX』が放映されてきた15年間でゲームを取り巻く環境は大きく変わった。ゲームは1人で楽しむものから、動画配信サイトの普及により、プレーの様子を面白く伝える「実況動画」の人気コンテンツに。高額の優勝賞金がかかった大会で、プロゲーマー同士のぶつかり合いを観戦する「eスポーツ」文化も根付いてきている。そうしたなか、『ゲームセンターCX』が「ゲーム実況動画」のルーツと言われることも多い。
しかし、菅プロデューサーはこれを否定する。「視聴者の方がかつてゲームで遊んでいた体験を有野さんに重ね、成功しても失敗しても自分のことのように一喜一憂できるのが『ゲームセンターCX』らしさ。うますぎない絶妙なゲームの腕前の有野さんはあくまでも出演者で、制作スタッフが有野さんをいじったり、編集作業を経てこそ生まれる面白さを大切にしています。そこがゲーム実況配信と大きく異なる部分です」
幕張メッセの1万人を収容する大会場で、有野のプレーをただ観客が見守るだけというイベントを開催するのは「番組のテイストが今後も変わらないことの宣言なんです」と菅プロデューサーは笑う。
とはいえ、15年の歴史を経て、変わったこともあるようだ。「一番大きな変化は、有野さんがこの2~3年で、ゲームの仕掛けの裏を読むようになったことですね。例えばライフアップのアイテムがあると、喜ぶだけではなく、ボス戦が近いのではと感づいたりとか。あとはプレー中に老眼鏡をかけるようになったことでしょうか(笑)。番組を長く楽しんでいる方には、そうした有野さんの変化もぜひ楽しんでほしい」(菅プロデューサー)
視聴者が自身の思い出を有野に重ねられるように、という作り手の狙いに共感するファンに支えられてきた番組『ゲームセンターCX』。今後もマイペースで歩み続けそうだ。
(ライター 佐久間亮介)
[日経エンタテインメント! 2018年5月号の記事を再構成]
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