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まさかの骨折、妄想に浸る余裕なくなる

立川吉笑

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NIKKEI STYLE

隔週日曜に更新している師匠・談笑と私による連載企画。今回もよろしくお願い致します。

前回は「軽視できない『5月病』 予防接種の効果は?」というテーマで、例によって好き勝手に書かせて頂きました。いくつか反響メールももらえてとてもうれしかったです。

5月も終わりが近づいてきていますが、皆様はご無事でしょうか?5月病になっておられませんか?

私、立川吉笑めは見事に「5月12日4時13分病」にかかってしまいました。5月12日4時13分病の症状は「何もないところですっ転ぶ」だったようです。

落語会の打ち上げが終わり、ほろ酔い気分でとぼとぼ自宅に向かって歩いていた途中、フラットな、何の段差もない見事に平坦な道で、どういうわけかすっ転んでしまいました。そして、どういう足の着き方をしたらそうなるのか、いまだに謎ですが、ただ転んだだけで、距骨・舟状骨・踵(しょう)骨という足首からかかとにある3本の骨を骨折してしまいました。とほほ。

まず日常のことを考えないと…

いつもこの連載ではエッセーのふりをして架空の出来事を書いてきました。

本業である新作落語も、日常の中の非日常を描くのではなく、非日常の中の日常を描くことが好きです。少しヘンテコな架空の世界を立ち上げて、その世界の中でのあたり前を描くことで、結果的に現実とのギャップが生じ、それを面白がってもらえたらと常々思っています。

だから今回もいつものように架空の現象について書きたいのだけど、それがどうやら難しそうなのです。

なぜなら頭の中でファンタジー世界に飛び込もうと思っても、足が痛くて、すぐに現実世界に引き戻されてしまうからです。

「明日の仕事場までどうやって行こうかなぁ」「あの会の代演を誰に頼もうかなぁ」「固定している右足が蒸れてきて気持ち悪いなぁ」「あー、右足を地面につけたいなぁ」とかすぐに雑念が浮かび妄想がはかどりません。

架空世界のことを考えている場合じゃなく、ままならない日常のことを考えなければいけないのです。

 とはいえ、考えてみればこれまで健康に暮らしてきた僕にとっては「骨折している」という状態がすでに非日常なわけで、なるほどまだ骨折してから数日しかたっていないけど、すでにいくつも新鮮な体験をしました。今回は、そのいくつかを書いていこうと思います。

すっ転んだ翌朝、トイレに行こうと立ち上がった瞬間に右足に激痛が走りました。歩こうと思っても、右足に重心がかかる度に痛くて、とても歩ける状態じゃありませんでした。捻挫にしては痛すぎるから、この時点ですでに何かしら大きなけがをしているなと分かった僕はすぐさま病院に行くことにしました。

音声アシスタントのSiri(シリ)を立ち上げて「最寄りの整形外科」と聞くと、徒歩15分くらいの場所にある病院を教えてくれました。便利な世の中だと思いながら、ワンメーターの短い区間ではあるけどタクシーでその病院へ向かいました。

道中、どういう病院か詳しく調べるうちに「おや?」と思ったのは、その病院が「内科・小児科・皮膚科・耳鼻咽喉科・整形外科」と5つのジャンルを看板に掲げていることです。「間口を広げすぎてやいませんか?」と内心思いました。どうせだったら「整形外科」一本に絞っている専門店みたいな所の方が信頼できるようなぁ、と。

でも、今は「最寄り」というのが一番ありがたい条件だから、気にせずその病院に向かいました。病院の目の前にタクシーを止めてもらって、一歩一歩というか半歩半歩病院の入り口に向かいました。検索した時点で「なんとなくこれまでも前を通っていたあの病院かな?」という予想はできていたのですが、やっぱり思っていた通りの建物でした。

その建物というのが、何と言ったらいいのか、いかにもカレーショップのココイチが入ってそうな建物で、要はファミレスほど広くはないけど吉野家よりは広い、みたいな感じなのです。ココイチの広さで内科・小児科・皮膚科・耳鼻咽喉科・整形外科は「おやおや、ちょっと欲張りすぎじゃないですか?」と心配になりました。

それでも足は痛いから早く先生に診てもらいたい一心で、何とか入り口までたどり着き自動ドアのボタンを押して、中に入りました。中に入ってすぐ目に飛び込んできたのは10段くらいの階段。その病院は半地下構造だったのです。「整形外科なのに半地下って!」少し声に出して突っ込んでしまいました。

激痛に耐えながら何とか階段を降りて、受付を済まし待合室の椅子に腰掛けました。土曜日ということもあってか、たくさんの患者さんが来られていたけど、目につくのは子供、子供、子供。あとは風邪的な症状なのかマスクをしてだるそうにしている大人、大人、大人。ギプスをつけている人はおろか僕みたいに歩きずらそうにしている人すらいませんでした。

確かに看板には内科・小児科・皮膚科・耳鼻咽喉科・整形外科と書かれているから、どうやら内科・小児科がこの病院が重きを置いているところなんだろうと思いました。となると、最後の整形外科は「これは数合わせみたいなことか?」などと邪推していると名前を呼ばれて診察室に向かいました。

やっぱりココイチが入ってそうな広さの院内には診察室が2部屋ありました。壁に貼ってある出勤表を見ると、院長ともう1人の2人体制で運営しているらしい。「え、2人で内科・小児科・皮膚科・耳鼻咽喉科・整形外科の5つのジャンルを担当するって、完全に重複してるやん」とさらに不安になりながら、ヨタヨタ診察室に入ると院長じゃない方の先生が診断してくれることになりました。腫れ具合を見て、触診して、すぐにレントゲンを撮ることになりました。

捻挫の診断だったのが

レントゲンを見ながら先生は「折れてはないので、重度の捻挫です」と言ってくれました。結果的には距骨・舟状骨・踵骨が折れていましたが、その時は心底ホッとしました。

患部に電気を流してもらって、テーピングをしてもらって、「それじゃぁお大事に」と言われました。が、帰ろうにも、痛すぎて全然歩けないから、お願いして松葉づえを貸してもらいました。

次の日になっても立てないくらい痛くて、これはおかしいと思い、浮気をするみたいで気が引けましたが、少し大きな病院に行ってレントゲンとMRI検査をしてもらったら、3本折れていることが発覚しました。結果、いま僕は最初に行った半地下の病院名が書かれている松葉づえを使いながら、別の大きな病院に通院しています。松葉づえを返しにいくためだけにあの半地下の病院に行くのは気まずいなぁと思っています。

この他、大きな病院に行く時に乗ったタクシーがまさかの信号無視で白バイに止められたこととか、レントゲンとMRI検査で僕の前の人が「オダユウジ」という名前で看護師さんが名前を呼ぶたびに周りがざわついたこととか、骨を折ってから遭遇したあれこれを今は高座でしゃべっています。

なんだかんだやっぱり健康であることが一番です。当たり前の日常のありがたさを痛感しているところです。

立川吉笑
 本名、人羅真樹(ひとら・まさき)。1984年6月27日生まれ、京都市出身。180cm76kg。京都教育大学教育学部数学科教育専攻中退。2010年11月、立川談笑に入門。12年04月、二ツ目に昇進。古典落語のほか、軽妙かつ時にはシュールな創作落語を多数手掛ける。立川談笑一門会やユーロライブ(東京・渋谷)での落語会のほか、水道橋博士のメルマ旬報で「立川吉笑の『現在落語論』」を連載する一方、多くのテレビ出演をこなすなど多彩な才能を発揮する。

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