第1のタイプは「過覚醒型」である。夜中にいったん苦しい不眠を経験すると不安や緊張が高まり、眠気以上に目覚め感が強まって、寝つきが悪くなる(入眠困難)、夜間に目覚める(中途覚醒)などの不眠症状がどんどん重症化する例がこれに当たる。震災などの急激なストレス後の不眠も典型的な「過覚醒型」である。切り替えベタ、心配性で気に病む性格の人がかかりやすい。
第2のタイプは「睡眠恒常性異常型」。疲労すると睡眠の必要性が高まることを睡眠恒常性と呼ぶが、その異常が生じる。典型例が高齢者の不眠症である。年齢とともに必要睡眠時間が短くなり70代にもなれば正味(脳波上は)6時間程度しか眠れなくなる。これ自体は自然な変化であって、異常ではない。ところがリタイヤ世代では寝床で横になる時間は逆に延びてしまう。例えば21時過ぎから朝まで9時間も寝床にいれば、中途覚醒や早い時刻に目覚めて二度寝ができない早朝覚醒が増えるのは避けられない。また、肉体的、精神的に不活発な生活を送ったり、昼寝が長すぎても睡眠恒常性の異常により不眠症状が出現する。結果、眠れないことに悩みや不安を抱くようになる。
第3のタイプは「リズム障害型」。夜型傾向の人がかかりやすく、平均的な就床時刻では眠気が出ずに入眠困難が生じる。平日は出勤や登校のため睡眠不足のまま起床し、そのぶん休日には寝だめが目立つ。遅寝、遅起きが許される環境では睡眠時間は正常で不眠症状も出現しない。本来は概日リズム睡眠―覚醒障害(睡眠―覚醒リズム障害)と呼ばれる別の睡眠障害に分類されるのだが、しばしば不眠症と誤診されるため、あえて不眠(症)を引き起こす3大原因の1つとして取り上げられることが多い。

さて、冒頭で紹介した「不眠症を2つに大別する」とは、第1のタイプと第2のタイプをしっかりと診分けて治療すべきではないかという主張である。