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年収1500万円で教育費赤字 晩婚親の老後を立て直す 高齢出産夫婦、子どもにかけられる教育費(後編)

日経DUAL

2018/5/24

■「使途不明金」から年間160万円の繰り上げ返済を

前野 繰り上げ返済をこれから18回頑張って、2600万円分したとしましょう。すると、約400万円の利息が浮いて、17年3カ月ローン期間が短縮でき、2033年には完済できるようになります。ご主人が62歳のときですね。

S子 ローンを組むときに二人でシミュレーションした通りです。やっぱり定年前には返し終わらないと。

前野 まずは「何に使っているか分からないけど消えている」という「使途不明金」を、目的をもってためていくこと。現状では年間178万円ありますよね。ご主人が70歳、S子さんが63歳になったときにちょうどお子さんが就職します。今のままなら貯蓄が2400万円マイナスになりますが、使途不明金をなくして貯蓄に回せれば、1964万円プラスに変わります。ご主人70歳時点の資産がおよそ4000万円変わるわけですね。

S子 使途不明金を繰り上げ返済に充てた場合、老後の貯蓄額はどうなりますか?

前野 繰り上げ返済に充てると早くローンを返すことができ、老後の住居費の負担も減ります。試算すると、70歳時点の貯蓄額は1074万円プラスになりますね。ただ、それでも74歳時には赤字転落してしまいます。

S子 74歳から貯蓄がマイナスって、ほんと老後貧乏ですよね。嫌だなー、それだけは。

■私立を諦め、公立コースにする? 「老後に住み替え」の夢は?

S子 こんなに現実を見てしまうと、最初にご相談したリタイア後の夢、「キャッシュで鎌倉にマンションを買って老後は住み替える」なんて、絶対に無理ですね。

前野 うーん。住み替えても現金の収支はそんなに変化はないんですよ。マンションの場合、管理費と修繕積立金などの維持費はずっとかかりますし、住んでいるマンションが実際に売れるのかという問題もあります。

S子 場所も都心だし、築年数が経っても5000万円くらいで売れるんじゃないかと甘く考えていました。じゃあ、例えば子どもが中学受験をやめて、中高と公立に行った場合はどうでしょう? ローンをきちんと繰り上げ返済しつつ、「中高は公立、大学だけ私立文系、1年間の海外留学」っていう教育費のパターンを知りたいです。

前野 私立の中高から公立の中高に変えた場合に下がる金額は435万円です。

S子 えー! 思ったより差は出ないんですね。どのみち老後は赤字かあ。

■効果的なのは「支出を少しでも減らす」「細く長く働く」こと

前野 実は、「安心な老後」のカギを握るのは、お二人の「生活レベル」なんです。

S子 毎月の外食費5万円はちょっと使い過ぎかもしれませんね。でも、夫婦の唯一の趣味が外食なので減らすのは難しそう。夫6万円、妻4万円のお小遣いと2万円の洋服・美容院代もそんなに高いつもりはないんです。毎日のランチ代だけでもかかるし。月1万円なら頑張って生活費を減らせるかなあ。

前野 費目を細かく分けると使っているお金の大きさに気づきにくいのですが、普通の食費とは別の外食費、お小遣い、洋服代などで合計17万円を、1カ月の夫婦の「楽しみ」に使っているわけです。そこで、月1万円ここから減らした場合で試算してみましょうか。うん、赤字になるのが夫85歳まで延びますね。

S子 月1万円の節約で意外に延びましたね!

前野 月1万円の力って、実はすごいんです。そしてもう一つの選択肢は、「細く長く働いて収入を増やす」こと。一つの案として、ご主人が65歳でリタイアした後も、手取り年収200万円くらいで70歳まで働きます。年金を65歳ではなく70歳から受け取るコースにすると、年金額が1.42倍に増えます。先ほどの生活費の見直しにこれをプラスすれば、赤字転落が一気に夫91歳まで延びますよ。

S子 うん、この路線だな。

■今から行動すれば、未来は十分変えられる

前野 そして最後のとりで、S子さんですね。55歳でライター業からはリタイアするとおっしゃっていましたが、手取り年収200万円くらいのイメージで、65歳までお仕事を続けてみませんか? そうすると、S子さんが90歳まで赤字を免れることになります。

S子 人生100年時代、少しでも長く働くって大事なんですね……。

最初にシミュレーションを見せてもらったときに、夫が退職する時点で貯蓄が5000万円あるのを見て、てっきり大丈夫かと思ってしまいました。

前野 でもS子さんが仕事を辞めるとそこから毎年400万円ずつ、生活費だけで取り崩していくことになりますし、ちょうど子どもの大学の時期とも重なるわけです。そうすると、あっという間に10年でマイナスになってしまう。

S子 「医学部を目指したい」って言われてもかなえてあげられないなー。

前野 子どもに進学や将来の可能性を残してあげるのは大事です。でも教育費にお金をつぎ込み過ぎた結果、「大学も行かせてあげて、留学もさせてあげたでしょ。だから就職したらお母さんたちに月3万円仕送りしてね」というパターンになってしまうこともありますよ。

S子 リタイアした親世代を見ていると、旅行に行ったりして悠々自適の暮らしなのに。

前野 親世代とは環境が違うので、お手本にはなりません。先ほど「月1万円節約するだけで意外と未来が変わった!」と驚いていらしたけど、「日々の積み重ね」が老後に響きます。カードの年会費、毎年の旅行代、携帯電話代などの地道な見直しも大事です。一方でお仕事の面でも、S子さんがリタイアをイメージしていた55歳まであと15年以上あるので、長く働けるような環境やネットワーク作り、スキルアップも目標にすればいいのではないでしょうか。

S子 本当に相談してよかったです。世帯年収が1500万円ほどあるので「何とかなるだろう」と思っている部分がありましたけど、現実は厳しかった!

前野 S子さんご夫妻の場合、子どもの教育費への出費と老後が重なる「オトナ夫婦」ということと、使途不明金が多いという弱点がありましたね。でもその分、見直す余地があるということですから。毎年繰り上げ返済を160万円できる「家計力」はあります。ぜひパパとママで話し合いをしながら、頑張ってみてください。

前野 彩

Cras代表取締役。FPオフィス will代表。ファイナンシャル・プランナー。「お金の安心と可能性をかたちにし、心の自立と輝く明日をつくる」ことを理念に、「知れば得トク、知らなきゃソンするお金の知恵」を子育て世帯や女性に伝えている。著書多数。近著に『教育費&子育て費 賢い家族のお金の新ルール』(日経BP社)、『本気で家計を変えたいあなたへ ~書き込むお金のワークブック<第2版>』(日本経済新聞出版社)、『書けばわかる! 子育てファミリーのハッピーマネープラン』(マンガ:此林ミサ、日本経済新聞出版社)。

(ライター 澤田聡子)

[日経DUAL 2018年3月30日付記事を再構成]

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