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年収1500万円で教育費赤字 晩婚親の老後を立て直す

高齢出産夫婦、子どもにかけられる教育費(後編)

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NIKKEI STYLE

日経DUAL

間もなく子どもが誕生する39歳のS子さんと46歳の夫は、できればわが子を中学から私立に通わせ、海外留学もかなえてあげたいと考えています。世帯年収は1500万円ほどあるけれど、一体どれくらい教育費にかけることができるのか――。前編の「年収1500万円で1億円赤字 理想の教育と家計の現実」記事では、現状の収入と支出、貯蓄を基に未来の家計をシミュレーションしたところ、なんと老後の貯蓄が億単位の赤字になることが判明! 後編ではその理由と解決法を、『教育費&子育て費 賢い家族のお金の新ルール(日経DUALの本) 』の著者でファイナンシャル・プランナーの前野彩さんが詳しく解説します。

「オトナ夫婦」は老後資金をためる時間がない!

FP前野彩さん(以下、前野) 65歳で退職金が入った時点では貯蓄額5000万円なのに、79歳の住宅ローン完済時には1億円の赤字に。そもそも退職して3年後のパパ68歳、子どもがまだ大学生というタイミングで家計が赤字に転落します。この時点でご主人は年金生活で年収200万円、一方のS子さんは無収入。収入が一気に減るのに支出は1000万円超となり、赤字街道まっしぐらというわけです。

相談者S子さん(以下、S子) うわー…(青ざめる)。考えもしなかったです。繰り上げ返済しないとローン完済時にはマイナス1億円なんて。

前野 一応夫婦とも100歳まで生きるという前提でシミュレーションしていますが、そうなると最終的にはマイナス3億円くらいになってしまいますね。共働きってバリバリ働いている現役時代はうまくお金が回るんですよ。でも問題は仕事をリタイアした後。年金生活に入って生活レベルをすぐに落とせるかというと、難しいですよね。

S子 そうですね。いきなり節約、というモードには切り替えられないと思います。

前野 お二人の場合、子どもに一番お金がかかる大学時代と夫婦の老後が重なってしまうのが厳しいところだと思います。パパの年齢が上で、さらにママの出産年齢が遅めの「オトナ夫婦」の場合、子どもの教育にお金をかけ過ぎてしまうと老後の準備をする時間がないんですよ。

「とにかく教育費優先」というのであれば、収入を増やすのか、それとも今の生活費を見直すのか、という優先順位を考えていく必要があります。

S子 夫のほうが中学から私立にこだわりがあるかも。今住んでいるところの周辺に有名私立があるので、せっかくだから通わせたいという感じかな。子どもが行きたいと言い出したときに、金銭面で可能性を残しておいてあげたいんです。

60歳以降に引き出せる「iDeCo」が教育資金用としても使える

前野 「これは教育費用としてためている」というように、目的がはっきりとした貯蓄はありますか?

S子 今は特に決めずにためている感じですかね。あ、そういえば、夫が少額投資非課税制度(NISA)口座を今月から開設して教育資金用に月2万円ずつためることにしたと言っていました。

前野 いいですね! S子さんもNISA口座に投資信託170万円を持っていますよね。お二人は、iDeCo(イデコ)はされていないんですか。老後資金をつくるための個人型確定拠出年金のことですが。

S子 よく分からなくてやっていません。

前野 ご主人の年収や年齢を考えると、iDeCoのほうがメリットがありますね。お子さんが18歳になって大学に行くころ、パパは64歳。iDeCoのお金は60歳以上から引き出せるから、老後資金に限らずご主人の場合はこれを教育資金として使えます。

S子 ふんふん。NISAと併用できますか。

前野 できますよ。ご主人は所得が高いので、iDeCoを使うと税制面でのメリットが大きいです。会社に確定給付年金や厚生年金基金がある場合は、毎月の積み立てなら上限が月1万2000円。何もない場合は2万3000円です。

S子 なるほど。夫に聞いてみます。

前野 フリーランスのS子さんがiDeCoをするのであれば、1カ月あたり6万8000円まで積み立てることもできますよ。ただし60歳になるまで下ろせないので、教育費として考えるならお子さんが14歳のときに60歳を迎えるパパにやってもらったほうがいいでしょう。月1万2000円積み立てたとして、ご主人の所得税率が20%だとすると、住民税と合わせて年間4万円ほど節税ができます。

S子 子どもが生まれてから14年間続けたとすると……。

前野 全部で56万円分くらいの節税になりますね。

S子 税金面でこんなにメリットがあるんですね。早速、夫に相談します!

繰り上げ返済と投資、本当に得なのはどっち?

前野 家計全体の見直しというのは、固定費から見ていきます。S子さんご夫妻の場合、固定費の中で一番大きいのは住宅ローンです。5000万円を20年固定で0.95%という低金利で借りられているので、S子さんの予定通りに毎年160万円をどんどん繰り上げ返済したほうがいいのかどうかを考えましょうか。繰り上げ返済をして、利息負担がどの程度カットできるか試算したことはありますか。

S子 うーん、ないですね。

前野 10年間で合計約1600万円の繰り上げ返済をすると、トータルで387万円利息がカットできます。ローン期間は11年10カ月、短くできますね。

S子 おお! 夫が「ローン残高が2000万円を切ったら、もう繰り上げ返済しないほうがいい」とか言うんですよ。金利が安いから、余分な資金があればその分投資に回したほうがいいって。私はあまりピンときていなくて、いつもこれでケンカになるんです。

前野 ご主人が気にされているのは、住宅ローン控除のことではないでしょうか。現在借りている金利は0.95%で、住宅ローン控除で還付される税金は1%あるから、一般的には今は借りておいたほうがトクです。ただしS子さんの場合は、住宅ローン控除の上限を超えている借入分には全額利息を払っている状態なので、早めに返済するほうが家計の利息負担を減らせるのです。

S子 なるほど! 運用についてはどうですか?

前野 投資に回すお金が100万円だとすると、たとえ5%で回せても、もうけは5万円です。一方、金利0.95%でローン残高2000万円のときに繰り上げ返済100万円を行って浮く利息は14万円ですから、具体的に計算してみるとどちらがトクですか? 「率」で考える部分と「額」で考える部分をうまく分けて考えてみてください。

S子 分かりやすい! これで夫に反論できます(笑)。

相談者S子さんのプロフィール
<夫婦の仕事と年収>
■夫(46歳)/正社員・金融 年収1050万円(税込み)、月給43万円(手取り)、ボーナス250万円
■妻(39歳)/フリーランス・マスコミ 年収450万円(税込み)、月給33万円(手取り)、ボーナスはフリーランスのためなし
<現在の貯蓄や金融商品>
■夫/普通・定期預金380万円
■妻/普通・定期預金50万円、投資信託170万円(時価)、株式90万円(時価)
<毎月の貯蓄>
■家計から月10万円
■自動積立月5万円
■教育資金としてつみたてNISA月2万円(2018年3月からスタート)
<住宅ローン>
■月14万円ずつ返済
2年前に都心に中古マンションを購入しリノベーション。リフォーム費用含めかかったお金は7000万円。住宅ローンは5000万円を20年固定金利(0.95%)35年ローンで借入。

「使途不明金」から年間160万円の繰り上げ返済を

前野 繰り上げ返済をこれから18回頑張って、2600万円分したとしましょう。すると、約400万円の利息が浮いて、17年3カ月ローン期間が短縮でき、2033年には完済できるようになります。ご主人が62歳のときですね。

S子 ローンを組むときに二人でシミュレーションした通りです。やっぱり定年前には返し終わらないと。

前野 まずは「何に使っているか分からないけど消えている」という「使途不明金」を、目的をもってためていくこと。現状では年間178万円ありますよね。ご主人が70歳、S子さんが63歳になったときにちょうどお子さんが就職します。今のままなら貯蓄が2400万円マイナスになりますが、使途不明金をなくして貯蓄に回せれば、1964万円プラスに変わります。ご主人70歳時点の資産がおよそ4000万円変わるわけですね。

S子 使途不明金を繰り上げ返済に充てた場合、老後の貯蓄額はどうなりますか?

前野 繰り上げ返済に充てると早くローンを返すことができ、老後の住居費の負担も減ります。試算すると、70歳時点の貯蓄額は1074万円プラスになりますね。ただ、それでも74歳時には赤字転落してしまいます。

S子 74歳から貯蓄がマイナスって、ほんと老後貧乏ですよね。嫌だなー、それだけは。

私立を諦め、公立コースにする? 「老後に住み替え」の夢は?

S子 こんなに現実を見てしまうと、最初にご相談したリタイア後の夢、「キャッシュで鎌倉にマンションを買って老後は住み替える」なんて、絶対に無理ですね。

前野 うーん。住み替えても現金の収支はそんなに変化はないんですよ。マンションの場合、管理費と修繕積立金などの維持費はずっとかかりますし、住んでいるマンションが実際に売れるのかという問題もあります。

S子 場所も都心だし、築年数が経っても5000万円くらいで売れるんじゃないかと甘く考えていました。じゃあ、例えば子どもが中学受験をやめて、中高と公立に行った場合はどうでしょう? ローンをきちんと繰り上げ返済しつつ、「中高は公立、大学だけ私立文系、1年間の海外留学」っていう教育費のパターンを知りたいです。

前野 私立の中高から公立の中高に変えた場合に下がる金額は435万円です。

S子 えー! 思ったより差は出ないんですね。どのみち老後は赤字かあ。

効果的なのは「支出を少しでも減らす」「細く長く働く」こと

前野 実は、「安心な老後」のカギを握るのは、お二人の「生活レベル」なんです。

S子 毎月の外食費5万円はちょっと使い過ぎかもしれませんね。でも、夫婦の唯一の趣味が外食なので減らすのは難しそう。夫6万円、妻4万円のお小遣いと2万円の洋服・美容院代もそんなに高いつもりはないんです。毎日のランチ代だけでもかかるし。月1万円なら頑張って生活費を減らせるかなあ。

前野 費目を細かく分けると使っているお金の大きさに気づきにくいのですが、普通の食費とは別の外食費、お小遣い、洋服代などで合計17万円を、1カ月の夫婦の「楽しみ」に使っているわけです。そこで、月1万円ここから減らした場合で試算してみましょうか。うん、赤字になるのが夫85歳まで延びますね。

S子 月1万円の節約で意外に延びましたね!

前野 月1万円の力って、実はすごいんです。そしてもう一つの選択肢は、「細く長く働いて収入を増やす」こと。一つの案として、ご主人が65歳でリタイアした後も、手取り年収200万円くらいで70歳まで働きます。年金を65歳ではなく70歳から受け取るコースにすると、年金額が1.42倍に増えます。先ほどの生活費の見直しにこれをプラスすれば、赤字転落が一気に夫91歳まで延びますよ。

S子 うん、この路線だな。

今から行動すれば、未来は十分変えられる

前野 そして最後のとりで、S子さんですね。55歳でライター業からはリタイアするとおっしゃっていましたが、手取り年収200万円くらいのイメージで、65歳までお仕事を続けてみませんか? そうすると、S子さんが90歳まで赤字を免れることになります。

S子 人生100年時代、少しでも長く働くって大事なんですね……。

最初にシミュレーションを見せてもらったときに、夫が退職する時点で貯蓄が5000万円あるのを見て、てっきり大丈夫かと思ってしまいました。

前野 でもS子さんが仕事を辞めるとそこから毎年400万円ずつ、生活費だけで取り崩していくことになりますし、ちょうど子どもの大学の時期とも重なるわけです。そうすると、あっという間に10年でマイナスになってしまう。

S子 「医学部を目指したい」って言われてもかなえてあげられないなー。

前野 子どもに進学や将来の可能性を残してあげるのは大事です。でも教育費にお金をつぎ込み過ぎた結果、「大学も行かせてあげて、留学もさせてあげたでしょ。だから就職したらお母さんたちに月3万円仕送りしてね」というパターンになってしまうこともありますよ。

S子 リタイアした親世代を見ていると、旅行に行ったりして悠々自適の暮らしなのに。

前野 親世代とは環境が違うので、お手本にはなりません。先ほど「月1万円節約するだけで意外と未来が変わった!」と驚いていらしたけど、「日々の積み重ね」が老後に響きます。カードの年会費、毎年の旅行代、携帯電話代などの地道な見直しも大事です。一方でお仕事の面でも、S子さんがリタイアをイメージしていた55歳まであと15年以上あるので、長く働けるような環境やネットワーク作り、スキルアップも目標にすればいいのではないでしょうか。

S子 本当に相談してよかったです。世帯年収が1500万円ほどあるので「何とかなるだろう」と思っている部分がありましたけど、現実は厳しかった!

前野 S子さんご夫妻の場合、子どもの教育費への出費と老後が重なる「オトナ夫婦」ということと、使途不明金が多いという弱点がありましたね。でもその分、見直す余地があるということですから。毎年繰り上げ返済を160万円できる「家計力」はあります。ぜひパパとママで話し合いをしながら、頑張ってみてください。

前野 彩

 Cras代表取締役。FPオフィス will代表。ファイナンシャル・プランナー。「お金の安心と可能性をかたちにし、心の自立と輝く明日をつくる」ことを理念に、「知れば得トク、知らなきゃソンするお金の知恵」を子育て世帯や女性に伝えている。著書多数。近著に『教育費&子育て費 賢い家族のお金の新ルール』(日経BP社)、『本気で家計を変えたいあなたへ ~書き込むお金のワークブック<第2版>』(日本経済新聞出版社)、『書けばわかる! 子育てファミリーのハッピーマネープラン』(マンガ:此林ミサ、日本経済新聞出版社)。

(ライター 澤田聡子)

[日経DUAL 2018年3月30日付記事を再構成]

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