近所探検、イベント…星野もマリオットも遊べるホテル
宿泊だけではなく、ホテルの役割がどんどん進化している。訪れる人たちにホテル周辺地域の魅力を案内したり、人と人のネットワークを生み出すイベントを仕掛けたり。新しいホテルのあり方を提案する星野リゾートの「OMO(おも)」、マリオット・インターナショナルの「モクシー」の2つのブランドを紹介する。
ホテルスタッフがゲストを町案内
2018年4月28日、北海道旭川市にオープンした「星野リゾート OMO7旭川」。「星のや」「リゾナーレ」「界」など特徴あるブランドを仕掛けてきた星野リゾートが、満を持して発表した第4のブランドが「OMO(おも)」である。
コンセプトは「旅のテンションを上げる都市観光ホテル」。町を楽しむという視点から考えられた新しいサービスの目玉は「Go-KINJO」だ。町歩きをしながら、地元民だからこそ知っているような情報を発見して、喜びを感じてもらおうというものだ。
地元のおすすめ情報がコンパクトに詰まった「ご近所マップ」。町探索のおすすめコース案内「体験レポート」。モノづくりやご当地体験に取り組む「ご当地ワークショップ」、そして何よりユニークなのが、専任案内チームで構成される「ご近所専隊 OMOレンジャー」だ。
ご近所の「専隊レンジャー」だから5色に分かれて、雑貨やカフェ、酒場巡り、ご当地のディープな食べ歩きなど、それぞれのレンジャーが得意分野のとっておきスポットに連れていってくれたり、特別な体験を案内してくれたりする。
宿泊者限定のプログラムで予約制。OMO旭川では、雑貨やカフェを巡るお散歩中心のOMO GREENは無料で所要1時間。その他の色のレンジャーは1000円(税込み)で2時間だ。
星野リゾート OMO7旭川で、OMO GREENと一緒に町歩きをしてみた。何と日本で最初の歩行者天国だという買物公園を中心に、「あらしのよるに」で有名な旭川の絵本作家、あべ弘士氏が運営するギャラリー、日本中のクリエーターのハンドメイド作品を集めた店、手作りチーズを目の前であぶって食べさせてくれる店など、実に魅力的な店がいっぱいで驚かされた。
星野リゾート OMO7旭川は、有名な旭川ラーメンのラーメンどんぶりを使ったランプやシラカバのテーブルがOMOベースを飾り、旅先で町街探索の作戦をいろいろ練ってほしいという「DANRAN Room」など、とても個性的なつくり。
旭川に続く第2弾として、星野リゾート OMO5 東京大塚も18年5月9日にオープンした。ここでも「ご近所専隊 OMOレンジャー」が活躍する。サービスだけでなく、施設にも遊び心がいっぱいに散りばめられている。
星野リゾート OMO5 東京大塚は、カフェのある大空間の「OMOベース」に同じく「Go-KINJO」マップがある。さらに、自動チェックインカウンターや、畳敷きのフロアの階上にヒノキのやぐら寝台が設けられた「YAGURA Room」という秘密基地のような部屋は、独自のもの。ホテルに泊まることでワクワクする面白さを提供してくれそうだ。
ホテルがイベント演出、遊べる空間
マリオット・インターナショナルが、17年11月1日に東京・錦糸町と大阪・本町に同時オープンしたのが、インスタ映えも抜群のスタイリッシュな「モクシー・ホテル」。一歩、足を踏み入れたら別世界のようなデザインやインテリア、毎週金・土曜の夜に開催されるDJナイトをはじめ、出会いや刺激に満ちたユニークなイベントを開催している。
Moxyは「勇気とガッツのある人」を指す造語。モクシー・ホテルは、ゲストの前向きな人生のスパイスになりそうな体験を提供するカジュアルなホテルというところ。総支配人をキャプテン、国籍・個性ともバラエティーに富む従業員をクルーと呼び、ゲストに特技を披露したり、一緒になってゲームをしたりと楽しい時間の提供に心を配っているという。
ラウンジ(ロビー)にある24時間オープンのバーがフロントの役目をしていて、ここでチェックイン。グレープフルーツジュースと焼酎をベースにしたモクシーハイ(ノンアルコールの選択が可能)というオリジナルカクテルがウェルカムドリンクとしてサービスされる。
ラウンジには、テーブル・フットボールやボードゲームが置かれ、ゲストがあちこちで楽しめるスペースが演出されている。チェックインやチェックアウトの際にちょっとした時間を過ごす従来のホテルロビーとは一線を画し、バーを含めて全体が遊びの空間なのだ。
夜食にはカップラーメンが並び、朝食ではグラノーラやドリンク、サラダやフルーツ、パン・ベーコン・ソーセージなどの洋風メニュー、おかゆ・焼き魚などの和風メニューがある。さらに、麺や具、スープを自由に選んでカスタマイズできるヌードルバー(ランチも対応)もある。
あちこちにコンセントが仕込まれた静かなライブラリーでは仕事もできる。サンドバッグまで置かれたフィットネスルームがあるのは、いかにも外資系ホテルらしい。
エレベーターで客室フロアに向かうと、ここはオフィスかと思うようなドアが並ぶデザイン。客室はシャワールームと大きな壁付けのテレビが設置されたベッドルームからなるが、驚かされるのは折りたたみ式の椅子や机が壁に掛けられていること。クローゼットはなく、服も壁に掛ける。スペースの使い方はご自由にというわけだ。
しゃれた小物が置かれた室内は、どこか海外の一人暮らしのコンパクトなアパートにいるような感じすらする。冷蔵庫はない代わりに、24時間オープンのバーを利用する仕組み。ナイトウエアやケトルは受付で貸し出してくれる。フィットネスやランドリールームは別に設けられている。
独自の世界観を持つモクシー・ホテルは、これまでも東京・大阪でそれぞれ独創的なイベントを開催している。モクシー東京錦糸町では「MOXY PLAYHOUSE」と題して、地下1階から2階までを「コスプレ」「ゲーム」「音楽」など異なるテーマを設定した体験型パーティーを開催。モクシー大阪本町では、80年代のバブル時代を彷彿とさせる「80's BUBBLY NIGHT」を開催した。
宿泊客以外も楽しめるイベントを開催することで、地域や人を刺激する空間も提供する。これもまた新たなホテルのあり方だ。
世界有数のトラベルガイドブック「ロンリープラネット日本語版」の編集を経て、フリーランスに。東京と米国・ポートランドのデュアルライフを送りながら、旅の楽しみ方を中心に食・文化・アートなどについて執筆、編集、プロデュース多数。日本旅行作家協会会員。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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