「におわない靴下」大集合 5日間履いてもOK?
汗をかきやすい季節になると、気になるのが臭い。特に靴を脱いだときに漂う蒸れた臭いを気にする人は多い。毎日長時間革靴を履いているビジネスパーソンならなおさらだ。そこで重要になってくるのが靴下選び。通気性が良く、臭いが付きにくいうえに、消臭効果があればなお良い。そのような機能を持った靴下はさまざまなメーカーから発売されている。今回はその中でもロングヒットしている機能性靴下を紹介する。
そもそもなぜ、足は臭くなるのだろうか。特に靴を脱いだときの臭いの原因は何なのか。上半身に比べて皮脂が少ない足は、脂臭さはないが、独特な蒸れた臭いがする。その原因成分のひとつが「イソ吉草酸」というもの。花王によると、イソ吉草酸が増殖していく過程を可視化すると、入浴後や翌朝の出勤直後では大きな差はないが、夕方の就業後には増加していることが分かったという。
しかも靴を一日中履いていると、その中は温度が37~40度、湿度は90%にもなるらしい。さらに、足裏にはたくさんの汗腺があり、1日にコップ1杯分もの汗をかく。こんな環境なのだから、靴を脱ぐと足が臭うのも仕方がないのかもしれない。
5日間履き続けても臭わないウール100%靴下
2004年に発売して以来、累計販売数1000万足以上を超えるヒットとなっているのが、靴下専業メーカー、岡本の「スーパーソックス」だ。「社長の『ほんまもんの靴下を作れ』というひと言で、ビジネスパーソンに向けて、蒸れと臭いを解決し、かつ使い続けても効果が落ちない靴下の開発が始まった」と岡本の岡田征矢部長は話す。
もともとは高い吸湿性、保温性、防湿性があり、抗菌効果も持ち合わせている天然素材のウールに着目したが、ウールは毛玉ができやすく、チクチクし、縮むというデメリットがあった。そこでウール表面にあるスケールと呼ばれるうろこ状の組織を取り除き、毛玉をできにくくして表面をなめらかにする技術を開発。プロジェクト発足から6年を費やして完成したのが、天然のウールを改良した繊維「ブリーズファイバー」を使用したスーパーソックスだ。「完成後、社長をはじめ社員が5日間履き続けてテストを実施し、連続で履いても臭わないことを実感して発売にこぎつけた」(岡田部長)。
スーパーソックスの強みは、消臭効果が半永久的に持続することだそうだ。「スーパーソックスの素材であるブリーズファイバーは、呼吸する素材と言われる天然のウールから作られている。天然素材が持つ消臭機能をそのまま生かしているので、消臭効果はほとんど変わらない。また、綿混ソックスに比べて蒸れにくいという特性もあるので、夏にこそ履いてほしい」(同氏)。
臭いを包み込んで約30秒で消臭する靴下
臭いが広まる前に素早く消臭するというのが、総合繊維メーカーのセーレンが2008年に発売した「デオエスト 消臭ビジネスソックス」だ。
開発は、広島大学病院感染症科の大毛宏喜教授から届いた1通のメールから始まった。「『臭いを包み込んで瞬間的に消す布を作ってほしい』というのが大毛教授のリクエストだった」とセーレンの広報、吉田乃美氏は言う。そこで、試行錯誤してたどり着いたのが、ナノレベルのセラミック粒子を繊維に入れ込む技術だった。繊維に固着させたナノレベルのセラミックスが臭いを素早く吸着、それを金属イオンが分解することで、臭いの約80%を約30秒で消臭するという。
臭いといっても身体の部位によって発する成分は違うが、数種のセラミックスと金属イオンを組み合わせることで、加齢臭、汗、体臭、足、排せつ、おならまで、あらゆる臭いをまとめて消臭でき、洗濯を重ねても消臭効果が持続するのだそうだ。2008年の発売以来、累計販売数は5万足以上。現在は夏用の薄地のビジネスソックスも販売している。
海上自衛隊潜水艦や南極観測船で採用された靴下
海上自衛隊の潜水艦や南極観測船「しらせ」などで長期間海上勤務をしている人たちに愛用されているのが、2003年から販売されているライフリングの「ブリーズブロンズ」。この製品は、繊維に臭いの元が付着すると中和して分解する仕組みだ。結合して分解された臭い成分は洗濯のたびに洗い流されるので、長期間消臭効果が続くという。「厳しい検査が約1年にわたって行われる繊維評価技術協議会から『消臭加工』の認証を受けた」と、開発元の梶谷二朗ライフリング社長は話す。こまめに洗濯できる環境ではない海上自衛隊の潜水艦でも10年連続で使われているのは説得力がある。
ブリーズブロンズの特徴は、繊維を液体につけて消臭機能を加えたものとは違い、糸そのものが消臭機能を保持していること。したがって、靴下としてはボロボロになって履けなくなってしまっても、下駄箱やロッカーなどの消臭剤として再利用できるという。「3日間くらい履き続けても問題ない。また、洗濯時に漂白剤や柔軟剤は極力使用しなければ、消臭機能が長く続き、再利用できる」(梶谷社長)。
3社の製品は、見比べてみても違いはほぼ分からない。ウール製のスーパーソックスはふんわりとしているが、手触りはわずかにチクチクする。一方、綿が主な素材である、デオエストとブリーズブロンズはしっとりとした感触。価格は、自社で開発から生産まで行っているスーパーソックスはリーズナブル。対してブリーズブロンズは国内の名産地での生産にこだわっていることから少し割高感はあるかもしれない。まずは試してみて自分に合うものを探してみてはいかがだろうか。
(ライター 広瀬敬代)
[日経トレンディネット 2018年5月9日付の記事を再構成]
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