冠番組にダンス 欅坂46、知られざる2年目の成長
4月6日にデビュー2周年を迎えた欅坂46。ロックテイストあふれるグループカラーは、この1年でさらに強固なものとなった。冠番組で見せる素顔や、ダンスに取り組む意識の変化から、ライブなどの表舞台からは見えない、欅坂46の知られざる2年目の成長を探った。
ステージでは迫力のパフォーマンスに磨きをかけている欅坂46だが、2015年10月に初の冠番組としてスタートした『欅って、書けない?』(テレビ東京)では変わらず素朴なキャラクターを見せている。番組のプロデューサー、ケイマックス・長尾真氏は「バラエティーを通じて、この1年で欅坂46の何が大きく変わったのかといえば、あまり変わっていません(笑)。でも、それも欅坂46らしさの1つかもしれません。ライブでは一体感を強めているからこそ、番組ではむしろ個々のメンバーを目立たせる工夫をしています」と話す。
例えば、渡辺梨加は番組MCの土田晃之が「世界一しゃべらない人」と評しているが、「番組では口数が少ないことを渡辺さんのキャラクターとしてとらえて、そこに寄せている。小さい声を拾うために彼女だけピンマイクを付けていることをクローズアップしたり、土田さんが彼女の言葉を勝手にアテレコすることがお約束になっています」(長尾氏、以下同)。
おとなしいメンバーが多い欅坂46だが、少人数で組んでロケをすると盛り上がることが分かってきたため、17年から「2人ロケフィーリングカップル」という企画をシリーズ化。相思相愛でカップル成立となった菅井友香と土生瑞穂、志田愛佳と渡邉理佐、齋藤冬優花と長濱ねる、織田奈那と鈴本美愉、上村莉菜と尾関梨香の5組がロケを行った。
「織田さんが大好きな鈴本さんは、2人だとスタジオでは見せない、こういう素の表情も見せるんだと感じる瞬間がありました。上村さんと尾関さんの、大はしゃぎするわけではないけれどもうれしそうという空気感と、2人の距離感も印象的でしたね。大人数でも1人でもしゃべらないメンバーも、2~3人になると、自然と個性を発揮します」
ライブで前のほうに出たり、MCの機会が少ないメンバーのファンは『欅って、書けない?』での行動や発言を握手会でメンバーとの会話のきっかけにすることが多い。「これからもライブとはまた違う、欅坂46の一面を見せていきたいと思っています」
歌詞の世界観への理解力が高まる
一方、ダンスは個の魅力や意思が色濃く出るフェーズに入ったというのは、デビュー曲『サイレントマジョリティー』から欅坂46の振り付けを手掛けてきた、ダンサーでコレオグラファーのTAKAHIRO氏だ。
新曲のダンスレッスンが始まるときには、TAKAHIRO氏が歌詞の世界観をメンバーたちと話し合う時間を大切にしているという。最近の変化を聞くと「メンバーの理解力が高まっていますね。『風に吹かれても』(17年10月発売)の頃から、除々にメンバー自身に歌詞の解釈を委ねるよう、試みています。」(TAKAHIRO氏、以下同)
『風に吹かれても』は欅坂46の歴代のシングルで最も明るくハッピーな1曲だ。「改めてメンバー同士の絆が重視された楽曲。シンプルなリズムに乗せて、ハイタッチをしたり、手をつないだり、つながり合うからこそ成立する動きを大切にしました」
一転して、3月に発売された新曲『ガラスを割れ!』は、『不協和音』に近い世界観のメッセージ性が強い楽曲だ。「目の前にガラスの壁があっても進むことを諦めずに、ガラスを突き破ってでも自分の意思を貫いてどんどん進んでいこうという曲。そうしたメッセージを表現するため、サビのダンスは思いきり前に進んでいきます。ミュージックビデオでは100メートルほど、ずっと前進しています」
TAKAHIRO氏から見た、この1年の欅坂46の成長は「集団で見せる作品の中で、個の魅力や個性、そして意思が色濃く出るフェーズになったこと」という。「メンバーがそれぞれ自分らしさを見つけ始めています。例えば平手友梨奈さんは、デビュー当初は自分の目の前の作品だけに集中していたのが、視野が広がり全体の演出が見えるようになりました。昨今ではコンサートやライブの演出会議に参加することもあります」
『ガラスを割れ!』は平手が出演できない状況が生じ、歌番組用に構成を作り変えた。「今泉佑唯さんと小林由依さんが中心に立つ形となったテレビバージョンは、個を意識した振り付けになっています。今この瞬間に、このメンバーだからこその意思を際立たせる振り付けをお届けできるように意識しています」という。
(ライター 高倉文紀)
[日経エンタテインメント! 2018年5月号の記事を再構成]
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