味わいの差は脚にあり クラフトビール用グラス4種
合羽橋の老舗料理道具店「飯田屋」の6代目、飯田結太氏がイマドキの調理道具を徹底比較。今回はクラフトビール専用グラスです。クラフトビールにはさまざまな種類があるが、その数だけ専用グラスがあるという。どれくらい味わいが違うのかを検証した。
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こんにちは、飯田結太です。さまざまな種類があり、味わいも香りも異なるクラフトビール。よく知られているのは、ペールエール、IPA(インディア・ペールエール)、スタウト(黒ビール)など。これらはアルコール度数が高くて香りも濃厚、味わいに個性があり、ファンも多いですよね。
まず、クラフトビールをおいしく楽しむために必要なのは、冷やしすぎないこと。アルコール度数が高めのエール系の適温は10~12度といわれています。また、IPAやスタウトは常温のほうがおいしいとも。それぞれ個性があるので、その個性を引き立ててくれるのが、専用のグラスなんです。
プロに人気があるビアグラスは、ドイツのグラスメーカー「シュピゲラウ」のもの。この会社は、ビール醸造所と一緒にグラスを共同開発しているんです。まさにビアグラスに特化したメーカー。私もビール好きとして、さまざまなビアグラスを試していますが、現在のところ、シュピゲラウに勝るグラスは見つかっていません。飲み口の薄さも、ビールの味わいに合わせたふくらみ具合も絶妙で、ビール本来の味をダイレクトに楽しめます。今回は、プロ御用達のシュピゲラウのグラスを検証します。
グラス脚の段差が味わいを増すカギ
クラフトビールの種類に合わせてグラスを選ぶ際のポイントは、香りの引き立て方の違い。見極めるポイントは、グラスのふくらみ具合と脚部分の形状の違いです。
脚の段差が味わいを増すカギ「IPA(インディア・ペールエール)」用
クラフトビールの中でも人気が高いIPAは、ホップの香りと苦味を楽しむビール。この両方をバランス良く楽しめるように作られたグラスのポイントは、脚部分の凸凹段差です。ビールを注ぐときにこの段差に当たることで軟らかい泡立ちになり、ホップの香りが広がります。飲み口が小さめになっているのも特徴のひとつ。
鼻先が入る大きさの飲み口が特徴の「スタウト」用
ギネスビールに代表されるスタウト(黒ビール)は、焙煎したモルトの風味と、コーヒーやチョコレートのような香り、苦味がおいしいですよね。スタウト用のグラスは、IPA用と違って脚に段差はありません。そして、上部がワイングラス形状になっています。さらに、飲み口は、香りを楽しむために鼻先が入るくらいの大きめな作りになっているんです。下部が細めなので、グラスを傾けるたびに空気が含まれて香りが上がってくる仕組み。香ばしい味わいが最後まで続きます。
さらにシュピゲラウには、日本ではあまりメジャーではないものの、欧米で人気がある「ヴァイツェン系(アメリカン・ウィート・ビール)」や、ウイスキーのたるで二次発酵させる珍しい「バレルエイジド」専用のビアグラスもあるんです。
香りと爽快感の両方が楽しめる緩めカーブの「アメリカン・ウィート・ビール」用
アメリカン・ウィート・ビールは、ドイツのヴァイツェンをベースに米国で造られたビール。かんきつ系の風味で爽快感があるので、苦さは控えめです。通常、グラスの膨らみ部分とすぼまっている部分の差が激しいほど香りが強調され、のどごしは弱まるので、このビール専用のグラスは、爽快感を楽しめるように、グラスのカーブはスタウトに比べて緩やかに作られています。
チューリップ形飲み口でまろやかな味わい「バレルエイジドビール」用
バレルエイジドビールは、ウイスキーのたるで二次発酵させたビールのこと。使用するたるによって味わいが異なります。その複雑な香りはワインやブランデーに似ているかもしれません。だから形状もワイングラスそのもの。飲み口がチューリップのつぼみのようになっていて、香りを閉じ込めるのが特徴です。
クラフトビールにはまっている人は、ぜひグラスを変えて飲み比べてみてください。
グラスの3分の2まで注ぐのがおいしく飲むコツ
クラフトビールは、香りを存分に楽しむビールです。グラスもそのために作られていて、その効果を最大限に生かすのが、ビールの注ぎ方。ラガービールは、飲み口からはみ出るくらいまで泡をたっぷり作るのがポイントですが、クラフトビールはグラスの一番膨らんでいる部分まで注ぐのが、おいしく香りと味わいを楽しむコツ。そのために、どのグラスも膨らみの頂点部分までで約350mlは入るように作られているんです。
普通のジョッキやタンブラーで飲む場合と専用グラスで飲む場合を比べてみると、専用グラスのほうが香りは強く、味わいも深くなります。ぜひ、お試しください(談)。
(ライター 広瀬敬代)
[日経トレンディネット 2018年5月1日付の記事を再構成]
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