衝撃受けたNYの多様な働き方 日本で浸透めざし起業カレイディスト 代表取締役 塚原月子さん(上)

「三者三様にメリットがあったから回った」

「私だけが得をするのではなく、関係する三者それぞれにメリットがあったからこそ、うまく回すことができた」と塚原さんは振り返る。実際、マネジャー職のワークシェアは、もう1人のマネジャーにとっても都合がよかった。マネジメントの負担は軽くなり、塚原さんからの日々の引き継ぎによって全体を把握することも容易になったからだ。その上の上司にとっても、優秀な人材を手放すことなく、全体を効率的に回せるメリットがあった。

実はこのようなワークシェアリングは米国のみならず、北欧でも取り入れられている。能力さえあれば、パートタイマーでも管理職になれるケースは珍しくない。

働く時間が限られた状況下で成果を出すということは、オフィスにいる間は雑談もできないほどに密度の濃い働き方が求められるということでもある。時短勤務を選択している人の多くは、決して「楽をしている」わけではない。

塚原さんの場合、遅くとも午後7時までには子供を保育園へ迎えに行かなくてはならなかった。それまでに、もう1人のマネジャーに引き継ぎをしてから退社。子供を寝かしつけた午後10時ぐらいから仕事を再開し、午前1時ごろに就寝。朝は子供が起きる前にメールチェックしていた。

日本でインクルージョン浸透に取り組む企業を興した

「比較的、恵まれた環境にあったと思う」と語る彼女の場合でも、さらに上の「プリンシパル」というシニアのマネジャー職に上がろうとする際には、やはり壁にぶち当たった。限られた時間の中で価値を提供できている自信はあったが、「時短のままでの昇進は難しい」と上司に言われ、いったんは会社を辞める気になった。

だが、そのことを先輩の女性シニアパートナーに伝えると、「何を言っているの!」と言われ、こう引き留められたそうだ。

「時短のまま上がれないなんてルールはないでしょう。それはあなたの上司が、そう思い込んでいるだけ。私がみんなを説得するから、(辞めるのは)思いとどまって」

結局、その女性シニアパートナーが会議で幹部たちを説き伏せてくれたおかげで、塚原さんは無事、時短勤務のままプリンシパルに昇進することができた。退社した今も、その女性シニアパートナーには「いろいろとお世話になっている」という。

「インクルージョン」に必要なのはリーダーシップ

ところで、「インクルージョンがある」とはどのような状態を指す言葉なのだろうか。日本における活動を塚原さんがサポートしているカタリストでは米国、メキシコ、オーストラリア、インド、中国、ドイツなどで、上司の特徴的な行動様式を部下がどう感じているかを分析した結果、D&Iを実現するために必要なリーダーシップの要素を、以下の4つと定義している。

その4つとは、「Empowerment(エンパワーメント:部下をサポートしながら権限を付与すること)」「Accountability(アカウンタビリティ:責任を持てる範囲を明確にしたうえで、成果が出せるところまで責任を持たせること)」「Courage(カレッジ:部下がおもしろそうな提案をしてきた場合、上司の顔色をうかがうことなく、一緒にリスクをとる勇気を持つこと」「Humility(ヒューミリティ:自分の非を認める謙虚さを持つこと)」。日本独自の調査では上記4つに加え、上司が寛容的な行動をとった場合に、部下が「インクルージョンがある」と感じていた。

寛容性に乏しく、「前例がない」と上司がリスクを恐れて行動しない職場ではD&Iは浸透しない。これは塚原さん自身が経験を通じて実感してきたことでもある。

(ライター 曲沼美恵)

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