衝撃受けたNYの多様な働き方 日本で浸透めざし起業
カレイディスト 代表取締役 塚原月子さん(上)
官・民(営利企業)、NPOと3種類の働き方を経験した塚原月子さん
「ダイバーシティー&インクルージョン」という言葉をご存じだろうか。一言で表すと、多様な価値観を認め合い、一人ひとりが個性を発揮すること。カレイディストはそうした価値観を企業が取り入れる支援をするベンチャーだ。代表の塚原月子さんが創業したきっかけは、以前の職場だった米ニューヨークで遭遇した、まさに多様な価値観と、目からウロコの働き方だった。
東京大学経済学部を卒業し、1995年、旧運輸省(現国土交通省)に入省した。ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)を経て、米NPOが創設した日本の拠点(カタリスト・ジャパン)でバイス・プレジデントに就任。官から民、NPOへと異なる3組織を経験した後、2018年2月に独立して「株式会社カレイディスト」を立ち上げた。
「ダイバーシティーという言葉はだいぶ浸透してきましたが、インクルージョンという点に関してはまだまだだと思います」と、塚原さんは言う。
「インクルージョン(Inclusion)」とは、「受容」という意味があり、異なる価値観を持つ人を受け入れ、互いの違いを認め合うのにとどまらず、積極的に受容し、それぞれの実力を発揮していくことを指す。
企業戦略としての「ダイバーシティー」には、性別や人種・民族、年齢などの属性が多様化することと、能力や経験、知見など「目に見えない価値」が多様化するという、2つの意味が含まれている。日本ではもっぱら「女性活躍」に目が行きがちだが、本来の目的は人材を多様化することそのものではなく、一人ひとりの違いを認めた上で、その違いを生かしながら個々人のパフォーマンスを引き出し、組織力を高めていく点にある。このような意味で、近年は「ダイバーシティー&インクルージョン(D&I)」とセットで表記されることも多い。
「本来の意味でのD&Iを日本の職場に浸透させることができたら、次の世代に貢献できるかもしれない」――。塚原さんがそう思った原点は、BCGのNYオフィスで目撃したある光景にあった。
「なんでもあり」の働き方に遭遇した、NYでの経験
国土交通省からBCGに転職して2年半が過ぎた06年1月のことだった。海外オフィスに短期間勤務できる「アンバサダープログラム」に手をあげ、NYのオフィスに派遣された。赴任先のNYでは「同じ会社なのに、こんなにも違うのか……」と思ったという。