「10年間ほとんど注目されなかった論文もある。先ほど例に出した水の性質などを研究する際には、統計力学というしっかりとした枠組みが確立されている。私は量子力学という、より根本的な原理から説明した。結果、10年間ほとんど誰にも気にされず、自分でも忘れていた。最近になり、私の論文と関連するような実験があり、注目を集め始めた」

――研究する際に、どんなことを大切にしていますか。

「仲間と議論するのがすごく大事だ。学習院大の理学部には、黒板があってコーヒーを飲みながら議論する部屋がある。議論の場で生まれる研究は多い。熱エンジンの研究も、一生懸命議論することで完成させた。大学によっては必ずしも議論する部屋がないかもしれないが、国際会議に出向いて話したり、仲良くなればメールで議論したりもできる。他の大学では議論なんてしないという研究室があるとも聞くが、私たちは議論する文化を大切にしている」

「もうひとつは時間をかけることだ。研究以外のことを考える必要がないときは、いつも研究のことを考えている。長い時間をかけないと良い研究はできない」

――普段から、大学のランキングを気にしながら研究していますか。

「まったく正反対だ。もともと大きくはない大学で、ランキングは関係ないと思っていたので、誰も気にしていなかった。評価されたのはうれしいが、評価されたからといって今後もランキングにはこだわらない。今まで同様、大事だと思う研究をじっくりやるというスタンスだ」

(久保田昌幸)

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