日本各地の「市場」と名の付く場所に、外国人観光客が大勢来ているという話をよく耳にします。代表的なのは「築地市場」ですが、そのほかにも人気の市場が続々。何が外国人観光客をそれほど引き付けるのか、探ってみました。
外国人が市場にあふれている理由とは?
まず、夫シャウエッカーに聞いてみると、こんな答えが返ってきました。
「日本人も外国に行くと、その土地の市場に行ってみたいと思う人が多いですよね。外国人が日本の市場に行くのも同じ理由でしょう」。確かに、私も海外に行くとよく市場をのぞきます。パリのマルシェ、ローマのメルカート、イスタンブールのグランドバザール……。どこの市場でも、その地の食事情や人々の生活の様子がよく分かり、楽しい。珍しい食品や雑貨、衣料品などを見ると、本当にワクワクします。
活気を感じられるのも大きな魅力です。「市場には“動き”があります。そこで働く人たちの毎日の行動があって、独特の言葉を使っている。例えばセリでは普通の人には分からない言葉を使っています。いつも人が多くて、すべてが動いていて、一見雑然としていながら実はスムーズに流れています」
ジャパンガイドは取材で全国、いろいろな市場を見て回ります。漁港などに併設された魚市場、町中にあって地元産など日常の食材がそろう「市民の台所」的な市場、特定の日に特定の場所で開かれる市(いち)や朝市など。いずれも、もとは地域の人々の生活に根ざした流通・経済の拠点だったと思いますが、次第に観光的な要素が加わり、多くの観光客が訪れるようになりました。そして、国際的な日本食人気(特にすしや刺し身)に伴い、外国人観光客が日本でぜひ行ってみたいと思う人気スポットへと成長したのです。
この可能性はまだまだ広がると思います。というのも、市場の運営者側が訪日客の動きに着目し、外国語によるサービスを向上させた結果、さらなる集客につながった実例があるからです。全国各地の、特に地方にある小さな市場が同様の取り組みを始めたら……。「観光資源」としての市場はまだまだ伸びしろがあるといえるでしょう。
では、外国人観光客に特に人気の高い、代表的な市場をピックアップしてみましょう。
築地市場(東京) 外国人の人気トップ、移転に「寂しい」「残念」の声
築地市場は、なぜか外国人には大変人気があります。「ジャパンガイドのTsukiji Marketのページビューは、サイト全体のトップ10に入ります。最近は移転が決まってもうすぐ見られなくなることが分かったので、さらに増えています」(シャウエッカー)
人気の理由は、取引されているマグロの大きさと独特なセリの方法にあるようです。さらに、築地市場は古くて狭いエリアに人々がひしめき合い、混沌とした雰囲気があるところが逆にディープな感じで受けているとか。
しかし、取材をしてきたシャウエッカーには、常に戸惑いがあったようです。
「仕事だから取材に行きますが、場内市場はスペースがないため、いつも働いている人に迷惑をかけている感じがして、自分では市場の雰囲気を楽しむことは全くできませんでした。観光客があそこに入るのは迷惑なのではないかと心配していました」。だから、どうしてこれほど人気があるのか、不思議にも感じていたそうです。
究極の目的は、やはり「すし」のようです。「欧米人に圧倒的に人気がある日本食はすしです。そして、魚は築地が一番フレッシュ。さらに、マグロのセリが見られる。だからみんな築地に行きたいと思うのでしょうね」
