ナショジオ

生物

エイリアンのモデル 暗闇世界の奇妙で美しい生物たち

日経ナショナル ジオグラフィック社

2018/5/23

ナショナルジオグラフィック日本版

ダンボタコ。ディズニーアニメに登場するゾウに似ていることから名付けられた。深海に生息するメンダコ科の頭足類で、触手の間に水かきがある。愛らしい「耳」の正体はヒレ(PHOTOGRAPH BY DANTE FENOLIO)

 5月22日は、国連が制定した「国際生物多様性の日」だ。地球上にはたくさんの種がいて、その保全の意義を考えることを目的に1993年に定められた。地中や深海は、不思議な生物が多い未知の生物圏だ。太陽の光も届かない特異な環境に合わせて独特な進化を遂げた。中には、映画エイリアンのモデルになったと言われる生物もいる。ここでは、ダンテ・フェノーリオ氏が撮影した光が届かない暗闇にすむ、不思議な姿をした生物の写真7点を紹介する。

 ダンテ・フェノーリオ氏は、米国テキサス州にあるサンアントニオ動物園の生物学者。「みなさんが生物多様性と聞いて頭に思い浮かべるのは、アフリカのサバンナにいるライオンや北極のホッキョクグマなどの大きい動物でしょう」とフェノーリオ氏は言う。「けれども実際には、多様性の大半は小さい生物で構成されています」

 彼らは本当に小さくて、うまく隠れている。フェノーリオ氏は、そんな奇妙な生物の写真集『Life in the Dark(暗闇の生き物たち)』を出版した。写真集には、深海の海溝から、シロアリ塚の地下に広がるネットワークまで、暗闇にすむ様々な生き物たちの姿がおさめられている。

タルマワシ。写真には2種類の生物が写っている。体をくり抜かれたサルパという透明なホヤの仲間と、その中に卵を産みつけたタルマワシだ。タルマワシはサルパを餌兼すみかとして利用するのだ。タルマワシは映画『エイリアン』のヒントになったと言われている(PHOTOGRAPH BY DANTE FENOLIO)

 フェノーリオ氏によると、比較的浅い川や湖にも、激しく巻き上げられた堆積物で水が濁り、太陽の光が透過できないところがあるという。そうした場所では、水深1mほどでも、深海底にすむのと同じことになるという。

 「深海生物は低温と高圧、そして真の暗闇の中で生きています」とフェノーリオ氏。暗闇の中で暮らすうちに、それぞれに太陽からの光なしに生きる方法を見いだしてきた。

 例えばホタルイカは、捕食者から逃げたり異性を惹き付けたりするために、「発光器」と呼ばれる特殊な細胞で光を発している。また、水圧のわずかな変化を感じとることによって狩りをするテキサスホライモリなどは、ほとんど視力を必要としないため、その目は完全に皮膚に覆われている。

 しかし、フェノーリオ氏が調べてきた奇怪な動物たちよりもはるかに恐ろしいものがある。それは、こうした生態系の多くが変化し、劣化し、消滅するペースの速さだ。

 「私が長年野外調査を行ってきたすばらしい場所の多くがいまでは失われてしまいました」と同氏は言う。「特別な場所が1つ消えるたびに、旧友を失ったような気持ちになります」

 あなたはこの生き物たちを美しいと思うだろうか、それとも奇怪と思うだろうか? フェノーリオ氏は、『Life in the Dark』が、暗闇に生きるこれらの魅力的な動物たちや、まだ発見されていない多くの生きものに光を当てる手助けになることを期待している。

 次ページでは奇妙で美しい暗闇の生き物たちの写真5点を紹介する。

ナショジオ新着記事

ALL CHANNEL