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真に美しいピアノの音で聴くバッハ レーゼルの至芸

クラシックディスク・今月の3点

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NIKKEI STYLE

「レーゼル・プレイズ・バッハ」
ペーター・レーゼル(ピアノ)

旧東独を代表するピアニストだったレーゼル(1945年ドレスデン生まれ)は2007年、東京・紀尾井ホールで30年ぶりのリサイタルを成功させて以来の12年間に11回来日し、22種類のプログラムを披露してきた。ベートーヴェンの32曲のピアノ・ソナタ、5曲のピアノ協奏曲もすべて演奏するなどドイツ音楽の大家のイメージが強いが、モスクワ音楽院で学び、古典から現代までの幅広い作品に対応できるヴィルトゥオーゾ(名手)の基盤を徹底してたたきこまれた。

今年5月8日、紀尾井ホールのリサイタルではドイツ=オーストリア系の音楽はモーツァルト1曲(ソナタ第13番)のみ。後は今年が没後100年に当たる仏人作曲家ドビュッシーの「版画」「子どもの領分」、ベルギー人フランクの「前奏曲、コラールとフーガ」とラテン文化圏の作品を並べ、意表を突いた。確かに仏系ピアニストの華やかで自在なテンポ、音色の感覚とはアプローチが異なる。思索的かつ構造的な造形が際立つなか、左手の低音の厚みに右手のキラキラ透明な高音が重なると、独自の和声や色彩が広がる。ロシアの超絶技巧曲を得意とする指は、ドビュッシーの躍動も確実に仕留める。フランクは深い祈りに満ち、最後は(鋼線をハンマーでたたく)打楽器であるはずのピアノの音が自然現象に昇華し、巨大な伽藍(がらん)を仰ぎ見るような感動に襲われた。

ここ数年、レーゼルの音は純度を一段と高め、脱力の行き届いた打鍵が深く美しい音をごく自然に、紡ぎ出していく。07年時点では残っていた「閉ざされた世界を生き抜いた人」の雰囲気が消え、70歳代の円熟境を自ら楽しむゆとりが聴き手を温かく包み込む。16年の紀尾井リサイタルで好評だったJ・S・バッハの作品を特集した新譜にも、「真に美しいピアノの音」が克明に収められている。

「パルティータ」の第2番と4番、「平均律クラヴィーア曲集」から2曲の「前奏曲とフーガ」、さらに「イタリア協奏曲」。大バッハの名曲が一切の通俗性を絶ち、ドイツのプロテスタント信仰から生まれた音楽の厳しさを保ちながら人肌のぬくもりを失わない。チェンバロ、クラヴィコードなどバッハ時代の楽器(ピリオド楽器)の特性を念頭に置きつつ、スタインウェーの響きをコントロールする様式感も確か。最先端の名盤の誕生である。(キング)

「ドビュッシーの夢」
青柳いづみこ(ピアノ)

青柳は演奏と楽曲分析、評伝やエッセー、研究書の執筆を同時にこなす才人ピアニストの評価を平成の時代に確立したが、ストライクゾーンは間違いなく、ドビュッシーにある。フランス帰りの名ピアニスト安川加寿子の門下生となり、仏マルセイユに留学するより前、中学生時代に魅せられて以来、ドビュッシーは青柳の「恋人」となった。すでに何点かの録音、書籍を発表、没後100年の今年も「ドビュッシー最後の一年」を執筆するかたわら、「前奏曲集第1巻」の22年ぶりの再録音に踏み切った。

前奏曲集だけでは40分前後にしかならない。青柳は、ドビュッシーが死の5カ月前にオペラ化の意欲をみせていた劇付帯音楽「聖セバスチャンの殉教」のアンドレ・カプレによるピアノ独奏用編曲、ボヘミアン生活を送っていた時代の小品「夢」とドビュッシーに傾倒した同時代のハンガリーの作曲家ゾルタン・コダーイの「ドビュッシーの主題による瞑想(めいそう)曲」を併録曲に選んだ。スペシャリストの面目躍如である。解説には「サティが『過剰なほど大きな自信をいだいていた』と評したあなた(=ドビュッシー)が見た夢のほんの一部かもしれませんが、あなたが成し遂げようと願った計り知れないもの、他の誰にもできない音楽のありようを垣間見ることができて幸せです」と、記した。

ドビュッシーの夢の軌跡を一音一音確かめ、慈しみ、かみしめるように奏でる青柳の演奏は味わい深い。その味わいには、録音に使用した楽器が一役買っている。ドビュッシーは仏プレイエルのほかにブリュートナー、ベヒシュタインと2台の独製ピアノを所有していた。青柳はドビュッシーの作曲書法の特殊性が「ベヒシュタインに合う」との判断に基づき、1925年製E型のベヒシュタインを録音会場の相模湖交流センター(神奈川県)に持ち込み万全を期した。(コジマ録音)

ショパン「24の前奏曲」「幻想ポロネーズ」
河村尚子(ピアノ)

河村が2008年、現在はソニーと合併したBMGレーベルへ最初に録音したのはショパンだった。今は亡き名ピアニストでショパンを得意とした中村紘子は当時、河村の演奏を「品格確か」とほめた。

その後も11年に「ソナタ第3番」、13年に「バラード」と折に触れてショパンを手がけ、17年9月には「24の前奏曲」「幻想ポロネーズ」と「幻想即興曲」「前奏曲作品45」「3つのマズルカ作品59」、レアな「フーガ イ短調」をベルリンのイエス・キリスト教会で録音した。「品格」はそのままながら、作品の核心をとらえて離さない踏み込みの深さ、大きく旋律を歌わせながら息の長いフレーズを紡いでいく手腕、ベーゼンドルファー・インペリアルのピアノを鳴らしきる技のいずれにおいても「一皮むけた」印象を与える。

ドイツで身に付けた音楽解釈の思考力、ロシアの名ピアニスト・教師から授かった合理的な奏法が河村の体内で熟成の度を増し、一層のスケールを獲得したものと思われる。今年6月1日の東京・紀尾井ホールを皮切りとして、いよいよベートーヴェンに挑む河村への期待は、いやが上にも高まる。(ソニー)

今月は3点とも、ピアノ独奏のディスクを選んだ。作品やピアニストの持ち味だけでなく、スタインウェーとベヒシュタイン、ベーゼンドルファーの音色を聴き分ける楽しみが、そこにはある。

(NIKKEI STYLE編集部 池田卓夫)

レーゼル・プレイズ・バッハ

演奏者 : ペーター・レーゼル
販売元 : キングレコード
価  格 : 3,456円 (税込み)

ドビュッシーの夢

演奏者 : 青柳いづみこ
販売元 : ALM RECORDS
価  格 : 2,999円 (税込み)

ショパン:24の前奏曲&幻想ポロネーズ

演奏者 : 河村 尚子
販売元 : SMJ
価  格 : 3,240円 (税込み)

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