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選手村マンションで人口爆発 東京都心部の贅沢な悩み 保育所や交通網の整備追い付かず

2018/6/4 日本経済新聞 朝刊

東京五輪・パラリンピックの選手村は大会後に5600戸のマンション群に生まれ変わる(5月10日、建設中の選手村)

 東京都中央区の人口増に拍車がかかっている。2017年1月に55年ぶりに15万人を超えた人口は、1年4カ月で1万人増加して16万人を突破した。区内では20年東京五輪・パラリンピック後にマンションに転用される選手村が建設されるなど人口はさらに増える見込み。区は今夏にも住宅政策を転換して人口増を抑える方針だが、保育所などのインフラ整備が追いつかない状況は当面続きそうだ。

 5月14日時点の中央区の人口は住民基本台帳ベースで16万28人。月600人程度のペースで増えており、年間5%程度の伸び率だ。16万人を超えるのは59年ぶり。

 区の人口は1950年代の約17万人をピークに減り続け、90年代には約7万人まで落ち込んだ。区は容積率の緩和でマンションなどの住宅建設を後押しする人口回復策を導入。その後は増加に転じ、17年1月に15万人台を回復していた。

 人口増の主因は東京への一極集中と、それを背景にした活発なマンション建設だ。不動産調査会社の東京カンテイによると、中央区ではここ数年、総戸数100戸未満の中小規模のマンションで1000戸前後の供給が続いている。さらに総戸数が数百戸規模のタワーマンションが建つと一気に跳ね上がる。15年と16年は供給戸数が計3000戸を超えた。

 区内では臨海部などでマンション建設が続く。晴海で建設中の東京五輪の選手村は、選手らの宿泊施設が大会後に約5600戸のマンション群に転用される計画。22~23年ごろから入居が始まる見通しで、1万人超が新たな住民となる。

 利便性が高い区内のマンションの購入者は若い世代が多い。ファミリー層の流入により、区の出生数は年々増加が続く。06年に年間1042人だった出生数は、16年には2032人と倍増した。

■住宅の拡大政策、今夏にも転換

 出生数増加に伴い、保育ニーズも急拡大している。保育所への入所者数と待機児童の数をあわせた保育ニーズ数は13年度に2980人だったが、17年度には4596人と1.5倍に増えた。区は保育定員の拡大を急ぐが、追いつかない。

 13年度に200人弱だった待機児童の数は、15年度には100人強まで減ったが、その後増加に転じた。17年度には300人強となっている。

 通勤の足となる交通網もパンクしかねない。例えば、タワーマンションが林立する臨海部にある都営地下鉄・大江戸線の勝どき駅の乗降客数は16年度に約10万人と10年間で4割増えた。通勤ラッシュ時の駅ホームは乗客で埋め尽くされる。

 区は今夏にもマンションなどの住宅建設に対する容積率の緩和を原則廃止する方針。90年代の都心空洞化を受けて始めた住宅誘導政策を約20年ぶりに転換し、人口増のペースを鈍化させる。

 容積率の緩和がなくなれば分譲できる戸数が少なくなって採算性が下がり、自然と供給数が減ると見込む。特に影響が大きいのが中小規模のマンションと見られる。「用地取得で(容積率の緩和が続く)ホテルの開発業者らに競り負ける」(大手不動産幹部)事例が予想されるためだ。マンションの開発ペースは今後鈍る公算が大きい。

 都心回帰の波を受けて年々増える人口だが、中央区の吉田不曇副区長は「予算規模からみて区の人口は20万人程度が適正規模だ」と、抑制する方針を示す。保育などで既にあらわになっている課題を克服しながら「適正規模」の人口に収められるのか。人口減少に直面する日本にあって、贅沢(ぜいたく)ともいえる同区の悩みは当面続きそうだ。

[日本経済新聞朝刊2018年5月15日付を再構成]

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