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食の達人コラム

「塩パン」は夏が旬 世界の塩で味わい新次元に 魅惑のソルトワールド(17)

2018/5/18

よく目にするようになった「塩パン」

 ここ数年、ベーカリーでよく見かけるようになり、メディアでも頻繁に取り上げるようになった「塩パン」。一度は食べたことのある人も多いのではないだろうか?

 発祥は愛媛県八幡浜市にある「パン・メゾン」という、小さな一軒のベーカリーだという。塩パン誕生のきっかけは、夏になるとパンの売り上げが落ちこみがちなことに悩んでいた社長に届いた、息子さんからの情報だった。パン修業で他社に出ていた息子さんが、「フランスパンに塩をふったものが流行っている」と父である社長に伝え、それにヒントを得て生み出した。

 夏はほかの季節に比べて発汗量が増えるため、塩分を多めに補給する必要がある。また、実際に味覚もほかの時期より、しょっぱさを感じるものが好まれやすい。生理的な側面から見ても、「夏向け商品」としての塩パンは、理にかなっていたと言える。

 地元の子供からお年寄りまで幅広い層に愛されている「地域のパン屋」だったので、硬いフランスパンではなく、みんなに食べやすいソフトな生地で塩パンを作れないか、と考えたという。長年パンを焼き続けてきた経験と技術で試行錯誤を重ねて編み出されたのが、「バターをパン生地でくるむ」という方法だった。

塩パンの断面 中の空洞がポイント

 使用されるバターの割合も驚きだ。ロールパンでは一般的に生地の重量の1割程度のバターを使うことが多いが、パン・メゾンの「塩パン」では約2割に達する。大きくカットされたバターがクルクルと生地に巻かれていく様子を見ると、こんなにバターを入れて生地がおかしくならないのだろうかと、ちょっと不安になるほどだ。だが、心配ご無用。この多めのバターが威力を発揮する。焼成するうちに溶け出したバターにより、中にほどよい空洞ができ、食感はもっちり。そして外側はほどよくカリッとした食感に仕上がるのだ。

 いよいよ発売にこぎつけたが、当初は知名度もなく、ほとんど売れなかったという。火付け役となったのは市場で働く人たちだった。市場の仕事に従事する人は身体を使うことが多いため、夏場は発汗量も増える。「夏場に売れるパン」という狙いが見事にマッチした形だ。一度食べれば、その新しい食感とおいしさが受けて口コミが広がり、多くのリピーターがつくようになった。今では、週末には県外からも人が押し寄せる人気で、1日に5000~6000個も売れる大ヒット商品となった。

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