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旭山動物園、坂東元の伝える命

実は鈍くさい シマフクロウの狩りを映像で拝見

2018/5/26

ゴールデンウイークも終わりすっかり日常に戻りましたね。それにしても北海道は連休後半雨にたたられました。サクラの開花も重なり何とももったいない春になりました。

北海道は常緑の広葉樹がないので、秋に葉を落とした木々でどこか寒々しい景色なのですが、サクラの開花を皮切りに、シラカバやヤナギ、ミズナラなどが葉をつけ山も緑に覆われはじめます。本州などの越冬地から小鳥類も帰ってきて命の営みがいっせいに始まる季節になりました。動物園でも、アムールヒョウの双子も一冬越えてすっかり逞(たくま)しくなり活発にじゃれ合っています。タンチョウも抱卵中です。

タンチョウの丹星(オス)とのも子(メス)のペアが2卵抱卵中です。(桜井省司撮影、提供:株式会社LEGION)

今年の4月には念願のシマフクロウの繁殖に成功しました。もっとも動物園界では繁殖は生後(ふ化後)半年生存で「成功」と決めていますから、まだまだ予断は許さないのですが…。シマフクロウは地球上最大級のフクロウの仲間で魚を主食とします。北海道には約150羽棲息(せいそく)しているとされていますが、この数字は種をつなぎ続けるギリギリの数字であり、残念ながら劇的に回復する見込みはありません。北海道の自然の現状・限界でもあります。

シマフクロウは直径1メートル近い巨木に開いた樹洞を繁殖の場とします。そのような樹齢数百年の巨木の大半はほとんど残っていません。さらに水深が浅く流れが緩やかで魚が豊富な川が必須です。狩りの仕方は驚くほど「鈍くさく」見えます。目視で見つけた魚をめがけエイヤッと足を伸ばして足先から水に飛び込みます。足先に触った魚を捕まえるのですが、僕らが海水浴中に足先で砂の中の貝を探すような動きをします。かっこよく水面をかすめるように飛びながら獲るのではなく水中の地面に着地します。陸上のほ乳類やカモ類も獲(と)ると言いますが狩りの成功率は高くはないでしょう。まだうまく飛べない巣立ち雛(ひな)は地面を歩いてカエルも食べるのですが、この時期に交通事故に遭ったり、キタキツネやエゾクロテン、最近ではアライグマなどに捕食されてしまったりします。

■平野部に近い河川林がすみか

北海道民ですらその姿を見る機会はほとんどなく山奥の神秘の鳥との印象が強いのですが、実は平野部に近い河川林が住処(すみか)だったのです。アイヌ語でコタン・コロ・カムイ。日本語で村を守る神、人が真っ先に住みつき利用した場所がまさにシマフクロウの住処だったのです。アイヌの人たちは敬意を持ち共存していました。現在ではほとんどの平野部は人に占有されてしまったために、シマフクロウは中・上流部に追いやられました。人工の巣箱と人工的な餌場の確保等でどうにか種をつないでいますが、森が分断されているために見えない檻(おり)に覆われているように水系に閉じ込められています。一つの水系で養える個体数には限りがあるため巣立ちした若鳥や保護個体などを人工的に別の水系に移動させたりと、環境省が種の保存事業に取り組んでいます。近親交配も進んでおり僕の知る水系では祖父と孫娘がペアになっていたりします。

そんなわけで、様々な理由で保護され、野生復帰が厳しい個体が釧路市動物園で飼育されていて、その個体でペアを組み繁殖に取り組んできました。域外保全です。飼育地の分散、血統の多様性の確保等を目的に円山動物園と旭山動物園でも飼育を始めました。旭山のペアは片目を失い野生復帰は不可能とされたメスと釧路市動物園で飼育下繁殖したオスのペアです。昨年は無精卵でしたが今年は無事に卵が孵化(ふか)しました。雛は2羽です。旭山の施設は人工的に小川が流れ込む池を設置してあり餌の魚は池に入れてあるのですが、オスが餌を取り巣に運びます。孵化一ヶ月近くになると雛の採食量が増え日中でも餌を取り運ぶようになります。たまに活魚も与えるのですが、日中でも来園者の前で豪快な「鈍くさい」狩りを披露します。野生下でも日中に狩りをするようになるので自然に近い生態が飼育下でも発現しています。

■血統の多様性を育む役割、動物園に

飼育下では意図的に新たな血統を生むことも可能です。将来飼育下の有精卵を野生下のペアに抱卵させ孵させて、血統の更新や多様性の維持に役立てることも可能です。何よりも多くの人に山奥の神秘の鳥ではないことに気づいてもらい、腫れ物に触るように扱うのではなく、私たちが彼らから奪った土地に再度彼らを迎え入れる環境を整えてあげる機運を育むことができればと思います。

カバの百吉(オス)が旭子(メス)にマウントしています(桜井省司撮影、提供:株式会社LEGION)
繁殖行動を下から撮影。こんな光景を見られるのは旭山ならでは。(桜井省司撮影、提供:株式会社LEGION)

もう一つの大きなできごと、カバのペアリングを開始しました。メスのアサコは体格が小さいのですが昨年から明確な発情が認められるようになりました。オスの百吉との体格差が大きく同居を躊躇していましたが、本来一緒になりたい個体同士を長い期間同居させずにいると、その関係になれてしまい同居開始のタイミングを失いかねません。アサコは今年6歳、春には同居と決め準備を進めてきました。発情予定の2週間前から同居開始。お互いぎこちなく、どうコミュニケーションをとっていいのか探り合い・・・。デート2回目みたいな、と言えばわかりやすいでしょうか。毎日数時間の同居を続けぎこちなさが消えた頃発情日を迎えました。発情は2日続き、初日の晩は寝室でも一緒にお泊まり。交尾行動は確認できたのですが、確証は得られず。まずは来月の発情の有無を待ちます。まぁ最初からうまくいかなくても心配はしなくてもいいかなと。この続きは次号でも報告できると思います。

坂東元(ばんどう・げん)
(撮影・桜井省司、提供:株式会社LEGiON)

1961年旭川市生まれ。酪農学園大学卒業、獣医の資格を得て86年から旭山動物園に勤務。獣医師、飼育展示係として働く。動物の生態を生き生きと見せる「行動展示」のアイデアを次々に実現し、旭山動物園を国内屈指の人気動物園に育てあげた。2009年から旭山動物園長。

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