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2020フォーラム

五輪で始まるスポーツ技術革命 観戦・技も新ステージ 第3回日経2020フォーラム、JXTGエネルギー杉森社長ら講演

2018/5/14 日本経済新聞 朝刊

 パネル討論では「スポーツと技術が紡ぐ未来」をテーマに米ダウ・ケミカルのオリンピック事業部 技術・持続可能性担当ディレクターのニコレッタ・ピッコルロヴァッツィ氏、障害者スポーツの普及を後押しするワントゥーテンの沢辺芳明社長、1984年ロス五輪体操男子個人総合金メダリストで日本体育大学の具志堅幸司学長、バレーボール元五輪代表の大林素子氏が議論した。司会は小谷真生子キャスターが務めた。

米ダウ・ケミカル オリンピック&スポーツソリューション事業部のニコレッタ・ピッコルロヴァッツイ技術・持続可能性担当ディレクター

 ピッコルロヴァッツィ 五輪は企業にとって重要な舞台。弊社は最上位スポンサーとして知識や経験をもっと生かせると気づき、2016年リオ大会などでは省エネや低炭素の技術を生かしたプロジェクトを展開しました。

 小谷 人工知能(AI)、デジタル技術がスポーツの魅力を高める可能性が大きくなっています。

ワントゥーテンの沢辺芳明社長

 沢辺 3Dなど色々なデータが取れるようになり、選手のトレーニング方法などがこの10年で進みました。仮想現実(VR)を使った追体験など、競技の魅力の伝え方が東京大会で進化すると思います。

 大林 バレーボールでは選手全員がタブレットを持ち、試合後に個人の1日の全データが出て、それを見て次の試合に備えます。アナリストがいてデータに基づいたプレーを選択する。スポーツもだいぶ変わっています。

日本体育大学の具志堅幸司学長

 具志堅 11年の体操の世界選手権で内村航平選手の床運動の3回ひねりがあまりに速くて、審判が誤って1回少なく採点したことがあります。いまは富士通さんと採点のシステムを完成させていて、演技をすると演技価値点が瞬時に出ます。コーチングに使えるし、新しい技が生まれる可能性もあります。

 大林 私はスポ根を経験しましたが、今の子供はデータとともに育っています。データをうまく使える人がトップになると思います。

JOCスポーツ環境アンバサダーの大林素子氏

 具志堅 機械が進化すればするほど人間の目が必要になると思います。やる気や元気は機械では測れないですが、人間が見たらわかります。機械で数値として表れないものを含めてコーチングがあるのではないでしょうか。

 小谷 64年の東京五輪はインフラ整備で日本人の生活を変えましたが今回はどうでしょうか。

司会はの小谷真生子キャスター

 沢辺 20年までは盛り上がると思いますが、プロリーグがない競技は見られなくなってしまう。20年以降もパラスポーツに触れられる機会とか、色々な人が気軽に参加できる光景をつくりたいです。

 ピッコルロヴァッツィ 我々は従業員がアンバサダーとなって科学、スポーツの振興に努めています。20年で終わりというわけではなく、それ以降も五輪の精神が続くことを願っています。

 ◇ ◇ ◇

フォーラムを終えて

 テクノロジーの進化はスポーツに変革をもたらしつつある。富士通が開発を進める体操の自動採点システムは、採点にとどまらず、新たな技の習得や基本動作の確認など、様々な目的に活用できる可能性を持つ。

 大リーグの全球場に導入された「スタットキャスト」と呼ばれるシステムは、大谷翔平(エンゼルス)の投球の球速だけでなくリリースポイントやボールの回転数まで教えてくれる。打球なら初速に打ち出し角度、推定飛距離も分かる。おかげで二刀流に挑戦する大谷が、投手としても打者としてもメジャーで屈指の能力を持つことに疑いはない。

 「目にもとまらぬ」世界だったアスリートの驚異的な能力が可視化される。それは競技のレベルアップをもたらし、われわれを楽しませるための新たなサービスにもなる。

 観戦の仕方も多様化する。20年五輪・パラリンピックには間に合わないが、海外のビッグイベントや大リーグの試合が日本のスタジアムやアリーナの仮想空間に3D映像でライブ中継され、音や振動さえ現地と同じように楽しめる未来さえ、遠くはなさそうだ。

 最新のテクノロジーはスポーツのビジネスとしての可能性を飛躍的に広げる。スポーツの産業化の進展とともに、日本の社会とスポーツの関係も新たなステージに入るのだろう。

(編集委員 北川和徳)

[日本経済新聞朝刊2018年5月14日付]

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