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スタジアム城下町 28年ロス五輪、街づくりの起点に 4500億円の建設費、行政の支援受けず

2018/12/12 日本経済新聞 夕刊

スタジアムの建設現場。ロサンゼルス国際空港から約6キロの場所にある=レジェンズ社提供

2028年夏季五輪を開催する米ロサンゼルスで、開会式や閉会式が行われる新スタジアムの建設が進んでいる。驚くべきはスタジアム単体にとどまらず、それを中核に巨大な街をつくろうとしていることだ。40億ドル(約4500億円)ともいわれるスタジアムの建設費は行政の支援を受けず、民間だけでまかなう。前回大会から30年余り、進化するスタジアムビジネスの最前線を訪ねた。

ロサンゼルス国際空港からおよそ6キロメートル。イングルウッドにある競馬場跡地に約300エーカー(約1.21平方キロメートル)に及ぶ建設現場が広がっている。

この広大な土地を買収したのはサッカーのイングランド・プレミアリーグのアーセナル筆頭株主で、米プロフットボールNFLのラムズのオーナーでもあるスタン・クロエンケ氏。7万240人を収容する「ロサンゼルススタジアム・アット・ハリウッドパーク」を中心に、新たなエリアが2年後に誕生する。

2028年ロサンゼルス五輪では開会式と閉会式の会場になる(ロサンゼルススタジアムの完成予想図)=レジェンズ社提供

スタジアム周辺には映画館や商業施設を併設するだけでなく、ホテルや企業も誘致。スポーツのみならずファッションやアート、音楽のトレンドを発信する拠点にしようという計画だ。敷地内には人々の憩いの場になる人工の湖ができ、2500戸の住宅も完成予定。五輪までに地下鉄が張り巡らされ、IT(情報技術)を活用した「スマートシティー」(環境配慮型都市)を目指している。

エリアを象徴するスタジアムは透明な屋根で覆われる全天候型で、外と内を隔てる壁がない。NFLのラムズとチャージャーズが本拠地にする。28年夏季五輪以外にも22年にNFLの王者を決めるスーパーボウル、23年にはアメフトの全米大学王者を決めるチャンピオンシップゲームと大型イベントの開催がすでに決まっているという。

最大の特徴はグラウンドの頭上につり下げられるリング状の巨大なビジョン。構想では裏表両面に記録や他会場の試合中継を映し出すといい、コンコースなどにも青色発光ダイオード(LED)ディスプレーを配備。席から離れても人々が集って試合を楽しめるようにレストランやバーも充実させ、魅力的な空間を演出する。スイートルームも7種類、計260部屋を用意。完成前からすでに売り切れたものもあるという。

報道によれば、スタジアムの建設だけで費用は40億ドルにのぼる。これだけの大型プロジェクトで行政の財政支援を受けていないというのだから、日本ではなかなかまねできない。

プロジェクトの販売を取り仕切るエージェント企業「レジェンズ」の担当者は「ここまで多角的な開発案件は全米でもない。立地に恵まれ、海外からの観光客が必ず訪れる名所になるはず。誰がいつ来ても楽しめるエンターテインメントの都になれる」と自信を持つ。

スタジアムのネーミングライツ(命名権)などを今後募るが、街づくりから開発をともに行う事業パートナーも探していて、日本企業にも積極的な参画を呼びかけていく考えだ。「企業がスタジアムに広告看板を出すだけの時代ではない。街全体が自社の技術を来訪者に訴えるショーケースになる。スポーツ観戦、映画、食事、すべてで最初に選択される場所になることが大事」という。

スポーツを触媒に様々な機能を複合させるビジネスモデル。多層的な人々を誘引できれば巨大な消費が生まれ、地域も持続的な発展を遂げられる。米国ではアーリントン、アトランタなどで類似の開発が相次ぐ。

日本はどうか。プロ野球の日本ハムは北海道北広島市に球場を新設、年開業を目指してボールパーク構想を進める。野球を通して地域を活性化させる「横浜スポーツタウン構想」に着手するのはDeNA。ソフトバンクはヤフオクドームの隣にアイドルグループ「HKT」の専用劇場などが入居する複合エンターテインメントビルの開業を計画する。

スポーツが都市のブランド化にどう寄与するか。ロスとはそれぞれ規模も事情も異なるが、この視点が今後のスタジアムビジネスに欠かせないのは日米ともに同じのようだ。

(渡辺岳史)

[日本経済新聞夕刊2018年12月4日付を再構成]

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