転職に人生模様あり 経済ドラマ『ヘッドハンター』
テレビ東京といえば、路線バス旅、大食い、さらにいま大人気の池の水抜きなど、ユニークな視点で番組を制作し、ヒットに結び付けてきた。この春からは経済に特化したドラマ枠を設け、月曜午後10時の「ドラマBiz」で放送する。第1弾の『ヘッドハンター』は、転職あっせん業者・黒澤和樹(江口洋介)を主人公に、転職にまつわる様々な人生模様を描く。
「転職あっせん業者をメインにしたのは、今を切り取るビビッドなテーマだし、新鮮だと考えたから」と話すのはテレビ東京の稲田秀樹プロデューサー。
「僕も2年ほど前に転職した経験があり、人生の転機としてドラマがあると実感しました。実際、リサーチすると転職する人だけでなく、人材流出を食い止める企業側の立場や、後継者で悩む地方の事情なども見えてきて、多面的な問題だと。現代社会が抱えてる課題も浮き彫りにできると思いました」
メインキャストの顔ぶれも面白い。江口をはじめ、小池栄子、杉本哲太は、同局の経済番組『ガイアの夜明け』『カンブリア宮殿』の出演者でもある。「あくまで企画ありきで出演者を決めました。黒澤はヘッドハントの世界でも異端児的存在。江口さんは年齢の重ね方が本当にすてきだし、渋みの中にも男の色気と野性味がある点が役にピッタリ」
「大人の鑑賞に堪えうるドラマを目指して芝居を安心して見てほしいとキャラ重視で考えたら、同僚役には哲太さん、ライバル役には小池さんが自然に浮かんできました。結果的にうちの経済番組の出演者がそろったので、大々的に打ち出しました」
ドラマプロジェクトが発足したのは1年半ほど前。「金曜午後8時台や深夜枠のドラマも頑張っていますが、局のカラーを打ち出すべく議論を重ねた結果、他局が踏み込んでない『経済』というジャンルに至りました」
「既存の経済番組も生かせますし。テレビ東京は年齢層の高い視聴者に支持されている番組も多いので、40代、50代を主人公に、働く世代に訴える個性的なドラマに挑戦することにしました」
同局の経済番組は経済というフィルターを通し、今の社会を伝えることに定評がある。「ドラマBiz」もその姿勢は変わらない。第1話では、新製品の開発をさせてもらえない40代の悩める技術者が黒澤に転職を勧められることから物語が始まる。
「働くことは生きることそのもの。堅苦しくせず、普通の生活の一部を切り取った人間模様を自然に描いていきたいと思います」
脚本は『ハゲタカ』(2007年、NHK総合)の林宏司。演出は、稲田氏とフジ系「金田一耕助シリーズ」などで組んだ星護とスタッフも充実。また一つ、テレビ東京ならでは、が生まれそうな予感がする。
(「日経エンタテインメント」5月号の記事を再構成 敬称略 文/田中あおい)
[日経MJ2018年5月11日付]
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